【防災士が解説】相次ぐバックカントリー遭難の実態と課題|防災×バックカントリー

スキー場管理区域外の雪山を滑走する「バックカントリー(BC)」の人気が高まる一方で、近年、北海道や長野県を中心に遭難事故が相次いでいます。特に外国人遭難者の割合が高く、雪崩や道迷いだけでなく、クマ被害といった新たなリスクも顕在化しています。

これは個人の趣味の問題ではなく、命に直結する防災課題として捉える必要があります。


■① バックカントリー遭難が増えている現実

バックカントリーは、自然のままの雪山を滑る魅力がある一方、人工管理されたスキー場とは全く異なる危険環境です。

国の分析によれば、北海道では2018~2024年の間、毎シーズン平均約37.5件の外国人BC事故が発生しています。長野県でも、直近シーズンの遭難者の約半数がバックカントリー関連で、その多くを外国人が占めています。

事故は特に12月~2月のパウダースノーシーズンに集中しています。


■② 目立つ外国人遭難と背景要因

外国人遭難者は全体の約36%を占め、国籍別では中国、台湾、アメリカが多いとされています。

主な背景には、
・日本の山岳環境への理解不足
・スキー場と山岳の境界認識の甘さ
・多言語による注意喚起不足
・装備や技術への過信

といった要因があります。

「スキー場のすぐ外だから大丈夫」という感覚が、重大事故につながっています。


■③ 遭難原因の多くは“想定内の危険”

分析によると、遭難原因の多くは以下です。

・スキー場から安易に区域外へ進入し道迷い
・立木衝突や転倒
・天候急変への対応遅れ

いずれも、事前の知識と判断で回避できる可能性が高い事故です。


■④ 雪崩だけではない「新たなリスク」

近年は、バックカントリー中のクマ被害も現実のリスクとなっています。

春先には、雪解けとともにクマの活動が活発化し、群馬県では実際にBCスキー中の男性がクマに襲われる事故が発生しました。

雪崩・道迷い・低体温に加え、野生動物というリスクが重なり、危険性は年々高まっています。


■⑤ 救助現場の現実と「まず命を救う」原則

遭難者に対して「自己責任」「救助費用負担」を問う声もあります。しかし、現場の消防・警察・山岳救助隊は、常に「まず命を救う」という信念で活動しています。

その一方で、救助活動は二次遭難のリスクを伴い、社会的コストも非常に大きいのが実情です。


■⑥ 防災の視点で必要な対策

今後求められるのは、個人任せにしない仕組みです。

・多言語による明確な警告表示
・区域外進入の危険性を伝える実録映像の活用
・BCルールの国際的な周知
・事前装備・知識を前提とした入山文化の醸成

「知らなかった」「分からなかった」を前提にしない対策が不可欠です。


■⑦ 今日できる最小の防災行動

バックカントリーに入る前に、最低限確認してほしいことがあります。

・管理区域外であることを理解しているか
・雪崩・地形・天候の知識は十分か
・ビーコン・プローブ・ゾンデ等を携行しているか
・単独行動になっていないか
・万一の際、誰が捜索するか決まっているか

これらを一つでも満たさない場合、入山は見送る判断が必要です。


バックカントリーは「自由」ではありますが、「無防備」であってよい場所ではありません。

防災とは、危険をゼロにすることではなく、危険を理解した上で行動を選ぶ力です。
命を守る選択が、結果として山を守ることにもつながります。

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