災害時、けが人や急病人が一気に増えると、救急搬送はすぐに詰まります。しかも、病院自体も停電や断水、建物被害、職員不足に直面します。そんな中で「医療を止めない」ための要として整備されているのが災害拠点病院です。これは単に“災害に強い病院”ではなく、受け入れ・搬送・支援の中心として機能することが求められています。ここでは、災害拠点病院の役割と、住民が知っておくべき現実を整理します。
■① 災害拠点病院とは何か
災害拠点病院は、大規模災害時に傷病者を受け入れ、医療救護活動の中核となる病院として位置づけられています。災害時には、通常医療に加えて多数傷病者対応、広域搬送の調整、医療チームの受け入れなど、地域全体の医療を支える役割を担います。
■② 何を担うのか(受け入れ・指揮・広域搬送)
災害拠点病院が担う役割は、次の3つが柱です。
・傷病者の受け入れ(トリアージを含む)
・医療救護活動の調整(医療チーム、関係機関との連携)
・広域搬送の調整(重症者を地域外へ送る仕組み)
災害時は「近い病院へ運ぶ」だけでは回りません。地域として医療を回す調整が必要になり、その中心が災害拠点病院です。
■③ なぜ必要なのか(通常医療のままでは崩れる)
災害時には、
・外傷、熱傷、挫滅、低体温
・慢性疾患の悪化(喘息、心不全、糖尿病など)
・避難所での感染症拡大
が同時に起きます。病院側も停電・断水・職員の被災・資機材不足に直面します。通常医療の延長では崩れるため、災害時に機能し続ける体制が必要です。
■④ 救急搬送が詰まる理由(病院が満杯になるだけではない)
災害時に搬送が詰まるのは、単に病院が満杯だからではありません。
・道路寸断で搬送時間が伸びる
・通信障害で受入確認が遅れる
・同時多発で救急車が足りない
・搬送先の振り分けが複雑になる
この詰まりを解消するには、医療と消防の連携、情報共有、優先順位の統一が不可欠です。
■⑤ 被災地派遣(LO)で見た「医療が回るかは情報と調整で決まる」現実
被災地派遣(LO)の現場では、医療が回るかどうかは、現場の頑張りだけでなく「調整が回るか」で決まると痛感しました。受入状況が共有されるだけで搬送が滑らかになり、逆に情報が散らばると同じ確認が増えて救急車が動けなくなります。災害拠点病院の価値は、医療行為だけでなく、地域医療の調整中枢として機能することにあります。
■⑥ 住民が知っておくべき注意(災害時は“病院に行けば助かる”ではない)
災害時、病院は救命・重症対応が優先になります。軽症者が集中すると、重症者の処置が遅れます。住民側で重要なのは、
・軽症は自己対応を基本にする
・救急車は本当に必要なときに使う
・かかりつけ薬や情報(お薬手帳)を持つ
という現実的な判断です。医療資源は有限で、守るべき優先順位があります。
■⑦ 避難所・大規模避難所との関係(感染症と慢性疾患が増える)
避難所生活が始まると、外傷だけでなく、
・脱水
・睡眠不足
・血圧上昇
・喘息悪化
・感染症(胃腸炎、インフルエンザ等)
が増えます。災害拠点病院は、こうした中長期の健康被害にも関わってきます。だからこそ、避難所側の衛生、体温調整、薬の確保が、医療逼迫を減らす備えになります。
■⑧ 今日からできる備え(医療を“使い切らない”備え)
家庭でできる最小の備えは、医療を使い切らない準備です。
・常備薬・持病薬の確保(ローリングストック)
・お薬手帳、診療情報の控え
・体温計、消毒、マスクなどの衛生用品
・軽症対応の基本(止血、冷却、固定)
災害時は「病院に行けない前提」で準備するほど、命が守られます。
■まとめ|災害拠点病院は“地域医療を回す中枢”。住民の備えが逼迫を減らす
災害拠点病院は、大規模災害時の医療救護の中核として、受け入れ・調整・広域搬送を担います。災害時は通常医療の延長では崩れやすく、情報共有と優先順位の統一が鍵になります。住民側は、軽症対応の準備や薬の確保などで医療逼迫を減らし、限られた資源を重症者に回すことが重要です。
結論:
災害拠点病院は「重症者を救う最後の砦」であり、地域医療を回す調整中枢。住民が軽症対応と薬の備えをしておくほど、救える命が増えます。
防災士として、被災地派遣(LO)の現場でも、情報と調整が回った瞬間に搬送が整い、救命の速度が上がる現実を見てきました。医療は、住民の備えとつながって守られます。
出典:https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000098816.html

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