【防災士が解説】災害時に「知っている歌」が心を支える理由

災害時、人は新しい刺激を受け入れる余裕を失いがちです。被災地では、「知らないもの」が不安を増幅させ、「知っているもの」が心を支えている場面を多く見てきました。音楽も同じで、特に“知っている歌”が大きな役割を果たしていました。この記事では、被災地経験を踏まえながら、その理由を整理します。


■① 災害時は「安心できる情報」しか受け取れない

災害直後は、脳が強いストレス状態にあります。この状態では、新しい曲や複雑な音楽は負担になります。被災地では、初めて聴く音楽よりも、すでに知っている歌の方が受け入れられやすい傾向がありました。


■② 知っている歌は「考えなくていい」

知っている歌は、歌詞や展開を予測できます。そのため、頭を使わずに聴けます。被災地では、「何も考えずに聴けた」「頭が休まった」という声が多く、これが大きな心理的効果になっていました。


■③ 記憶が「安全だった時間」に戻る

知っている歌は、過去の記憶と結びついています。家庭、学校、日常生活。被災地では、知っている歌を聴くことで、「災害前の日常」を一瞬でも思い出し、心が落ち着く人がいました。


■④ 歌詞を口ずさめることが安心につながる

歌詞を自然に口ずさめること自体が、安心感につながります。被災地では、小さく歌詞をなぞるように口を動かしている人も多く見られました。これは、無意識に心を安定させる行動です。


■⑤ 子どもから高齢者まで共有しやすい

知っている歌は、世代を超えて共有しやすい特徴があります。被災地では、同じ歌を知っていることで、年齢差を越えたつながりが生まれることもありました。これは孤立を防ぐ小さな力になります。


■⑥ 新しいメッセージを受け取らなくて済む

災害時は、情報や感情の入力過多になりがちです。知っている歌は、新しいメッセージを受け取る必要がありません。被災地では、「もうこれ以上、何も入れたくない」という状態の人にとって、大きな支えになっていました。


■⑦ 無理に前向きにならなくていい

応援ソングや前向きな歌詞が、かえってつらく感じることがあります。知っている歌は、「頑張れ」と言われなくても、ただ存在してくれます。被災地では、この距離感がとても重要でした。


■⑧ 「知っている歌」は心の避難所になる

被災地で感じたのは、知っている歌が“心の避難所”のような役割を果たしているということです。特別な準備はいりません。ただ思い出せるだけでいい。災害時に心を守るのは、こうした身近で静かな存在でした。

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