【元消防職員・防災士が解説】防災×線香火災|炎が見えなくても超高温、冬の“無炎燃焼”に注意

「炎が出ていないから大丈夫」

その油断が、住宅全焼につながることがあります。

線香の先端は約700〜800℃。
紙や布の発火温度(約200〜400℃)を大きく上回ります。

乾燥する冬は、線香火災のリスクが最も高まる季節です。


■① 線香は“無炎燃焼”という見えない危険

線香は炎が立たない「無炎燃焼」。

見た目は穏やかでも、先端は超高温です。

・座布団
・カーテン
・供え物の包装紙
・仏壇周りの装飾布

これらに触れると、最初は煙だけ。

しかし数時間かけて内部で炭化が進み、
ある瞬間に一気に「ボッ」と炎が立ち上がります。

これが線香火災の典型です。


■② 実際に起きた大規模火災

2024年1月、東京都文京区目白台の旧田中角栄邸が全焼。

線香の消し忘れが原因と報じられました。

延焼面積は約800㎡。

「たかが線香」とは言えない規模です。


■③ 私が現場で見た“残り火火災”

消防職員時代、
私は何件も線香・ろうそく火災に出動しました。

怖いのは、

・消えたと思っていた残り火
・灰の中に埋もれた燃え残り
・風で倒れた線香

気づいたときには天井まで延焼。

被災地派遣(LO)でも、
仏壇周りからの火災で家を失った方に何度も接しました。

「ちゃんと消したつもりだった」

この言葉は本当に多いです。


■④ 倒れる・触れる・再燃する

主な出火パターンは3つです。

1. 香炉が小さい・灰が山盛り

線香が傾き、可燃物に接触。

2. カーテンや風による接触

風であおられた布が触れる。

3. 灰の中の再燃

短い燃え残りが、後から供えた線香の熱で再着火。

特に③は見落とされがちです。


■⑤ ろうそくの“飛び火”にも注意

燃焼中のロウに水滴が入ると、
急激に蒸発し、火のついたロウが飛び散ります。

これは天ぷら油に水をかけるのと同じ原理。

着衣着火や飛び火も冬に多い事故です。


■⑥ 今日からできる予防策

① 離隔距離を確保

炎から最低20cm以上離す。

② 仏壇周りに可燃物を置かない

供え物の包装紙・布製品は要注意。

③ 防炎マットを敷く

燃え広がりを防ぐ。

④ 灰を定期清掃

1〜2か月に1回は燃え残り除去。

⑤ 火が完全に消えるまで離れない

外出前は灰の上に手をかざし、熱確認。

⑥ ペット対策

猫が線香を倒す事故もあります。


■⑦ 冬は一年で最も火災が多い

東京消防庁も
12月〜3月は火災多発時期と注意喚起しています。

乾燥 × 可燃物増加 × 暖房使用

条件が揃っています。


■まとめ

線香は癒やしであり、祈りの象徴。

しかし、

・炎が見えない
・小さい
・日常的

だからこそ油断が生まれます。

私が現場で学んだことは一つ。

「火をつけたら、その場を離れない」

それだけです。

祈りの時間が、
悲劇の火災にならないように。

今一度、仏壇周りを見直してください。


■出典

消防庁「火災の現況」

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