政府は、地域ごとの災害リスクをより正確に把握するため、新たなガイドライン策定に向けた検討会を立ち上げました。
この取り組みは、防災庁設置を見据えた重要施策の一つであり、今後の災害対応の考え方に大きな影響を与えると考えられます。
■① 検討会の概要
検討会は2026年1月23日から開始され、東日本大震災や能登半島地震などの過去事例を基に、
・重傷者数
・要救助者数
を地域別にシミュレーションする手法の検討が進められます。
被害の規模そのものよりも、「救助・医療体制がどこで不足するのか」を明確にすることが主眼です。
■② なぜ地域別評価が必要なのか
従来の被害想定は、広域・平均的な数値に基づくものが中心でした。
しかし実際の災害では、
・道路状況
・医療機関の分布
・高齢化率
・地形や集落構造
などにより、地域ごとに被害の様相は大きく異なります。
被災地派遣やLOとして現地対応に関わった経験からも、
「想定上は対応可能なはずの体制が、現場では機能しない」事例は少なくありませんでした。
■③ 重傷者数・要救助者数に着目する意義
今回のガイドラインの特徴は、「人」を中心に据えた評価です。
・どの地域で
・どの程度の救助・医療需要が発生するか
を具体的に想定することで、初めて実効性のある対策につながります。
建物被害やインフラ被害だけでは、初動対応の実態は見えてきません。
■④ 防災庁設置との関係
政府は2026年内に防災庁を設置する方針を示しており、
今回のガイドラインは、その中核を担う施策の一つと位置付けられています。
南海トラフ地震が想定される静岡県・高知県などの自治体担当者や専門家が参加し、
被害想定の精度向上が図られています。
■⑤ 自治体運営に与える影響
このガイドラインが整備されることで、
・各自治体は自地域の弱点を客観的に把握できる
・国は支援の優先順位を明確にできる
ようになります。
結果として、人的資源や医療資源の配置見直し、応援体制の再設計につながる可能性があります。
■⑥ 現場経験から見た重要な視点
元消防職員として災害対応に関わってきた立場から見ると、
最も危険なのは「想定があること」ではなく、「想定を前提に安心してしまうこと」です。
災害時に本当に問題になるのは、
・想定外の集中
・同時多発
・交通遮断
といった複合要因です。
今回の取り組みは、そうした現場の現実に近づこうとする動きだと感じています。
■⑦ 今後の注目点
ガイドラインは現在策定途上であり、今後は、
・どこまで地域差を反映できるか
・評価結果が実際の支援にどう反映されるか
が重要なポイントになります。
制度として作るだけでなく、運用まで落とし込めるかどうかが問われています。
災害リスクを可視化することは、不安を煽るためではありません。
判断を早め、対応の遅れを防ぐための基盤づくりです。
今後の動向を冷静に見守りながら、制度が現場にどう生かされるのかを注視していく必要があります。

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