【防災士が解説】学校BCPで地震対応シナリオは何から作る?“避難したら終わり”にしない判断基準

学校BCPで地震対応シナリオを考える時に失敗しやすいのは、「まず避難して、無事を確認する」までで止まってしまうことです。ですが、学校の地震対応は、避難だけでは終わりません。文部科学省の「学校防災マニュアル(地震・津波災害)作成の手引き」では、地震発生時の対応を、事前、発生時、事後の流れで整理し、学校の立地条件や発生時間帯に応じて変わることを前提にしています。つまり、学校BCPで大切なのは、「避難する場面」だけではなく、その後に学校機能をどう維持し、どこまで戻すかをシナリオとして持つことです。

被災地派遣でも感じたのは、学校で本当に差が出るのは「避難の上手さ」だけでなく、「避難後の整理の早さ」でした。私は、学校BCPの地震対応シナリオでは、まず命を守る、次に情報と役割を整理する、最後に教育活動の継続と再開へつなげる、この順で整えるのが現実的だと考えます。

■① まず結論として、学校BCPの地震対応シナリオで最優先にすべきことは何か

結論から言うと、最優先にすべきことは、「地震発生直後の避難」ではなく「地震発生後の学校全体の流れ」を一本で描くことです。

学校BCPというと、避難訓練の延長で考えられやすいですが、実際には
授業再開をどうするか
校舎が使えない時どうするか
教職員がそろわない時どう回すか
保護者連絡と引き渡しをどうするか
まで含めて考える必要があります。

元消防職員として感じるのは、学校対応で止まりやすいのは「避難できないこと」より、「避難した後に次の判断がないこと」です。私なら、学校BCPでは
まず初動対応
次に当日運営
最後に翌日以降の継続
この三段でシナリオを作ります。

■② まず作るべき地震対応シナリオ① 授業中に発生した場合

最初に作るべきなのは、授業中に地震が起きた場合の標準シナリオです。

ここでは、
揺れた瞬間の身の守り方
教職員の指示
避難経路
点呼・負傷者確認
二次災害確認
を時系列で整理します。

文部科学省の手引きでも、初期対応として、児童生徒等が自ら行う安全確保行動、教職員が行う緊急対応、その後の二次対応までを一連の流れで考えるよう示されています。つまり、BCPでは「机の下に入る」だけではなく、その後の流れまで通しておくことが重要です。私は、授業中シナリオは学校BCPの土台だと考えます。

■③ 次に作るべき地震対応シナリオ② 登校前・登下校中・放課後

次に必要なのは、教職員が全員その場にいない時間帯のシナリオです。

たとえば、
登校前に発生
登下校中に発生
放課後や部活動中に発生
です。

この時間帯は、通常の校内避難より判断が難しくなります。だから学校BCPでは、「全校が教室にいる前提」だけでなく、時間帯別のシナリオを必ず持つ方が現実的です。私は、ここを外すとBCPではなく「授業中対応マニュアル」で終わってしまうと感じます。

■④ 地震対応シナリオで必ず入れるべき項目は何か

必ず入れたいのは、次の6つです。

① いつ発生した想定か
② どこが使えるか
③ 誰が指揮を執るか
④ 児童生徒の安全確認をどう取るか
⑤ 保護者連絡・引き渡しをどうするか
⑥ 翌日以降の授業をどうするか

学校BCPは、単なる危機対応ではなく、教育活動の継続まで見て初めて意味があります。私は、「当日の避難」だけで終わるシナリオは弱いと考えます。翌朝どう動くかまで見える方が、本当に使える計画になります。

■⑤ 教職員が少ない前提で考えるべき理由

かなり大事なのは、教職員が想定どおりに集まらない前提で作ることです。

地震では、交通途絶、家庭事情、被災、自宅待機などで、全職員がそろわないことがあります。元消防職員としても、災害対応で差が出るのは「担当者がいる時」より「担当者が欠けた時」です。だから学校BCPでは、
校長不在時
養護教諭不在時
事務職員不在時
の代行順位まで書いておく方が現実的です。

私は、地震対応シナリオは「理想形」より「最悪でも回る形」で作る方が強いと考えます。

■⑥ 校舎が使えない前提をどう入れるべきか

学校BCPでは、校舎の一部または全部が使えない前提も入れる必要があります。

たとえば、
体育館は使えるが校舎は危険
一部校舎だけ立入禁止
電気・水道が止まっている
給食室が使えない
といった状況です。

ここを入れないと、「避難したあと、元の教室へ戻る」前提から抜け出せません。私は、学校BCPの地震シナリオでは、
使える場所
使えない場所
代替で使う場所
を分けて考える方が実務向きだと考えます。

■⑦ 保護者連絡と引き渡しはどう入れるべきか

学校BCPでは、保護者連絡と引き渡しの流れをかなり重く見た方がいいです。

地震のあと、学校が安定していても、保護者側は強い不安を抱えます。だから、
どの時点で連絡するか
どの手段を使うか
引き渡しを始める条件は何か
学校待機と帰宅判断をどう分けるか
を整理しておく必要があります。

被災地経験でも、子どもの安全確認より先に、連絡不安で混乱が広がる場面は少なくありませんでした。私は、学校BCPでは「避難後の連絡」がかなり重要な柱だと考えます。

■⑧ 教育活動の継続はどう考えるべきか

ここが学校BCPらしさです。学校BCPでは、避難のあとに教育活動をどう戻すかまで考える必要があります。

たとえば、
翌日休校か
一部学年だけ再開か
代替教室を使うか
オンラインや課題配布でつなぐか
といった判断です。

私は、学校BCPの地震対応シナリオでは「避難したら終わり」ではなく、「教育をどう止めすぎないか」を入れる方が現実的だと考えます。その視点がないと、危機対応と教育継続が分断されやすいです。

■⑨ 迷った時の判断基準

迷ったら、次の順番で考えてください。

「避難の場面だけでなく、その後の学校運営までつながっているか」
「時間帯別のシナリオを持てているか」
「教職員不足・校舎使用不可の前提が入っているか」
「保護者連絡と教育再開まで見えているか」

この4つが整理できれば、学校BCPの地震対応シナリオとしてはかなり現実的です。防災では、「避難できること」より「避難後も学校が崩れにくいこと」の方が大切です。

■⑩ まとめ

学校BCPの地震対応シナリオで大切なのは、授業中だけでなく時間帯別に想定を分け、初動対応、当日運営、翌日以降の教育継続までを一つの流れで整理することです。文部科学省の「学校防災マニュアル(地震・津波災害)作成の手引き」は、地震対応を事前・発生時・事後の流れで考えるよう示しており、学校の立地条件や発生時間帯によって対応が変わることを前提にしています。

私なら、学校BCPで一番大事なのは「地震の時に避難できること」ではなく「避難した後も学校として次の判断ができること」だと伝えます。被災地でも、強かったのは大きい学校より、避難後の流れまで整理されていた学校でした。だからこそ、まずは初動、次に当日運営、最後に教育再開。この順番で整えるのがおすすめです。

出典:https://anzenkyouiku.mext.go.jp/mextshiryou/data/saigai02.pdf(文部科学省「学校防災マニュアル(地震・津波災害)作成の手引き」)

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