【防災士が解説】災害時にエレベーターを使っていいのはどんな場面?迷ったときの判断基準

地震や火災、停電が起きたとき、「エレベーターを使って降りた方が早いのでは」と考える人は少なくありません。
特に高層階に住んでいる人や、足腰に不安がある人、小さな子どもを抱えている人ほど、その判断に迷いやすいです。

ただ、防災の基本としては、災害時の避難でエレベーターは原則使わないと考えるのが安全です。
理由は単純で、停電、地震による停止、設備異常、火災時の煙の影響などで、途中で閉じ込められる危険があるからです。 oai_citation:0‡東京都交通局

とはいえ、現実には「高層階だからどうするのか」「要介助者がいる場合はどう考えるのか」など、単純に“絶対ダメ”だけでは整理しきれない場面もあります。
この記事では、災害時にエレベーターを使う判断をどう考えるべきか、実際の防災の考え方に沿って整理します。 oai_citation:1‡防災情報提供センター

■① 基本原則は「避難では使わない」

まず大前提として、避難するときはエレベーターを使わないのが基本です。
東京消防庁も、地震時の避難ではエレベーターを使わないよう案内しています。停電や揺れによって閉じ込められることがあるためです。 oai_citation:2‡東京都交通局

また、国土交通省の安全基準では、エレベーターには地震時に最寄り階へ停止して扉を開くための安全装置が求められています。
これは「地震時にも安心して使い続けるため」ではなく、異常時に安全側へ止めるための仕組みです。つまり、止まった後に通常通り使えることを前提にはしていません。 oai_citation:3‡国土交通省

防災では、「便利だから使う」ではなく、「途中で止まったら命に関わるか」で考える必要があります。
その意味で、避難の最中にエレベーターへ頼る判断はかなり危ういです。 oai_citation:4‡東京都交通局

■② 地震のときに危ないのは“今動いているから大丈夫”と思うこと

地震のときに特に危ないのは、「まだ動いているから今のうちに使おう」という判断です。
実際には、地震感知で最寄り階停止になることがあり、大地震ではその後しばらく使用停止になることもあります。内閣府の広報資料でも、大地震が起きると多くのエレベーターが停止し、技術者が個別に復旧させるまで使えなくなると説明されています。 oai_citation:5‡防災情報提供センター

マンション防災でも、震度4程度以上でエレベーターが停止し、閉じ込めリスクがあることが東京消防庁から示されています。 oai_citation:6‡東京都交通局

つまり、地震時のエレベーターは「使えるかもしれない移動手段」ではなく、「いつ止まってもおかしくない設備」と見た方が安全です。
元消防職員としての感覚でも、災害時に危ないのは設備の故障より、“普段と同じ感覚で使おうとすること”です。

■③ 火災のときは、さらに使わない方がいい

火災時は、地震時以上にエレベーターを避けるべきです。
火災では停電や制御停止だけでなく、煙が建物内に広がる可能性があります。エレベーター前やシャフト周辺の環境が悪化すると、移動中に危険を増やすおそれがあります。

一般の避難行動としては、火災時は階段を使うのが基本です。
建物側に「非常用エレベーター」がある場合でも、それは主に消防活動や管理上の用途を想定した設備で、居住者が自己判断で使う前提とは別です。

災害時は、「上へ行く密閉空間」に自分から入る判断は慎重であるべきです。
逃げ道が一つしかない設備に頼るのは、防災では弱い選択になりやすいです。

■④ では、高層階の人はどう考えればいいのか

高層階に住んでいる人ほど、「階段では無理では」と感じやすいです。
この不安はもっともです。
実際、内閣府の資料でも、大地震時には高層建物でエレベーター停止が長引き、生活継続に大きな影響が出ることが示されています。 oai_citation:7‡防災情報提供センター

だからこそ、高層階の防災は「災害時にエレベーターを使うかどうか」で考えるのではなく、止まる前提で備えることが重要です。
具体的には、飲料水、非常食、携帯トイレ、モバイル電源、常備薬などを室内に備え、すぐに外へ出られなくても一定期間しのげるようにしておくことです。 oai_citation:8‡防災情報提供センター

被災地支援でも感じましたが、災害時に本当に強いのは「移動できる人」ではなく、「移動しなくても数日耐えられる人」です。
高層階ではこの視点が特に大切です。

■⑤ 例外的に判断を考えるべき人はいる

一方で、足の不自由な人、車いす利用者、重い持病がある人など、階段避難が現実的でないケースもあります。
この場合は、「災害時にエレベーターを使ってよいか」をその場で迷うのではなく、平時に建物管理者や家族と避難方法を決めておくことが必要です。

たとえば、どの階段が使いやすいか、誰が支援するか、どこで待機するか、一時的にその場にとどまる方が安全か、といった点です。
災害時の要配慮者対応は、一般論だけで片づけると逆に危険です。

防災士としての視点でも、例外が必要な人ほど「ルールを破る準備」ではなく、「例外時の手順を先に作る準備」が大切です。
その場の思いつきでエレベーターを使うことが、最も危ないパターンになりやすいです。

■⑥ エレベーターの中で地震が起きたらどうするか

もし乗っている最中に地震を感じたら、東京消防庁は、すべての階のボタンを押し、扉が開いた階ですぐ降りるよう案内しています。
閉じ込められた場合は、通報ボタンなどで外部に連絡することが基本です。 oai_citation:9‡東京都交通局

ここでも大切なのは、「少し待てば動くかも」と期待しすぎないことです。
地震後は安全確認や復旧に時間がかかることがあります。内閣府や東京消防庁の情報でも、災害後の停止や閉じ込めリスクが明示されています。 oai_citation:10‡防災情報提供センター

つまり、災害時のエレベーターは“移動設備”というより、“停止するかもしれない空間”として考えておく方が安全です。

■⑦ よくある誤解

よくある誤解の一つは、「新しいエレベーターだから大丈夫」という考え方です。
確かに安全対策は進んでいますが、地震時管制運転があることと、災害時に使い続けられることは別です。安全装置が付いているほど、むしろ異常時には止まる前提で設計されています。 oai_citation:11‡国土交通省

もう一つは、「少しの揺れなら使ってもよいだろう」という考え方です。
実際には震度4程度以上で停止するケースも示されており、見た目では設備状態はわかりません。 oai_citation:12‡東京都交通局

そして一番危ない誤解は、「階段が大変だからエレベーターの方が合理的」という発想です。
平時なら合理的でも、災害時は“途中で閉じ込められないこと”の方が優先です。
楽な手段より、止まっても自力で逃げられる手段を選ぶ。
これが防災の基本です。

■⑧ まとめ

災害時にエレベーターを使う判断は、原則として避けるのが安全です。
地震でも火災でも、途中停止や閉じ込めの危険があり、避難手段としては弱いからです。 oai_citation:13‡東京都交通局

高層階の人ほど不安は大きいですが、考えるべきなのは「災害時に使うか」ではなく、「止まっても困らない備えをどう作るか」です。
また、階段避難が難しい人は、当日の自己判断に頼らず、事前に建物や家族と手順を決めておくことが大切です。

元消防職員として言えば、災害時に命を守る判断は、速さより“詰まないこと”が重要です。
エレベーターは便利な設備ですが、災害時は頼る設備ではなく、止まる前提で考える設備です。
その感覚を持っておくだけで、避難判断はかなりぶれにくくなります。

出典:東京消防庁「避難をする時はエレベーターを使わないようにする」

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