災害時、「家族に連絡が取れない」「どの情報を信じればいいか分からない」という不安はとても大きいものです。
特に地震や大雨の直後は、電話がつながりにくくなったり、SNSに不確かな情報が増えたりして、かえって判断が難しくなることがあります。
だからこそ、防災では「万能な通信手段を一つ持つ」のではなく、「何に使う通信手段なのか」を分けて考えることが大切です。
この記事では、災害時の通信手段について、実際に使えるものと過信しない方がいいものを、家庭防災の視点で整理します。
■① 災害時の通信で一番大事なのは「長電話」ではなく「短く確実に伝えること」
災害時に多くの人がまずやりたくなるのは、家族への電話です。
ですが、大きな災害直後は通話が集中し、音声通話はつながりにくくなることがあります。
このとき大切なのは、「とにかく電話をかけ続けること」ではありません。
本当に必要なのは、次の3点です。
「無事かどうか」
「どこにいるか」
「次にどうするか」
つまり、災害時の通信は、普段の会話の延長ではなく、要点を短く伝える手段として考える必要があります。
防災では、通信の質よりまず“伝わる確率”を優先した方が現実的です。
■② 最も現実的なのは「スマホ+複数手段の併用」
今の家庭防災で最も現実的な通信の中心は、やはりスマホです。
ただし、スマホ一台だけを信じるのではなく、スマホの中で複数の連絡手段を持っておくことが重要です。
例えば、次のような役割分担です。
・通話
・SMS
・LINEなどのメッセージアプリ
・自治体の防災アプリや登録メール
・気象情報や避難情報の確認
・地図確認
同じスマホでも、音声通話が不安定でもメッセージは届くことがあります。
逆に、SNSは見られても自治体情報を確認していないと、肝心の避難情報を見落とすことがあります。
つまり現実的なのは、「スマホ一択」ではなく、「スマホを通信の土台にして、複数の入口を持つこと」です。
■③ 家族の安否確認で本当に強いのは171とweb171
災害時の家族連絡で、意外と見落とされがちなのが災害用伝言ダイヤル171とweb171です。
普段はあまり使いませんが、大きな災害時には「電話番号をキーにして伝言を残す・確認する」仕組みとして非常に実用的です。
音声通話のように相手がその場にいなくてもよく、家族であらかじめ使い方を共有しておけば、安否確認の土台になります。
大切なのは、災害が起きてから調べるのではなく、平時に次のことを決めておくことです。
・誰の電話番号を基準にするか
・171を使うのかweb171を使うのか
・伝言は短く何を残すか
・毎月や防災週間の体験利用で一度試すか
元消防職員として感じるのは、災害時に人を一番焦らせるのは「状況が分からないこと」より「家族の無事が分からないこと」です。
だからこそ、通信手段は情報収集用と同じくらい、安否確認用を分けて準備しておく価値があります。
■④ 情報収集では「SNSだけ」は危ない
災害時、SNSは速いです。
現場の様子、停電情報、道路状況などが早く流れてくるため、参考になることは多いです。
ただし、SNSだけに頼るのは危険です。
古い情報が拡散されたり、別地域の映像が混ざったり、善意の誤情報が広がったりすることがあるからです。
そのため、情報収集では次の順番が現実的です。
まず自治体や気象庁などの公式情報を見る。
次にテレビ、ラジオ、公式アプリ、登録メールで確認する。
その上でSNSは補助的に使う。
SNSは「早いけれど、最後の確認先ではない」と考えた方が安全です。
特に避難の要否に関わる情報は、公式発表で確認する癖をつけた方がいいです。
■⑤ 停電時に強いのは、実はラジオと自治体情報
災害時の通信というとスマホ中心に考えがちですが、停電や通信障害を考えると、ラジオの価値はまだ高いです。
特に乾電池式や手回し対応のラジオは、停電時でも情報を受け取れる可能性があります。
また、自治体の防災行政無線、登録制メール、防災アプリ、緊急速報メールなどは、地域に必要な情報に強いのが特徴です。
全国ニュースでは分からない避難所開設情報や給水情報、地域の危険箇所が分かることがあります。
被災地派遣でも、広い意味での「最新情報」は多くありましたが、本当に必要だったのは“その地区の住民が次にどう動くか”に直結する情報でした。
だから家庭防災では、全国ニュースを見るだけでなく、自分の住む自治体の情報経路を確認しておくことが大切です。
■⑥ 逆に、過信しない方がいい通信手段もある
災害時に使えると思い込まれやすいけれど、過信しない方がいいものもあります。
まず、音声通話だけに頼ることです。
大規模災害では通話集中でつながりにくくなることがあります。
次に、SNSの口コミだけに頼ることです。
速さはあっても、正確さが担保されるとは限りません。
さらに、「その時になれば何とかなる」と考えることも危険です。
通信手段は、持っているだけでは役に立ちません。
充電、家族ルール、アプリ登録、連絡先整理までできて初めて機能します。
災害時は、便利なものが強いのではなく、準備していたものが強いです。
■⑦ 家庭で今すぐ決めておきたい通信ルール
通信手段そのものより大切なのが、家族でのルール決めです。
決めておきたいのは、例えば次の内容です。
・災害時の第一連絡手段は何にするか
・通話がだめなら次はSMSかLINEか
・171またはweb171を使うか
・集合場所はどこか
・子どもが一人の時は誰に連絡するか
・スマホの充電が少ない時は何を優先するか
ここが決まっていないと、手段があっても混乱します。
逆に、家族で一つでも共通ルールがあると、災害時の不安はかなり減ります。
■⑧ 最も現実的な通信手段は「一つ」ではなく「組み合わせ」
災害時の通信手段は何が最も現実的かと聞かれたら、答えは一つではありません。
最も現実的なのは、目的ごとに組み合わせることです。
安否確認なら、171やweb171も含めて事前に決めておく。
日常連絡なら、SMSやメッセージアプリを使えるようにする。
情報収集なら、自治体情報、緊急速報メール、ラジオ、公式サイトを優先する。
SNSは補助として使う。
この形が、一番壊れにくいです。
どれか一つが使えなくなっても、他の手段で補えるからです。
■まとめ
災害時の通信手段で一番現実的なのは、「これ一つあれば安心」という万能手段ではありません。
スマホを中心にしながら、通話、SMS、メッセージアプリ、171、web171、自治体情報、ラジオを役割ごとに使い分けることです。
特に家族の安否確認は、災害が起きてから考えるのでは遅くなりがちです。
私なら、最初に家族で「通話が無理ならSMS」「安否確認は171かweb171」「集合場所はここ」と3つだけ先に決めます。現場でも、情報が少ないことより“家族の状況が分からないこと”で判断が乱れる場面を多く見ました。だから通信対策は、機械より先に家族ルールを決めることが実は一番強い備えです。

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