災害を経験したあと、強い揺れや音、匂い、光景が突然よみがえり、心が締めつけられるような感覚に襲われる人がいます。被災地では、「もう終わったはずなのに、体が勝手に反応する」という声を多く聞きました。この記事では、被災地経験を踏まえ、音楽がトラウマを和らげる可能性について整理します。
■① トラウマは「思い出」ではなく「体の反応」
トラウマは、考え方の問題ではありません。被災地では、頭では安全だと分かっていても、体が緊張してしまう人が多くいました。音楽は、この体の反応に直接働きかける数少ない手段の一つです。
■② 音楽は体の緊張を下げる入口になる
静かな音や一定のリズムは、呼吸や心拍をゆっくりにします。被災地では、音楽を聴いているうちに「体が少し緩んだ」と感じる人がいました。体が落ち着くと、心も過剰な警戒から離れやすくなります。
■③ 記憶を書き換えるのではなく「重ねる」
トラウマを消すことはできません。被災地で有効だったのは、怖い記憶を消そうとするのではなく、「安全な感覚」を何度も重ねることでした。音楽は、その安全な感覚を作る材料になります。
■④ 反応が出たときの“戻り道”を作れる
突然不安が強くなったとき、戻れる場所があるかどうかは重要です。被災地では、「この音を聴くと落ち着く」という感覚が、パニックを広げない支えになっていました。音楽は心の避難経路になります。
■⑤ 感情を無理に引き出さない音が向いている
トラウマがある状態で、感情を強く揺さぶる音楽は逆効果になることがあります。被災地で長く使われていたのは、淡々と流れる音でした。刺激の少なさが、安心につながります。
■⑥ 一人で使えることが大きな強み
トラウマ反応は、人前では起きにくいとは限りません。被災地では、一人で静かに音楽を使えることが、安心材料になっていました。周囲に説明せずに使える点も重要です。
■⑦ 「効かない日」があっても異常ではない
音楽を聴いても楽にならない日もあります。被災地では、「今日は合わなかった」と受け止めることが、心を守る行動になっていました。効かないからといって、無理に続ける必要はありません。
■⑧ 音楽は回復を支える“補助輪”
音楽だけでトラウマが治るわけではありません。しかし、回復の過程を支える補助輪にはなります。被災地で感じたのは、「体が少し楽になる手段を持っている人ほど、回復の道を歩みやすい」という現実でした。

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