【防災士が解説】夏の熱中症から避難中に精神面対策はどう考える?心が先に折れないための判断基準

夏に地震や豪雨で避難する時、熱中症対策というと水分補給や室温管理ばかりに意識が向きがちです。ですが、実際には、心が先に疲れると、水を飲む、休む、食べる、助けを求めるといった基本行動まで止まりやすくなります。暑い、眠れない、先が見えない、周囲に気を使う、家族が心配。こうした負担が重なると、体力より先に判断力が落ちることがあります。

つまり、夏の避難中の精神面対策で大切なのは、「不安をゼロにすること」ではなく、不安があっても生活の基本を止めないことです。避難中の心の負担は珍しいことではなく、むしろ自然な反応として受け止めた方が、立て直しやすくなります。

■① まず結論として、精神面対策で最優先にすべきことは何か

結論から言うと、最優先にすべきことは、心が乱れても、体の基本行動を切らさないことです。

具体的には、
一口でも飲む
少しでも座る
無理なら人に伝える
この3つです。

精神面対策というと、深い話をすることや、気持ちを整理することを想像しやすいですが、避難の初期はそこまで整わないことが普通です。だからまずは、心を整える前に、体が止まらないようにする方が現実的です。

元消防職員として感じるのは、被災地で危ないのは「強く不安を感じること」そのものではなく、「不安のせいで水分補給や休息まで止まること」だという点です。私なら、夏の避難では
まず一口飲む
次に少し座る
最後に一言つなぐ
この順で考えます。

■② なぜ夏の避難では心が崩れやすいのか

理由は、暑さと不安が同時に来るからです。

暑いだけでも人は消耗します。そこに、眠れない、先が見えない、家族のことが心配、周囲に迷惑をかけたくない、という気持ちが重なると、心はかなり疲れやすくなります。しかも夏は、汗や不快感も加わるため、小さなストレスが積み重なりやすいです。

被災地派遣の現場でも、避難者が急に涙ぐんだり、逆に何も話さなくなったりすることがありました。ですが、そうした反応は「弱いから」ではなく、普通の人が異常な状況に置かれた時の自然な反応として見た方が現実的です。

■③ どんな反応が出てもおかしくないのか

避難中には、次のような反応が出ても不思議ではありません。

・不安が強い
・イライラする
・涙が出やすい
・頭が働かない感じがする
・何もしたくなくなる
・話したくなくなる
・眠れない
・周囲に強く気を使ってしまう

こうした反応は、暑さや疲労が重なるとさらに強く出やすいです。だから、「自分だけおかしい」と考えすぎない方が安全です。

私なら、こういう反応が出た時に「しっかりしなければ」とさらに力むより、「今はそうなりやすい状況なんだ」と受け止めます。その方が次の行動へ戻りやすいです。

■④ 精神面対策で最初に役立つ行動は何か

最初に役立つのは、体を少し落ち着かせる行動です。

たとえば、
・水を一口飲む
・首や顔の汗を拭く
・日陰や風の通る所へ移る
・座る
・深呼吸する
・短く人と話す

こうしたことは単純ですが、かなり効きます。心のケアというと特別な支援が必要に思えますが、避難直後は「体を少し戻すこと」の方が先に役立つことが多いです。

被災地でも、心が張り詰めている時ほど、まず体から整えた人の方が持ち直しやすい印象がありました。

■⑤ 一人で抱え込まない方がいいのか

はい。短い言葉でも人につなぐ方が安全です。

「少ししんどい」
「ちょっと休みたい」
「水を取りに行きたい」
「子どもを少し見てほしい」

このくらいの一言でも十分です。大きな相談をしなくても、困っていることを短く伝えるだけで、心も体もかなり楽になります。

元消防職員としても、被災地では「全部一人で抱えていた人」ほど後から急に落ちることがありました。だから、精神面対策で大事なのは、立派に話すことではなく、「少し困っている」を早く外につなぐことです。

■⑥ 高齢者や子どもでは何を見ればいいのか

高齢者や子どもでは、言葉より変化を見た方が現実的です。

子どもなら、急に黙る、べったり離れない、逆に落ち着きなく動く、怒りっぽくなる。高齢者なら、会話が減る、ぼんやりする、食べない、動きたがらない、といった形で出ることがあります。

私なら、「何か言っているか」より「いつもと違うか」で見ます。その方が早く気づけます。避難中は、心の疲れが体のだるさとして出ることも多いからです。

■⑦ 精神面対策でやってはいけないことは何か

一番避けたいのは、無理に平気なふりを続けることです。

もう一つは、「自分より大変な人がいるから」と全部を飲み込むことです。もちろん助け合いは大切ですが、自分が崩れると、結果として家族や周囲も支えにくくなります。

私なら、精神面対策では「我慢が美徳」とは考えません。夏の避難では、暑さだけでもかなり体力を削られます。そこに感情まで押し込めると、心も体も持ちにくくなります。

■⑧ 迷った時の判断基準

迷ったら、次の順番で考えてください。

「不安のせいで、水分・食事・休息が止まっていないか」
「一人で抱え込みすぎていないか」
「子どもや高齢者に“いつもと違う変化”が出ていないか」
「平気なふりを続けようとしていないか」

この4つが整理できれば、夏の避難中の精神面対策としてはかなり現実的です。防災では、「不安を消すこと」より「不安の中でも基本を止めないこと」の方が大切です。

■⑨ まとめ

夏の熱中症から避難中に身を守る精神面対策で大切なのは、不安やイライラをなくすことではなく、不安があっても飲む・休む・つなぐを止めないことです。厚生労働省の災害時精神保健医療福祉活動マニュアルでは、被災者に見られる不安、不眠、パニックなどは災害時に生じうる反応であり、被災者全般のメンタルヘルスの保持増進が重要とされています。また、内閣府・厚生労働省の「災害時の熱中症予防」でも、災害時は疲労・体調不良・栄養不足などで熱中症リスクが高くなると示されています。

私なら、夏の避難で一番大事なのは「強くあろうとし続けること」ではなく「不安があっても、体の基本を止めないこと」だと伝えます。被災地でも、心が張り詰めた人ほど体が先に落ちることがありました。だからこそ、まずは一口の水、次に少し座る、最後に一言つなぐ。この順番で整えるのがおすすめです。

出典:https://www.mhlw.go.jp/content/000772550.pdf(厚生労働省「自治体の災害時精神保健医療福祉活動マニュアル」)

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