停電は、家を壊さなくても生活を止めます。
照明・冷蔵庫・スマホ充電・情報収集・トイレ——。一つずつ切れていくと、不安が増幅し、判断が雑になります。
キャンピングカーは、停電時に“避難所に行かない選択”を成立させる道具になり得ます。
ただし、使い方を間違えると「電源が尽きる」「暑さ寒さで体力が落ちる」「衛生が崩れる」など、車の中でも生活が破綻します。
私は元消防職員として被災地派遣(LO)に入り、停電下の避難所と在宅避難、車中避難の現場を見ました。
その経験から言えるのは、停電時は“装備の量”より、順番(優先順位)で勝敗が決まるということです。
この記事では、停電時にキャンピングカーをどう使えば家族の生活が守れるかを、現実的な手順でまとめます。
■① 結論|停電時のキャンピングカー運用は「電源・温度・トイレ・情報」の順で回す
停電で詰む原因は、だいたいこの4つです。
1) 電源が先に尽きる(充電・照明が崩壊)
2) 暑さ寒さで体力が落ちる(熱中症・低体温)
3) トイレと清潔が崩れる(ストレスと体調不良)
4) 情報が取れず判断ミスが増える(デマ・様子見)
この順番で“回る設計”にすると、車中避難は一気に安定します。
■② 停電直後の最初の15分|やることは4つだけ
停電が起きたら、最初にこれだけやります。
1) バッテリー残量を確認(車両・ポータブル電源・スマホ)
2) 照明を確保(足元→手元→室内の順)
3) 冷蔵庫の対策(開閉を止める・保冷剤を集約)
4) 情報の入口を固定(ラジオ or 防災アプリのどちらかに決める)
現場では、停電直後に「充電どうする?」「何が起きてる?」で家族がバラバラに動き、無駄に電力と体力を消耗する場面が多いです。
最初の15分で“動き方”を固めるだけで、疲れ方が変わります。
■③ キャンピングカーを「避難拠点」にする条件|移動しない方が良いケースもある
停電だからといって、必ずしもすぐ移動が正解ではありません。
キャンピングカーを拠点にする判断は、次で決めます。
その場拠点(動かない)が有利
・道路が渋滞しそう
・余震や豪雨などで移動が危険
・給油できる見込みが薄い
・夜間で視界が悪い
早めに移動が有利
・高温や寒波で住宅内が危険
・水やトイレが確保できない
・河川増水・土砂の危険がある
・沿岸部で津波リスクが残る
被災地派遣の現場では、「移動したくて動く」ほど危ない場面がありました。
停電は不安を煽りますが、動く理由が“恐怖”だけなら一旦止まる。これが事故を減らします。
■④ 電源の使い方|「何に使うか」を決めてから繋ぐ
停電時の電力は、貯金ではなく“残り時間”です。
先にルールを決めます。
優先度A(命と判断)
・照明(足元)
・スマホ充電(家族分)
・情報収集(ラジオ・通信)
・医療機器(必要な家庭のみ)
優先度B(体調維持)
・扇風機(夏)
・電気毛布等(冬、使い過ぎ注意)
・冷蔵庫(最小運用)
優先度C(余裕があるなら)
・娯楽(子どもの安心)
・調理家電(電力が大きいので注意)
現場感覚ですが、停電時に一番やられやすいのは「スマホ充電の奪い合い」です。
家族の不安が増えると、充電が“心理資源”になります。
先に「1人何%まで確保する」「夜は〇時に充電を止める」を決めると揉めにくいです。
■⑤ 夏の停電|キャンピングカーで熱中症を防ぐ運用
夏の車内は、停電より先に熱が命取りになります。
エアコンが使えない前提で守ります。
まずやること
・日陰へ移動(可能なら)
・サンシェード+遮熱カーテン
・窓を少し開けて換気(防犯と虫対策も)
・扇風機を“人に当てる”配置にする
体調管理のルール
・汗をかいたら塩分と水分
・頭痛・吐き気・だるさは早めに休む
・高齢者と子どもは「我慢しない」前提
被災地の避難所でも、空調が弱い場所では熱中症が現実に起きます。
車中避難も同じで、暑さは静かに体力を奪う。
「水を飲め」より「暑くならない配置」が先です。
■⑥ 冬の停電|低体温を防ぐ運用(火災を起こさない)
冬は「寒さ+火災リスク」がセットです。
車内で暖を取るほど、酸欠や火災の事故が出やすくなります。
まずやること
・断熱(床)を先に作る(マット・毛布)
・寝袋+毛布で“重ね”る
・首・手首・足首を温める
火災を防ぐ基本
・火気は最小にする
・燃えやすい物を熱源から離す
・換気を止めない(結露も悪化)
現場では、寒さで判断が鈍り「近づけ過ぎ」「囲い過ぎ」が増えます。
冬は暖房より、まず寝具の設計。これが安全です。
■⑦ トイレと清潔|停電時ほど「ここ」で生活が崩れる
車中避難で崩れる典型は、トイレと衛生です。
最小セット
・簡易トイレ(袋+凝固剤)
・防臭袋
・ウェットティッシュ(大判)
・手袋
・消臭剤
避難所でも、トイレが混む・汚れる・落ち着かないことで、我慢→脱水→体調不良が連鎖します。
車内でも同じで、トイレの不快は睡眠とメンタルを壊す。
停電時は早い段階で、トイレの運用(いつ・どこで・どう処理するか)を決めておくのが大事です。
■⑧ 情報収集|入口を1つに固定して、デマを遮断する
停電中は不安が強くなり、情報に振り回されます。
入口は「1つ」で十分です。
・ラジオ(停電に強い)
・自治体の公式発信(HP・SNS)
・気象・防災アプリ(警報・避難情報)
被災地派遣で強く感じたのは、デマより危険なのは「情報が多すぎて判断できない状態」です。
入口を固定し、家族内で共有するだけで落ち着きます。
■⑨ やらなくていい防災(停電×キャンピングカー編)
・停電直後に無計画に走り回る
・電力を“快適”に全部使う(後半が地獄)
・スマホ検索を無限に続ける(電池と心が削れる)
・不安を埋めるために買い出しへ突っ込む
停電は“焦り”が一番危ないです。
順番を守るだけで、事故が減ります。
■⑩ 今日の最小行動(5分)
1) ポータブル電源の残量と充電方法を確認
2) 足元ライト(ヘッドライト or ランタン)を1つ固定位置に置く
3) 家族で「停電時の優先順位(照明→充電→情報→トイレ)」を一言で決める
これだけで、停電時の混乱が一段減ります。
■まとめ
停電時にキャンピングカーを活かす鍵は、装備ではなく運用です。
電源・温度・トイレ・情報の順で回し、焦りで動かない。
このルールを先に決めておくと、車中避難は“安心の拠点”になります。

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