いわゆる原付が「125ccまで」になった――と聞くと、パワーも余裕も増えて良いことづくめに見えます。ところが新基準原付は、排気量が125cc以下でも“最高出力を抑えた原付一種”という位置づけで、交通ルール(30km/h、二段階右折、二人乗り不可など)は基本的に従来と同じ運用になります。
現場目線で言うと、ここが厳しいポイントです。災害時も日常も、移動手段は「性能」より「運用できるか(置けるか・守れるか・維持できるか)」が強さになります。被災地では、足が確保できる人ほど生活再建が早い一方で、保管や燃料、整備の手間で“結局使えない”ケースも出ます。制度変更は、そこに現実的な壁を増やしやすい側面があります。
■① まず押さえるべき本質:新基準原付は「125ccでも原付一種の運用」
新基準原付は、排気量が125cc以下でも最高出力を一定以下に制御した“原付一種”として扱われます。つまり、排気量が増えたように見えても、ユーザー体験は「原付のまま」になりやすいのが特徴です。
- 交通ルールは原付一種ベースで運用される
- 期待するほど速く走れるわけではない(むしろ制限が強く感じる)
- 便利になるというより「買い替えが迫られる」側面が大きい
■② 速度制限が変わらないと、体感は“損した感”になりやすい
ユーザーが一番引っかかるのはここです。排気量が上がって車両価格が上がっても、法定速度や右折ルールが同じだと「何が良くなったのか」が感じにくい。
防災の観点でも、災害後に移動が必要な場面で「安全に流れに乗れない」「ルール上の制約が多い」はストレスになります。疲労が溜まるほど、交通事故リスクも上がります。
■③ 価格上昇は“生活防災”として重い:家計に効くのは固定費と維持費
新基準になると車両本体価格が上がりやすく、さらに任意保険・消耗品・点検などの維持費も軽くはありません。防災で大事なのは「続く備え」です。
- 車両にお金を寄せすぎて、他の備え(電源・水・衛生)が薄くなる
- ちょっとした故障や消耗で放置してしまい、いざという時に使えない
被災地派遣で見たのは、“高い装備”より“ちゃんと回る装備”の方が強いという現実です。
■④ 駐輪問題はかなり深刻:置けない乗り物は“備え”にならない
日常で地味に効いてくるのが、駐輪場のルールや物理的な保管場所です。原付一種として登録できても、駐輪場の規約が「50cc以下」など排気量基準で書かれていると、現場では揉めやすくなります。
防災目線では、ここが重要です。
- 災害時に急いで出したいのに、普段から置き場所が不安定だと運用が崩れる
- 盗難・いたずら・転倒などのリスクが増えると、結局使わなくなる
「置けるか」は、性能より優先順位が高いです。
■⑤ 災害時の“足”として見るなら、原付の強みと弱みはセットで考える
原付は、災害後の移動で役立つ場面があります。渋滞を避けやすく、燃費が良く、狭い道でも動ける。これは強みです。
一方で弱みも明確です。
- 雨・寒さ・風に弱い(体力を削る)
- 荷物が積みにくい
- 路面の段差や瓦礫に弱い
- 転倒リスクが上がる
被災地派遣・LO・元消防職員・防災士としての実感は、「移動手段は“安全に継続できるか”が勝負」ということです。速さより、壊れにくさと無理しない運用が大事です。
■⑥ 迷ったらこの判断:原付を備えにするなら“通信と電源”をセットにする
災害時の移動で困るのは、道より先に「情報」と「電源」です。原付が動いても、スマホが死んだら詰みます。
- モバイルバッテリー(充電ルールも家族で決める)
- 充電ケーブルを車載固定
- 雨対策(防水ポーチ)
- 地図のオフライン化(最低限のルートだけ)
原付は“足”ですが、判断を支えるのは情報と電源です。
■⑦ やらなくていい防災:スペックで選ばず「置ける・乗れる・守れる」で選ぶ
新基準で悩むほど、スペック比較に寄りがちですが、防災としての正解は別です。
- 置ける(保管・駐輪が確実)
- 乗れる(雨・寒さでも最低限いける装備)
- 守れる(盗難対策・メンテの習慣)
この3つが揃わないと、いざという時に“使えない備え”になります。
■⑧ 今日できる最小行動:駐輪規約の確認と、雨寒対策を1つ足す
今日やるなら、ここだけでOKです。
- 自宅・職場・駅近の駐輪規約を確認する(排気量表記か、原付一種表記か)
- 置けない可能性があるなら、代替(自転車・電動アシスト・カーシェア等)も同時に検討する
- 雨寒対策を1つ足す(レインウェア or 防寒グローブなど)
小さく整えるほど、継続できます。
まとめ
新基準原付は「125ccになった」と言っても、原付一種としての運用が基本のため、ユーザー側は速度・ルールが変わらないまま価格や保管の負担が増えやすいのが現実です。防災の視点では、移動手段は“性能”より“運用(置ける・守れる・続く)”が強さになります。
結論:
新基準原付を備えとして活かすなら、「置けるか」を最優先に、通信と電源をセットで整える。これが一番壊れにくい選び方です。
出典
国土交通省「一般原動機付自転車について」
https://www.mlit.go.jp/jidosha/jidosha_fr7_000092.html

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