集中豪雨や線状降水帯の発生が珍しくなくなった今、冠水した道路をどう判断するかは命に直結します。
「EVは電気で動くから水没は危険」というイメージが先行しがちですが、結論から言うと“EVは一定条件下で浸水に強い特性を持つ”のは事実です。
ただし、車種を問わず冠水路を走らないのが原則である点は変わりません。
被災地派遣やLOとして冠水現場を数多く見てきた立場から、誤解しやすいポイントと正しい判断軸を整理します。
■① 冠水路走行が危険な理由(全車共通)
冠水路の危険は「水」そのものより、見えないリスクにあります。
- 路面状況が見えない(段差・側溝・穴)
- 水圧で車体が押し戻される
- 速度が出ていると衝撃で失速・停止
- 停止後、ドアが水圧で開かないことがある
実際の災害対応では、アンダーパス(立体交差の低地)に進入して動けなくなった事例が後を絶ちません。
ここは絶対に入らないが鉄則です。
■② エンジン車が冠水に弱い理由
エンジン車は構造上、冠水に弱い側示があります。
- 排気管から水が侵入 → 排気不能
- 吸気口・エアクリーナーから浸水
- 燃焼室に新気が入らずエンジン停止
- 再始動不可になるケースが多い
被災地では、一度止まったエンジン車がそのまま放置され、渋滞や二次災害の原因になる場面を何度も見てきました。
■③ EVはなぜ浸水に「比較的」強いのか
EV(電気自動車)には、エンジン車と異なる特性があります。
- 排気管がない
- 吸気口が不要
- 高電圧系は防水・絶縁設計
- 大容量バッテリーで低重心・高重量
実際、初代日産リーフは水深70cmでの走行試験が行われ、感電対策を含めた安全性が確認されています(※低速条件)。
また、車体重量が重いことで浮力による不安定化が起きにくい点も特徴です。
■④ それでも「EVだから安全」は大きな誤解
重要なのはここです。
EVであっても、
- タイヤが側溝に落ちる
- 路面下の異常でパンクする
- 流水で横方向に押される
といった事態では簡単に動けなくなります。
被災地派遣の現場でも、
EV・エンジン車を問わず「動けなくなった車」が命取りになるケースを見てきました。
■⑤ 冠水時の正しい判断と行動(防災の基本)
絶対原則
- 冠水路には入らない
- 迷ったら必ず迂回
- 時間より命を優先
やむを得ず浅い水たまりを通過する場合
- 速度を極端に落とす
- 急加速・急停止を避ける
- 停車しない(止まる=リスク増大)
※それでも、アンダーパスだけは例外なく回避してください。
■⑥ 被災地・現場視点の一言
災害対応の現場で繰り返し確認された事実があります。
- 「通れそう」は危険
- 「前の車が行った」は当てにならない
- 一度止まると、脱出が最も難しい
EVの特性を正しく理解することは大切ですが、
過信した瞬間に防災では負けます。
■まとめ|EVは強みを持つが、判断の基本は同じ
- EVは構造上、冠水に強い側面がある
- しかし冠水路は全車共通で避ける
- 立体交差・低地は即回避
- 迷ったら引き返す勇気が命を守る
元消防職員・防災士としての結論です。
「走れるかどうか」ではなく、「止まらない判断」が防災。
EV時代でも、この原則は変わりません。

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