【防災士が解説】能登の災害関連死から学ぶ冬の避難所対策|助かった命を避難生活で失わないために

大地震のあと、本当に怖いのは建物の倒壊や津波だけではありません。助かった命が、その後の避難生活の中で失われる「災害関連死」もまた、重い災害被害です。能登半島地震では、地震の直接の影響で亡くなった方が228人だったのに対し、災害関連死は490人に上ったと伝えられています。特に冬の災害では、寒さ、雑魚寝、トイレ、水不足、睡眠不足、持病悪化が重なりやすく、避難所の環境がそのまま命に関わります。だからこそ、防災は「逃げるまで」ではなく、「逃げた後に命を落とさないこと」まで考える必要があります。


■①(災害関連死とは何か)

災害関連死とは、地震や津波で直接亡くなるのではなく、避難生活や環境悪化、心身の負担、持病の悪化などが原因で亡くなることです。
・寒さで体調を崩す
・脱水や栄養不足になる
・持病の薬が切れる
・トイレを我慢して状態が悪くなる
・感染症が広がる
・強いストレスや不眠が続く
こうしたことが積み重なると、助かったはずの命が後から失われてしまいます。防災士として見ても、災害関連死は「避難したから安心」という考え方では防げません。避難所の生活環境そのものが防災の本体です。


■②(冬の避難所が特に危ない理由)

冬の災害では、避難所環境の悪さが一気に命に直結しやすくなります。体育館の床は冷たく、暖房が不十分だと高齢者や体調の弱い人はすぐに消耗します。しかも、毛布が足りない、着替えがない、水が少ない、トイレが遠いといったことが重なると、体を動かすこと自体がつらくなります。すると水分を控える、食べる量が減る、動かない、眠れないという悪循環に入りやすくなります。元消防職員として言うと、寒い避難所では「大きなけががない人」でも、静かに弱っていくことがあります。これが冬の避難所の本当の怖さです。


■③(関連死を防ぐカギは“避難所の質”にある)

災害関連死を減らすには、避難所がただ「屋根のある場所」であってはいけません。
・寒さを防げること
・眠れること
・トイレに行きやすいこと
・水分と食事が確保できること
・持病管理ができること
・プライバシーが少しでも守られること
こうした条件が整うだけで、避難生活の負担はかなり変わります。防災士として見ても、避難所は収容人数より「どれだけ人間らしく過ごせるか」で考えた方が実際の命を守りやすいです。寒さ対策、段ボールベッド、間仕切り、簡易トイレ、医療福祉連携は、ぜいたくではなく関連死対策そのものです。


■④(特に注意したいのは高齢者・持病がある人)

災害関連死のリスクが高くなりやすいのは、次のような人たちです。
・高齢者
・持病がある人
・障害のある人
・妊婦
・乳幼児
・介護が必要な人
この人たちは、少しの寒さ、水分不足、移動負担でも急に体調を崩すことがあります。被災地派遣やLOの現場感覚でも、「元気そうに見えるから大丈夫」は危険です。避難所では、動けるかどうかより、「いつも通りの生活や治療が止まっていないか」を見ることが大切です。関連死対策は、弱い人を後から見るのではなく、最初から優先して守ることが基本です。


■⑤(トイレ・水・睡眠を軽く見ない)

災害時に軽視されがちですが、関連死を防ぐうえで非常に重要なのが、トイレ、水、睡眠です。
・トイレが遠い、寒い、汚い
・水が少なく飲むのを控える
・床が硬く、寒く、眠れない
この3つが重なると、脱水、血栓、便秘、感染症、持病悪化が起きやすくなります。防災士として強く言いたいのは、避難所で「我慢が美徳」になると危ないということです。トイレを我慢しない、水を飲む、横になって休む。こうした基本的な生活行動が守れるかどうかが、関連死を減らす大きな分かれ目になります。


■⑥(避難所運営は“雑魚寝前提”から変える必要がある)

大きな地震のたびに、体育館で雑魚寝する避難所の風景が繰り返されてきました。ただ、この形は冬には特に厳しく、関連死を増やしやすい構造があります。
・床から冷えが上がる
・寝返りが打ちにくい
・プライバシーがない
・体調不良を隠しやすい
・感染症が広がりやすい
だから、避難所は「とりあえず集める場所」ではなく、「命を落とさずに過ごせる場所」へ変えていく必要があります。段ボールベッド、間仕切り、暖房、要配慮者スペース、医療福祉との早期連携は、そのための基本です。これは理想論ではなく、助かった命を守るための最低条件です。


■⑦(元消防職員として現場で感じる“本当に防ぐべき死”)

元消防職員として、また被災地派遣やLOとして現場を見てきた感覚で強く思うのは、災害関連死は「仕方ない死」として扱ってはいけないということです。直接死が防ぎ切れない場面がある一方で、関連死は避難所の質、初動の配慮、支援の速さでかなり減らせる余地があります。寒い、眠れない、薬がない、トイレに行けない、誰にも言えない。こうした小さな苦しさが積み重なって人を弱らせます。だから本音では、防災で本当に問われるのは、助けた後の命をどこまで守れるかだと思います。これは現場を見てきて本当に重く感じる部分です。


■⑧(今日できる最小行動)

今日やることを1つに絞るなら、冬の避難所を前提に、次の3つだけ家で確認してください。
・毛布や防寒具はすぐ持ち出せるか
・常用薬をすぐ持てるか
・簡易トイレと飲み水があるか
この3つだけでも、関連死リスクをかなり下げる備えになります。防災は、派手な装備を増やすことより、避難後に弱らないための基本を整えることが大切です。


■まとめ|災害関連死を防ぐには“避難した後”を本気で考えることが必要

能登半島地震で改めて見えたのは、助かった命が避難生活の中で失われる災害関連死の重さです。特に冬の避難所では、寒さ、雑魚寝、トイレ、水不足、持病管理、感染症、睡眠不足が重なり、体の弱い人から静かに追い詰められていきます。だから、防災は「逃げる」だけでは足りません。「逃げた後にどう生きるか」まで考えて初めて、命を守る備えになります。

結論:
災害関連死を防ぐために最も大切なのは、“避難所に入れれば安心”ではなく、“避難所で寒さ・トイレ・水・睡眠・持病管理を守れる環境を最初から整えること”です。
元消防職員として現場感覚で言うと、助かった命を避難生活で失うのは、本当に悔しいことです。だからこそ、冬の防災では“逃げる準備”と同じくらい“避難後に弱らない準備”を本気で進めることが大切だと思います。

出典: テレビ東京『ガイアの夜明け』災害“関連死”を防げ! 番組紹介ページ

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