高校授業料の実質無償化が進む流れの中で、私立人気が高まり、公立高校側も「選びやすい入試制度」へ見直す動きが広がっています。入試が変わると、受験戦略だけでなく「通学」「生活」「いざという時の安全」まで、家族の判断軸が変わります。
私は元消防職員として、防災の現場で「学校」が避難所になったり、地域の拠点になったりする場面を何度も見てきました。被災地派遣・LOとして入った現場でも、学校施設の強みと弱みが、そのまま住民の安心感に直結していました。進路選択は、学力や校風だけでなく、“家族の安全設計”の一部でもあります。
■① 何が起きている?「単願」から「複数校出願」へ広がる流れ
公立高校入試では、これまで「1校しか受けられない」仕組みが一般的でしたが、報道では、複数校へ志望を出せる方式(1回の試験で複数校を志望順位付きで出す等)へ見直す動きが広がっています。狙いは、公立高校を選びやすくして生徒確保につなげることです。
制度が変わると「挑戦しやすさ」は上がります。一方で、家庭側は“選択肢が増えた分だけ、判断材料も増える”ので、決め方が重要になります。
■② 防災の結論:学校選びは「通学の安全」が最優先になる
災害時、子どもが一番危険にさらされやすいのは「移動中」です。
だからこそ、学校選びで最初に確認したいのは次の3つです。
- 自宅〜学校の通学経路に、洪水・土砂・津波・落石などのリスクがないか
- 大雨・強風・積雪時に、代替ルート(安全な迂回)が取れるか
- 電車・バスが止まった時に「徒歩帰宅が安全に成立する距離か」
学力や部活と同じくらい、「帰れる道があるか」を重く見てください。
■③ 受験戦略に追加したい「防災チェックリスト」5項目
複数校を検討できるなら、受験校それぞれで“防災の見える化”をしておくと迷いが減ります。
- 校舎の耐震化状況(新耐震/補強の有無)
- 避難場所の指定(地域避難所になるか、別の指定があるか)
- 断水・停電時の備え(受水槽・発電機・備蓄の考え方)
- 災害時の連絡体制(保護者連絡、引き渡し訓練の頻度)
- 部活動・登下校の中止基準(警報時の判断が早いか)
ここは“正解”より、“学校の姿勢”が見えるポイントです。
■④ 私立人気が上がるほど「公立の強み」も変わってくる
無償化で私立が選びやすくなると、学校間の競争は強くなります。
その結果、公立側も「選ばれる理由」を明確にしようとします。
防災面で言えば、公立は地域と結びつきやすく、避難所運営や地域連携訓練など、地域防災の中心になる強みがあります。進路を考える時は、“教育内容”に加えて“地域の拠点としての力”も見ておくと、長い目で安心につながります。
■⑤ 現場でよく見た「学校避難所」の差:安心を左右したのはここ
避難所になる学校は、同じ「学校」でも居心地が全く違います。私が現場で感じた差は、設備より先に「運用の準備」で出ます。
- 仕切りや動線が想定されている(混乱しにくい)
- トイレ・衛生のルールが早く決まる(不快と感染が減る)
- 寒さ暑さ対策の工夫が共有される(体調不良が減る)
これらは、学校が“地域と一緒に訓練しているか”で出やすい差です。見学や説明会で、防災訓練の話が自然に出る学校は、災害時にも動ける可能性が高いと感じます。
■⑥ 迷ったらこの判断:最終的に「家族の生活が壊れにくい」方を選ぶ
複数校に出願できると、偏差値や人気に気持ちが引っ張られやすくなります。迷った時は、次の1点で決めるとブレません。
「災害が起きても、子どもの安全と家庭の生活が壊れにくい選択か」
通学の安全、学校の対応、連絡体制、地域の避難環境。これらが揃うほど、受験後の安心が増えます。
■⑦ やらなくていい防災:学校に“完璧”を求めすぎない
学校側にも限界はあります。だから家庭がやるべきは、過剰に不安を増やすことではなく、最低限の確認で「判断を軽くする」ことです。
- 災害時の引き渡しルールだけは必ず確認
- 通学路の危険箇所を親子で1回歩いて把握
- 連絡手段(予備バッテリー、集合場所の約束)を家庭内で決める
これだけで、いざという時の迷いが大きく減ります。
■⑧ 今日できる最小行動:受験校ごとに「防災メモ」を1枚作る
受験校が複数になるほど、情報が混ざって判断が鈍ります。だから1校につき、1枚だけメモを作ってください。
- 通学経路の危険(川・崖・踏切・冠水しやすい道)
- 警報時の休校基準(学校HPのどこに書いてあるか)
- 引き渡しの流れ(誰が迎えに行くか)
- 代替の集合場所(駅・公民館など)
- 家庭の優先順位(安全>近さ>校風>成績 など)
メモがあるだけで、受験の不安も、防災の不安も、同時に軽くなります。
まとめ
公立高校入試が「1回で複数校出願」へ近づくほど、学校選びは“情報戦”になります。だからこそ、結論はシンプルです。
学校選びは、学力だけでなく「通学の安全」と「災害時の対応」をセットで見て、家族の生活が壊れにくい選択をすること。
現場を見てきた立場としても、災害時に差が出るのは設備より先に「準備と運用」です。受験の段階で、防災の視点を1つ足すだけで、家族の安心は大きく増えます。
出典
朝日新聞(2025年4月23日)「公立高入試、単願制見直しへ政府検討 デジタル活用『併願制』も想定」
https://www.asahi.com/articles/AST4R3V37T4RULFA00WM.html

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