【防災士が解説】東日本大震災から15年、地震防災をアップデートする方法|立地と住まいのリスク特定から始める

東日本大震災から15年。地震そのものだけでなく、私たちの暮らしも大きく変わりました。スマホ依存、在宅ワーク、共働き、物流の効率化、地域の担い手不足。こうした社会の変化は、災害時の弱点にも直結します。
結論から言うと、地震防災のアップデートは「備蓄を増やす」より先に、立地と住まいの固有リスクを特定し、被災シナリオに合わせて備えを作り直すことから始まります。


■① まずやるべきは「我が家の固有リスク」を言語化する

地震防災は、同じ市町村でも家ごとに最適解が変わります。最初に確認したいのは次の3点です。
・揺れ:地盤(埋立地・造成地・谷埋め等)と建物の耐震性
・水:津波、河川氾濫、土砂災害、ため池、内水の可能性
・孤立:周辺道路の寸断、橋、崖、坂道、冬季の通行困難
ここを曖昧にしたまま備えると、必要な備えがズレます。逆に、リスクが見えるだけで「優先順位」が一気に整います。


■② 誤解されがちポイントは「備蓄=防災の完成」ではないこと

備蓄は重要ですが、備蓄だけでは命は守れません。
例えば、津波・土砂・大規模火災のリスクがある立地では、備蓄よりも「避難判断の速さ」が命を分けます。
防災士として見てきた現場の共通点は、備えの量より「迷いの少なさ」です。家族で「いつ・どこへ・どう動くか」を決めておくと、備蓄は少なくても強くなります。


■③ 住まいの耐震と室内安全が、最大の“減災投資”になる

地震で最も大きい被害は、倒壊・家具転倒・ガラス破損など「住まい由来」で起きます。
・耐震性(築年、耐震基準、劣化、増改築の有無)
・家具固定(寝室と子ども部屋を最優先)
・避難動線(玄関が塞がれない配置、靴・ライトの置き方)
東日本大震災のときも、揺れの後に生活を奪ったのは「家の中の被害」でした。まずは家を“避難所”にしないための安全化が、アップデートの中心になります。


■④ ライフライン前提を捨てて「48時間の自力運用」を作る

現代は、電気・水・通信が止まると生活が一気に詰みます。
・停電:照明、暖冷房、調理、情報、充電
・断水:飲料、トイレ、衛生、簡易清掃
・通信断:安否確認、避難情報、支援要請
【被災地派遣・LOの一次情報】
被災地では「水がない」「充電できない」「情報が入らない」が同時に起きると、不安が増幅して判断が乱れます。私は派遣先で、情報不足が原因で避難が遅れたり、同じ場所に人が集中して混乱が起きる場面を何度も見ました。だからこそ家庭の備えは、まず48時間だけでも自宅で回る設計にすると、初動が安定します。


■⑤ 「避難所に行く」だけでなく、自律型避難の選択肢を持つ

避難所は大切ですが、全員が一斉に集まると負担が集中します。
・自宅が安全なら在宅避難(近所の支援拠点も把握)
・危険なら早期避難(津波・土砂・火災は即判断)
・一時退避(垂直避難、近隣の頑丈な建物など)
行政側が言いにくい本音として、発災直後は人手も情報も限られ、全員を同じ質で支えるのは難しくなります。だからこそ、各家庭が「自分で判断できる材料」を持っている地域ほど、全体が守られます。


■⑥ 家族構成と生活スタイルの変化を、備えに反映する

15年の間に増えた現実は、家庭の“分散”です。
・共働きで家族が別々の場所にいる
・子どもの習い事や通学経路が多様化
・在宅ワークで昼間の在宅者が増える
この変化に合わせて、次を更新すると実効性が上がります。
・集合場所(第1・第2)と連絡手段(通信断前提)
・通学路の危険ポイント(ブロック塀、川、崖、橋)
・帰宅困難時の行動(無理に移動しない基準)
防災は「道具の更新」より、「生活の更新」に合わせる方が効きます。


■⑦ 情報の取り方をアップデートする|SNSより一次情報の導線を作る

災害時は情報が多すぎて混乱します。だから、入口を固定します。
・自治体の防災情報、気象庁、消防・警察など公的情報
・避難指示や警報の意味を平時に理解しておく
・家族内で「誰が何を見るか」を決める
【防災士として現場で見た“誤解されがちポイント”】【警報が出た=すぐ避難所】ではなく、立地と災害種別で動き方は変わります。津波や土砂は早く、内陸の揺れはまず安全確保と情報確認。判断の型があるほど、情報に振り回されなくなります。


■⑧ 今日できる「備えのアップデート」最短手順

完璧を狙うと止まるので、次の順で小さく進めます。
①ハザードと立地を確認し「我が家のリスク」を1枚に書く
②住まいの弱点を1つだけ潰す(家具固定、寝室の安全化など)
③48時間の自力運用を作る(電気・水・トイレ・情報)
④避難の分岐を決める(在宅/避難所/一時退避)
⑤家族の集合と連絡ルールを更新する
この順番なら、備えが「実際に使える形」で積み上がります。


■まとめ|3.11から15年、備えは「家の固有リスク」から作り直す

地震防災のアップデートは、備蓄の量を増やすことではなく、立地・住まい・生活スタイルの変化に合わせて、被災シナリオを現実に寄せることです。
まずは我が家の固有リスクを特定し、命に直結する部分から順に整えるだけで、備えは強くなります。

結論:
防災のアップデートは「立地と住まいの固有リスク特定」から始め、48時間の自力運用と避難判断の型を作ることが最短です。
防災士として被災地に入るたびに感じるのは、備えの差は物の多さより「迷いの少なさ」に出ることです。平時に決めた基準が、発災直後の判断を軽くし、家族の安全を確実にします。

■出典
だいち災害リスク研究所(さくら事務所)「東日本大震災から15年 現代社会が直面する『備えのアップデート』」
https://www.daichi-risk.com/column/39345/

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