【防災士が解説】災害ボランティアを「もう行かない」と決めたときの向き合い方|自分を責めないための判断基準

災害ボランティアのあと、「もう次は行けないかもしれない」「しばらく離れたい」「もう行かないと決めたい」と感じることがあります。こうした気持ちを持つと、「被災者のために頑張れない自分はだめだ」と自分を責めやすくなります。ですが、災害支援では、支援者自身にも強い負荷がかかることがあります。内閣府の避難生活支援リーダー/サポーター研修テキストでも、支援者には責任感や罪悪感、イライラ、気分の落ち込み、不眠などのストレス反応が起こりうるとされ、心身の不調があれば早めに共有し、必要に応じて専門家につなぐことが大切だと示されています。
https://www.bousai.go.jp/kyoiku/bousai-vol/pdf/231005_kenshu04.pdf

また、日本赤十字社の災害ボランティア向け冊子でも、不調になったら早めに活動をやめる勇気を持つこと一人で抱えこまないことが大切とされています。つまり、「もう行かない」と決めることは、後退や逃げではなく、今の自分の限界や状態を見て、壊れない側へ判断する行為として考える方が現実的です。
https://www.jrc.or.jp/volunteer-and-youth/volunteer/pdf/20221114-1696e14484023a1dabbe760d96763b37245f95ac.pdf

つまり、災害ボランティアを「もう行かない」と決めたときに大切なのは、その決断を“弱さ”として裁くことではなく、“今の自分を守る判断”として扱うことです。この記事では、その現実的な向き合い方を整理して解説します。

■① まず結論として、「もう行かない」と決めたときに最優先すべきことは何か

結論から言うと、最優先にすべきことは、その決断をすぐに否定しないことです。

災害ボランティアのあとに「もう無理かもしれない」と感じる時は、たいてい心か体にかなり負荷がかかっています。そこで、「そんなことを思う自分は冷たい」「行かないなんて逃げだ」と上から押さえ込むと、さらに苦しくなりやすいです。だからまずは、今そう感じていること自体を事実として認める方が現実的です。

元消防職員として感じるのは、被災地支援のあとに崩れやすい人は「行かなかった人」ではなく、「無理なのに自分を押し込んで行き続ける人」だという点です。私なら、こういう時は
まず気持ちを認める
次に理由を整理する
最後に一人で抱え込まない
この順で整えます。

■② なぜ「もう行かない」と思うことがあるのか

理由はさまざまです。

たとえば、
体力的にきつかった
現場の光景が強く残っている
無力感が抜けない
暑さや疲労が予想以上だった
家族との両立が難しかった
気持ちの落ち込みが続いている
といったことがあります。

こうした理由は、どれも珍しいものではありません。内閣府の研修テキストでも、支援者には責任感や罪悪感だけでなく、気分の落ち込みや不眠などさまざまなストレス反応が起こりうるとされています。つまり、「もう行かない」と感じる背景には、心身の負荷が現実にあることが多いです。
https://www.bousai.go.jp/kyoiku/bousai-vol/pdf/231005_kenshu04.pdf

■③ 「もう行かない」は本当に“逃げ”なのか

私は、必ずしもそうは考えません。

災害支援は、善意だけで続けられるものではありません。体力、生活、家族、心の状態、仕事との両立など、いろいろな条件が必要です。だから、「今の自分では続けられない」と判断することは、現実から逃げることではなく、現実を正しく見た結果でもあります。

日本赤十字社も、不調になったら早めに活動をやめる勇気が大切としています。つまり、支援の世界では「無理を続けること」より「止まるべき時に止まること」の方が重要な場合があります。
https://www.jrc.or.jp/volunteer-and-youth/volunteer/pdf/20221114-1696e14484023a1dabbe760d96763b37245f95ac.pdf

■④ まずやりたい整理法は何か

まずやりたいのは、「もう行かない」と思った理由を短く言葉にすることです。

たとえば、
体が持たなかった
気持ちが落ち込みすぎた
家族との時間を守りたい
今は休む方が必要だ
このくらいで十分です。

大切なのは、「行かない」という結論そのものより、「なぜそう感じたのか」を見える形にすることです。私なら、紙やスマホに一文だけでも書きます。その方が、自分を責めるだけで終わりにくいです。

■⑤ 自分を責めやすい人ほど確認したいことは何か

確認したいのは、“行かないこと”と“無価値であること”を結びつけていないかです。

災害ボランティアに行かない、行けない、やめる、距離を置く。これは「その人の価値が下がる」という意味ではありません。ですが、責任感が強い人ほど、「行かない自分は冷たい」「支援に背を向けた」と感じやすいです。

元消防職員としても、現場で本当に危ないのは「行かない人」ではなく、「行かない自分を責め続ける人」だと感じます。私なら、「今の自分を守る判断をした」と言い換えます。その方が現実に合っています。

■⑥ 「もう行かない」と決めたあと、何をすればいいのか

大切なのは、空いた心のスペースを回復に使うことです。

たとえば、
しっかり休む
家族や友人と過ごす
睡眠を整える
体の疲れを取る
災害関連の情報から少し距離を取る
といったことです。

被災地経験でも、「行かない」と決めたあとに何もしないと、罪悪感だけが残りやすいことがあります。だから私は、「行かない」と決めたら、その分だけ戻す行動を入れる方をすすめます。

■⑦ “もう行かない”は一生の決断にしなくていいのか

はい。一生の決断にしなくて大丈夫です。

今の自分に必要なのは、「永遠にやめるかどうか」を決めることではなく、今は行かない方がいいと決めることかもしれません。災害ボランティアとの距離は、体調や生活、気持ちによって変わっていいものです。

私なら、「一生行かない」と大きく決めるより、「今は行かない」「今シーズンは休む」と区切って考えます。その方が自分を追い詰めにくいです。

■⑧ こんな時は一人で抱え込まない方がいい

次のような状態があるなら、「行かない」と決めたことそのものより、今の心身の状態を優先して相談した方が安全です。

眠れない
罪悪感が強すぎる
涙が止まらない
日常生活へ戻れない
気分の落ち込みが何日も続く

内閣府の研修テキストでも、支援者に心身の反応が出ている場合は、早めに運営責任者や保健師などに相談し、必要に応じて専門家の力を借りることが示されています。
https://www.bousai.go.jp/kyoiku/bousai-vol/pdf/231005_kenshu04.pdf

■⑨ 迷った時の判断基準

迷ったら、次の順番で考えてください。

「今“もう行かない”と感じるほど、心身に負荷がかかっていないか」
「その決断をすぐに弱さと決めつけていないか」
「理由を短く言葉にできているか」
「一人で抱え込まず、誰かにつなげられているか」

この4つが整理できれば、災害ボランティアを「もう行かない」と決めたときの向き合い方としてはかなり現実的です。防災では、「行き続けること」より「壊れないこと」の方が大切です。

■⑩ まとめ

災害ボランティアを「もう行かない」と決めたときに大切なのは、その決断を弱さとして否定せず、今の自分の心身を守る判断として受け止め、理由を整理して一人で抱え込まないことです。内閣府の避難生活支援リーダー/サポーター研修テキストでは、支援者の責任感や罪悪感、不眠、気分の落ち込みなどはストレスのサインとされ、日本赤十字社も不調になったら早めに活動をやめる勇気が大切だと示しています。

私なら、災害ボランティアで一番大事なのは「行き続けること」ではなく「壊れずに判断できること」だと伝えます。被災地でも、助かったのは無理を続けた人より、止まるべき時に止まれた人でした。だからこそ、まずは気持ちを認める、次に理由を整理する、最後に一人で抱え込まない。この順番で整えるのがおすすめです。

出典:https://www.jrc.or.jp/volunteer-and-youth/volunteer/pdf/20221114-1696e14484023a1dabbe760d96763b37245f95ac.pdf(日本赤十字社「ボランティア、ご安全に!」)

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