【防災士が解説】「ごはん」「パン」より上位だった“缶”の備え――缶入りの水を常備すべき理由と、失敗しない備蓄術

災害備蓄というと「非常食」を真っ先に思い浮かべがちですが、実際の被災では“食べ物より先に困るもの”があります。
それがです。

アンケートでは、防災対策で常備しておきたい缶製品として「ごはん」や「パン類」を抑えて1位は「水」でした。
これは感覚的にも現場感覚にも、かなり納得できる結果です。

私自身、被災地派遣で避難所や役場に入り、生活再建の支援(LOとしての調整含む)に関わった経験があります。そこで痛感したのは、「食べ物があっても、水がなければ生活が回らない」という現実でした。飲むだけでなく、薬、衛生、調理、赤ちゃん、高齢者――全部が水に依存します。


目次

  • ■① 缶入りの「水」が強い理由は“現場で最初に枯れる”から
  • ■② 「保存水があるのに足りない」よくある落とし穴
  • ■③ 缶の水は“誰のために”置くと強くなる
  • ■④ 何日分が現実的?「4〜7日」を目標にする考え方
  • ■⑤ 缶の水を活かす「置き場所」最適解
  • ■⑥ 失敗しないローリングストックの回し方(年1回でOKにする)
  • ■⑦ “水の次”に効く缶製品の選び方(主食・おかずの順番)
  • ■⑧ 今日できる最小行動:10分で備蓄の強度を上げる

■① 缶入りの「水」が強い理由は“現場で最初に枯れる”から

被災直後に不足しやすいのは、電気やガス以上にです。
断水は広範囲になりやすく、復旧まで時間がかかることもあります。

さらに、水が不足すると困るのは「飲む」だけではありません。

  • 服薬(持病の薬を飲めない)
  • 衛生(手洗い・口腔ケア・簡易洗浄)
  • 食事(調理・湯戻し・食器の最低限の洗い)
  • 体温(暑さ対策・体調不良時の冷却)
  • メンタル(喉が渇く・口が粘るだけで不安が増える)

だからこそ「缶製品の中で水が最優先」というのは、合理的な結論です。


■② 「保存水があるのに足りない」よくある落とし穴

備蓄がある家庭でも、実際は足りないことが多いです。理由はシンプルで、

  • “飲む分”しか想定していない
  • 家族全員分で計算していない
  • 生活用水(最低限の衛生)を切っている
  • 体調不良・発熱・下痢などの「追加需要」を見ていない

現場では、普段の1.2〜1.5倍くらい水を欲しがる人もいます。緊張、乾燥、粉末食、睡眠不足で、身体は想像以上に水を使います。


■③ 缶の水は“誰のために”置くと強くなる

備蓄は「平均的な大人」を想定するとズレやすいです。
缶の水は、特に次の人のために置くと価値が跳ね上がります。

  • 子ども(こまめな水分、体調変化が早い)
  • 高齢者(脱水に気づきにくい)
  • 喘息やアレルギー持ち(乾燥・咳込みで水が必要になりやすい)
  • 服薬がある人(飲み水がないと詰む)
  • 乳幼児(ミルク・衛生)

「家族の中で一番弱い人に合わせて備える」――これが、失敗しない備蓄の基本です。


■④ 何日分が現実的?「4〜7日」を目標にする考え方

目標としては4〜7日分が現実的です。
理由は、復旧・物流・支援が安定するまでに時間差が出るから。

ただし、最初から完璧を狙う必要はありません。

  • まずは「2日分を確実に」
  • 次に「3日分へ」
  • 余裕が出たら「7日分へ」

この“段階式”にすると、家計も収納も壊れません。


■⑤ 缶の水を活かす「置き場所」最適解

水は重いので、置き場所が悪いと使われません。
おすすめは次の2分割です。

  • ① 玄関〜廊下の近く:持ち出し用(すぐ取れる)
  • ② 家の奥(納戸など):生活用の在庫(量を確保)

「どこに置いたか分からない水」は、持っていないのと同じです。
“取り出しやすさ”は、備蓄の性能です。


■⑥ 失敗しないローリングストックの回し方(年1回でOKにする)

入れ替えが面倒で備蓄が崩れるのが一番もったいないです。
続くやり方は、年1回で回る仕組みにすること。

  • 防災の日(9/1)か年末など、固定日を決める
  • その日に「期限チェック→足りない分だけ補充」
  • 使うのは“期限が近いものから”

この運用なら、完璧主義にならずに続きます。


■⑦ “水の次”に効く缶製品の選び方(主食・おかずの順番)

水を固めたら、次は「噛まずに食べられる」「温めなくても食べられる」順で選ぶと強いです。

  • 体調不良でも食べられる(ゼリー・スープ系)
  • 常温で成立する(缶のおかず)
  • 主食(ごはん・パン類)

もちろん主食も大事ですが、水がないと主食の価値が落ちます。
だから順番としては 水 → すぐ食べられるもの → 主食 が現実的です。


■⑧ 今日できる最小行動:10分で備蓄の強度を上げる

今日やることは、たったこれだけでOKです。

1) 家族人数×「4日分」をざっくり計算
2) 今ある水の本数を数える
3) 足りない分だけメモする(買うのは次の買い物ついででOK)

備蓄は「一気に完成させる」のではなく、生活に溶かして増やすほうが強いです。


■結論

缶製品の備えで「水」が1位になったのは、理屈ではなく“現実”がそうだからです。
食べ物は工夫できます。でも水がないと、工夫の余地が一気に消えます。

まずは水。次に、常温ですぐ食べられるもの。
この順番で備えるだけで、災害時の不安は目に見えて減ります。


出典:大和製罐株式会社「『防災対策で常備しておきたい缶製品』アンケート結果」(PR TIMES)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000046.000109360.html

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