「名簿はある。でも、実際にどう助けるかが決まっていない」
災害時の避難支援で起きやすいのが、このズレです。避難行動要支援者名簿は“誰が支援対象か”を示しますが、個別避難計画は“どう支援するか”を具体にします。
個別避難計画の作成は努力義務とされており、地域の実情に応じて整備が進められています。
ただし、作成そのものが目的化すると、災害時に使えない計画が増えます。
被災地派遣の現場でも、支援がうまく回るのは「具体の行動が一枚で見える」ケースでした。
この記事では、個別避難計画を“動く計画”にするためのコツを整理します。
■① 個別避難計画とは何か
個別避難計画とは、避難行動要支援者一人ひとりについて、災害時にどのように避難を支援するかを具体に定める計画です。
支援対象者の状況に合わせて、避難の方法、連絡手段、支援者、避難先などを整理します。
名簿が「対象者のリスト」だとしたら、個別避難計画は「動き方の設計図」です。
■② 努力義務とはどういう意味か
努力義務とは、実施が求められているが、直ちに罰則で強制される性格ではない、という位置づけです。
現場の人員や地域事情を踏まえながら、段階的に整備していく考え方になります。
ただし努力義務だからこそ、「形だけ作る」リスクが出ます。
重要なのは、実際に使える形で整えることです。
■③ 個別避難計画で決めるべき中身
計画は、情報が多いほど良いわけではありません。
災害時に使える“必要最低限の具体”が重要です。
・どの災害で避難が必要か(地震、洪水、土砂など)
・避難開始の判断基準(誰が、何を見て決める)
・連絡方法(電話、SMS、近隣訪問など)
・支援者(避難支援等関係者)の役割分担
・避難手段(徒歩、車いす、車両など)
・避難先(第一候補、代替候補)
・持ち出す医療情報や必需品(最低限)
「迷ったらこれ」の一文が入っている計画が強いです。
■④ よくある失敗|計画が“現場の手順”になっていない
個別避難計画で多い失敗は、次のような状態です。
・誰が迎えに行くかが曖昧
・避難先が現実的でない(満員、バリア、距離)
・連絡手段が災害時に使えない
・支援者がその計画を知らない
・更新されず状況が変わっている
計画は、災害時に現場の人が1分で理解できる形でないと機能しません。
■⑤ 阻害要因|「他人事」になると共助が動かない
個別避難計画があることで、逆に共助が弱まるリスクもあります。
「計画があるなら誰かがやるだろう」と他人事になり、共助の自発性が落ちることがあります。
だからこそ、計画は“地域で共有して動ける形”にする必要があります。
計画は、責任を押し付ける道具ではなく、助け合いの段取り表です。
■⑥ 動く計画にするコツ|一枚化・代替案・訓練
動く計画にするコツは、次の3つです。
・一枚化:緊急時に読むのは長文ではなく要点
・代替案:避難所満員、道路寸断、停電を想定して第二案を入れる
・訓練:実際にやってみて詰まりを直す
計画は紙で完成しません。訓練で完成に近づきます。
■⑦ 被災地派遣で見た現実|“連絡と移動”が詰まると避難が遅れる
被災地派遣の現場で実感したのは、避難支援は「連絡」と「移動」で詰まりやすいことです。
電話がつながらない、家にいない、道路が通れない、車いすが出せない。
この詰まりを想定している計画は、やはり強いです。
LOとして調整に入った場面でも、支援者が「どこに行けばいいか」「誰に連絡するか」を共有できていると、迷いが減り、支援が早いです。
個別避難計画は、混乱の中で判断を軽くする道具です。
■⑧ 今日からできる最小行動(自治体・地域・家庭)
・計画は一枚に要点整理する
・避難開始の判断基準を一つ決める
・連絡が取れない場合の代替手段を入れる
・避難先の代替候補を必ず用意する
・地域の支援者が計画を知っている状態を作る
・年1回は更新して、状況変化を反映する
■まとめ|個別避難計画は努力義務でも“動く形”が命。具体と代替案で避難が早くなる
個別避難計画は、避難行動要支援者ごとに避難支援の方法を具体化する計画で、作成は努力義務とされています。
しかし災害時に機能するのは、短く、具体で、代替案があり、関係者が共有している計画です。
一枚化・代替案・訓練・更新をセットで回すことで、支援は確実に早くなります。
結論:
個別避難計画は「作ること」ではなく「迷わず動ける具体を一枚で共有し、代替案と訓練で磨くこと」が最重要である。
防災士として被災地派遣で見てきた実感では、連絡と移動が詰まると避難が遅れます。計画が具体で共有されているほど、支援は早く、危険を減らせます。

コメント