災害ボランティアで浸水家屋や床下の作業に入る時は、長袖・長ズボン・手袋・長靴・マスク・ゴーグルなどの防護装備が必要になります。ですが、特に夏場は、この“正しい装備”そのものが暑さと蒸れを強め、体力を大きく削ります。厚生労働省は、浸水した家屋の清掃時に長袖・長ズボン・ゴム手袋・長靴・マスク・ゴーグル等の着用を案内しており、皮膚の露出を減らして感染症やけがを防ぐことが重要だとしています。
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_00341.html
一方で、環境省の熱中症環境保健マニュアルでは、作業時は着衣量が増えるほど熱負荷が上がりやすく、こまめな休憩、水分・塩分補給、作業時間の短縮が重要だと示されています。つまり、災害ボランティアでの防護装備は「着ければ安心」ではなく、装備によって増える暑さを前提に、作業時間と休憩を調整することまで含めて安全対策です。
https://www.wbgt.env.go.jp/pdf/manual/heatillness_manual_full.pdf
つまり、災害ボランティアで防護装備を全身着用する時に大切なのは、「暑くても我慢して続けること」ではなく、装備の必要性を理解した上で、暑さによる消耗を見越して作業量を下げることです。この記事では、その現実的な判断基準を整理して解説します。
■① まず結論として、防護装備で最優先にすべきことは何か
結論から言うと、最優先にすべきことは、装備を軽くすることではなく、装備を着けた状態で無理をしないことです。
災害ボランティアでは、「暑いから腕まくりしよう」「マスクを外した方が楽だ」と感じることがあります。ですが、装備を外しすぎると、泥や汚水、破片、粉じん、細菌との接触リスクが上がります。だから、最初に考えるべきは「どう外すか」ではなく、「この装備で続けられる作業量まで下げるか」です。
元消防職員として感じるのは、現場で危ないのは「装備が重いこと」だけではなく、「暑くてつらいのに、作業量を変えずに続けること」でもあるという点です。私なら、防護装備の現場では
まず装備は守る
次に時間を短くする
最後に暑さサインが出たらすぐ止める
この順で考えます。
■② なぜ防護装備は暑さのリスクを上げやすいのか
理由は、肌を覆う量が増えるほど、熱がこもりやすく汗も逃げにくくなるからです。
環境省の熱中症環境保健マニュアルでも、作業時の着衣量は熱負荷に影響し、作業の強度や環境温度とあわせて熱中症リスクを高める要因になると示されています。つまり、長袖・長ズボン・手袋・マスク・ゴーグル・長靴が必要な災害ボランティアでは、普通の屋外作業より暑さ対策を強めに考える方が現実的です。
https://www.wbgt.env.go.jp/pdf/manual/heatillness_manual_full.pdf
被災地派遣でも、防護装備を着けた瞬間に体感温度がかなり上がることは珍しくありませんでした。だから私は、「装備が必要な作業は、その分だけ短く区切るべき作業」だと考えます。
■③ どんな場面で特に暑さが危険になるのか
特に危険になりやすいのは、次のような場面です。
床下のように風が通りにくい場所
炎天下での泥出しや運搬作業
長靴で動き続ける作業
マスクやゴーグルで息苦しさが増す場面
休憩を後回しにしやすい少人数作業
こうした条件が重なると、暑さによる消耗が早く進みます。環境省も、WBGTが高い時には作業時間の短縮、こまめな休憩、単独作業を控えることなどを勧めています。
https://www.wbgt.env.go.jp/pdf/manual/heatillness_manual_full.pdf
■④ 装備を着けたまま無理をしないために、まず何を決めるべきか
まず決めたいのは、作業時間の上限と休憩のタイミングです。
「きつくなったら休む」だと遅れやすいので、
〇分作業したら一度出る
飲水は作業前後に必ず入れる
交代できるなら交代する
といったルールを先に決める方が安全です。
私なら、防護装備が必要な現場ほど「体力勝負」にしません。最初から“短く切る作業”として設計します。その方が結果として長く安全に続けられます。
■⑤ 水分補給はどう考えるべきか
防護装備の現場では、のどが渇く前に飲むことをかなり重く見た方がいいです。
環境省の熱中症環境保健マニュアルでは、暑い時や作業時はこまめな水分補給が必要であり、大量に汗をかく場合は水分だけでなく塩分も考えるべきだと示されています。
https://www.wbgt.env.go.jp/pdf/manual/heatillness_manual_full.pdf
元消防職員としても、防護装備を着けている時は、本人が思うより汗をかいていることが多いと感じます。私なら、「休憩の時に飲む」ではなく、「休憩のたびに必ず飲む」を前提にします。
■⑥ 装備を外したくなる時はどう考えるべきか
ここはかなり大事です。暑さで装備を外したくなる時ほど、作業を区切る判断を先に入れた方が安全です。
厚生労働省が示すように、浸水家屋の清掃では皮膚や粘膜を守る装備が重要です。つまり、暑さを理由に必要な装備をどんどん外していくと、感染症やけがのリスクが上がります。
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_00341.html
私なら、「外すか、我慢するか」の二択にはしません。一回出る、休む、水分を取る、体を冷やすを先に選びます。その方が安全です。
■⑦ どんなサインが出たら要注意か
次のようなサインが出たら、かなり注意した方がいいです。
頭がぼんやりする
吐き気がする
ふらつく
汗のかき方が急に変わる
イライラする
足元確認が雑になる
「あと少しだけ」が増える
環境省は、熱中症予防のために体調管理、こまめな休憩、水分・塩分補給、作業時間短縮などが重要だとしています。つまり、こうしたサインが出た時は、気合いで押し切る場面ではありません。
https://www.wbgt.env.go.jp/pdf/manual/heatillness_manual_full.pdf
■⑧ こんな時は作業継続より条件の見直しを優先した方がいい
次のような時は、作業を続けるより条件を見直す方が現実的です。
防護装備でかなり消耗している
風がなく、熱がこもる
交代がいない
飲水や休憩を取りにくい
装備を外したい気持ちがかなり強い
被災地経験でも、防護装備が必要な現場で無理を続けると、暑さから一気に崩れることがありました。私なら、「まだ動ける」ではなく「安全に続けられる条件があるか」で見ます。
■⑨ 迷った時の判断基準
迷ったら、次の順番で考えてください。
「装備を軽くする前に、作業量を下げられているか」
「防護装備が暑さリスクを上げる前提で動けているか」
「休憩・飲水・交代を先に決められているか」
「少しでも熱中症サインがあれば、すぐ止める判断ができるか」
この4つが整理できれば、災害ボランティアで防護装備を全身着用する時の判断としてはかなり現実的です。防災では、「装備を着けて頑張ること」より「装備を着けたまま壊れないこと」の方が大切です。
■⑩ まとめ
災害ボランティアで防護装備を全身着用する時に大切なのは、装備の必要性を守りながら、暑さによる消耗を前提に、作業時間・休憩・飲水・交代・退出判断を強めに持つことです。厚生労働省は浸水した家屋の清掃時に長袖・長ズボン・ゴム手袋・長靴・マスク・ゴーグル等の着用を案内しており、環境省は着衣量が熱負荷を上げること、水分・塩分補給、こまめな休憩、作業時間短縮の重要性を示しています。
私なら、防護装備の現場で一番大事なのは「暑くても我慢すること」ではなく「装備が必要な分だけ作業を軽くすること」だと伝えます。被災地でも、助かったのは根性で耐えた人より、暑さを前提に動けた人でした。だからこそ、まずは装備を守る、次に時間を短くする、最後にサインが出たらすぐ止める。この順番で整えるのがおすすめです。
出典:https://www.wbgt.env.go.jp/pdf/manual/heatillness_manual_full.pdf(環境省「熱中症環境保健マニュアル」)

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