災害ボランティアのあと、帰宅してからも「何となく気持ちが落ち着かない」「活動の場面が頭に残る」「疲れているのに休んだ感じがしない」と感じることがあります。こうした反応は、特別に弱い人だけに起こるものではありません。災害や事故、強い緊張を伴う支援活動のあとには、心や体に反応が出ることがあります。大切なのは、それを気合いで押さえ込むことではなく、早めに気づいて、強くなる前に整えることです。
つまり、災害ボランティア後の“惨事ストレス”への対処で大切なのは、「自分は大丈夫だと思い込むこと」ではなく、今の自分にどんな変化が出ているかを、心・体・行動の3つで確認することです。この記事では、その現実的なチェックリストを整理して解説します。
■① まず結論として、“惨事ストレス”のチェックで最優先にすべきことは何か
結論から言うと、最優先にすべきことは、今の反応を“性格の問題”ではなく“支援後の反応”として見ることです。
災害ボランティアのあとに起きるつらさは、
気持ちの弱さ
根性不足
ではなく、支援活動の負荷に対する自然な反応であることがあります。
元消防職員として感じるのは、被災地支援のあとに崩れやすい人は「弱い人」ではなく、「大丈夫だと思い込んで見ない人」だという点です。私なら、こういう時は
まず変化に気づく
次に一人で抱え込まない
最後に必要なら休む・相談する
この順で整えます。
■② そもそも“惨事ストレス”とは何か
ここでいう“惨事ストレス”は、災害や事故、支援活動など強い緊張や衝撃を伴う出来事のあとに出る心身の反応と考えると分かりやすいです。
現場で見たこと、聞いたこと、におい、音、無力感、責任感、焦り、暑さや寒さ、長時間活動の疲れ。こうしたものが重なると、帰宅後に心や体へ遅れて反応が出ることがあります。
被災地経験でも、「活動中は平気だったのに、帰ってからつらくなった」ということは珍しくありませんでした。だから、活動後に出る反応は“後から来る”こともあると知っておく方が現実的です。
■③ まず見たいチェック① 心の変化
まず見たいのは、心の変化です。
次のようなことが続いていないかを見てください。
気分が落ち込む
イライラしやすい
涙が出やすい
不安が強い
無力感が抜けない
自分を責める気持ちが強い
被災者に申し訳ない気持ちが離れない
現場のことを思い出すと苦しい
この中でいくつか重なるなら、かなり疲れているサインかもしれません。私なら、「こんな気持ちはおかしい」とは考えず、「今の自分はかなり張り詰めている」と見ます。
■④ 次に見たいチェック② 体の変化
次に見たいのは、体の変化です。
たとえば、
眠れない
寝ても休んだ感じがしない
朝が重い
食欲が落ちる
頭痛や肩こりが強い
動悸や息苦しさがある
胃腸の調子が悪い
疲れが何日も抜けない
といった変化です。
災害ボランティア後は、心の負担が体に出ることもかなりあります。私なら、「気持ちの問題だから我慢しよう」ではなく、「体に出ているならかなり大事なサイン」と考えます。
■⑤ さらに見たいチェック③ 行動の変化
三つ目は、行動の変化です。
次のようなことが増えていないかを見ます。
人と話したくなくなる
家族や職場で強く当たる
SNSや報道を見すぎる
逆に何も見たくなくなる
お酒やタバコが増える
じっとしていられない
何もしたくなくなる
次の活動に焦って申し込もうとする
元消防職員としても、被災地支援のあとに一番見逃しやすいのは“行動の変化”だと感じます。本人は平気なつもりでも、行動にはかなり出ることがあります。私なら、「最近の自分、少し極端ではないか」を見ます。
■⑥ チェックリストの見方はどう考えればいいのか
大切なのは、一つ当てはまったから重症だと決めつけないことです。
災害ボランティアのあとに、少し眠れない、少しイライラする、少し気持ちが揺れることはありえます。大事なのは、
いくつも重なっているか
何日も続いているか
日常生活に影響しているか
です。
私なら、「ある・ない」で機械的に判断するより、「今の自分は活動前よりかなり変わっているか」で見ます。その方が現実的です。
■⑦ こんな時は“要注意”と考えたい
特に要注意なのは、次のような状態です。
眠れない状態が続く
自分を責める気持ちがどんどん強くなる
涙や怒りが抑えにくい
日常生活や仕事に戻れない
人と会うのがつらい
活動の場面が何度も頭に浮かんで苦しい
こういう時は、「少し疲れているだけ」と軽く見ない方が安全です。私なら、ここまで来たら“気合いで戻す段階”ではなく、“支えを増やす段階”だと考えます。
■⑧ チェックしたあと、最初にやるべきことは何か
チェックしたあとに大切なのは、一人で結論を出さないことです。
まずは、
仲間に話す
家族に伝える
予定を減らす
休養を優先する
ことです。
災害ボランティア後の反応は、一人で抱え込むほど強くなりやすいです。私なら、「こんなことで相談していいのか」ではなく、「今のうちに小さく出しておく」を優先します。
■⑨ こんな時は専門相談も考えた方がいい
次のような時は、専門相談もかなり現実的です。
不眠が続く
食事や仕事に影響が出る
強い自責感が抜けない
家族や職場との関係に影響が出る
つらさが数日ではなく長引く
私なら、「専門相談=重い人が行く所」とは考えません。災害ボランティアのあとに長引く反応があるなら、早めに話を聞いてもらう方が安全です。
■⑩ 迷った時の判断基準
迷ったら、次の順番で考えてください。
「心の変化が増えていないか」
「体の変化が続いていないか」
「行動が活動前より極端になっていないか」
「一人で抱え込まず誰かにつなげられているか」
この4つが整理できれば、災害ボランティア後の“惨事ストレス”に気づくためのチェックとしてはかなり現実的です。防災では、「平気なふりをすること」より「早めに気づくこと」の方が大切です。
■⑪ まとめ
災害ボランティア後の“惨事ストレス”に気づくためのチェックリストで大切なのは、心・体・行動の変化を早めに見て、一人で抱え込まず、必要なら休養や相談へつなげることです。支援のあとに不安、イライラ、涙、不眠、無力感、自責感などが出ることは珍しくありません。むしろ、真剣に向き合った人ほど起こりやすい反応です。
私なら、災害ボランティア後に一番大事なのは「大丈夫だと頑張り続けること」ではなく「今の自分の変化に早く気づくこと」だと伝えます。被災地でも、助かったのは強く我慢した人より、早くサインを見つけられた人でした。だからこそ、まずは気づく、次に共有する、最後に必要なら休む・相談する。この順番で整えるのがおすすめです。
出典:https://www.bousai.go.jp/kyoiku/bousai-vol/pdf/231005_kenshu04.pdf(内閣府「避難生活支援リーダー/サポーター研修テキスト」)

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