「非常用持ち出し袋は準備している。でも外出先で被災したら?とっさに持ち出せなかったら?」
実はここが防災の盲点です。いざという時に“持ち出せない”という現実を減らす発想として注目されているのが、日常使いと非常時を分けない“フェーズフリー”の考え方です。今回は、日常収納として使いながら非常時には持ち出しや簡易ポンチョにもなる「魔法のポケット」を題材に、防災を“日常化”する視点を解説します。
■① 防災の最大の盲点は「使っていないこと」
多くの家庭に非常用持ち出し袋はあります。しかし実際の災害現場では、「家にあったが取りに戻れなかった」「中身が古くなっていた」というケースが少なくありません。
被災地派遣でLOとして避難所運営に関わった際も、準備していたはずの備蓄が活用できなかった例を何度も見ました。防災は“あるかどうか”ではなく、“使える状態かどうか”が本質です。
■② フェーズフリーという考え方
フェーズフリーとは、日常と非常時を分けない発想です。普段から使っているものが、そのまま災害時にも役立つ状態をつくります。
「魔法のポケット」は、普段はウォールポケットや収納として使い、非常時には持ち出しリュックや簡易ポンチョとして活用できる設計です。日常に溶け込んでいるため、場所が分からない・使い方が分からないという事態が起きにくいのが特徴です。
■③ ローリングストックが自然に回る仕組み
防災士として実際に多かった失敗は、「備蓄が古くなっていた」ことです。非常食の賞味期限切れ、電池の液漏れなど、使わないからこそ更新されません。
日常的に使う収納の中に防災用品を入れる仕組みであれば、中身は自然に入れ替わります。これがローリングストックを無理なく続けるコツです。
■④ 「すぐ持ち出せる」構造が命を守る
地震や豪雨では、数分の判断が避難を左右します。
「探す時間」が命取りになります。
日常空間に設置されているものがそのまま持ち出せる構造であれば、迷いが減ります。元消防職員として感じるのは、災害時に強いのは“複雑な装備”ではなく“直感的に使えるもの”だということです。
■⑤ 家族全員が使えることが重要
高齢者や子どもがいる家庭では、複雑な操作は負担になります。形状がシンプルで、説明がなくても扱えることは大きな強みです。
避難所でも「誰かがいないと使えない装備」は機能しません。誰がいてもすぐに行動できる備えこそ、自律型避難につながります。
■⑥ 防災用品に見えないデザインの意味
「いかにも防災」という見た目は、日常生活から浮いてしまいがちです。その結果、押し入れにしまわれ、忘れられます。
日常空間になじむデザインであれば、常に視界に入り、意識の更新にもつながります。防災は特別なものではなく、“生活の延長”に置くほうが継続しやすいのです。
■⑦ 中身は家族と季節で変える
防寒具が必要な季節と、熱中症対策が必要な季節では中身は変わります。
家族構成によっても必要な物は異なります。
実際に背負ってみる、ポンチョを着てみるなど、事前に体験することが重要です。現場で多い誤解は「入れてあるから大丈夫」という思い込みです。使えるかどうかは試して初めて分かります。
■⑧ 防災は“日常の延長”という視点
「防災は我慢ではない」
この言葉は本質を突いています。
防災士として感じるのは、備えが続かない最大の理由は“負担感”です。日常生活の中に自然に組み込まれた備えは、続きます。続く備えこそ、本当に機能します。
■まとめ|“持ち出せない”をなくすことが次の防災
非常用持ち出し袋を用意することは大切です。しかし、それを超えて「日常の中に備えを溶け込ませる」ことが、次の段階の防災です。
フェーズフリーという発想は、特別な努力を減らし、自然に備えを更新させます。
結論:
防災は特別な準備ではなく、日常の中に仕組みとして埋め込むことが最も強い。
被災地で見てきたのは、“完璧な備蓄”よりも“使える状態の備え”を持っていた人が強いという現実でした。持ち出せるかどうか、迷わず使えるかどうか。そこに差が生まれます。日常と非常を分けない発想が、これからの防災を支えます。
【出典】内閣府 防災情報のページ(ローリングストックの考え方)
https://www.bousai.go.jp/


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