海の事故は、陸上の交通事故と似ているようで決定的に違います。船は止まれず、曲がれず、危険を察知してからの回避が間に合わない場面が多いからです。鳥羽沖で起きた船舶衝突事故の報道を手がかりに、見張りの重要性と「間に合ううちにやる行動」を整理します。
■①(衝突事故が起きやすい海域には理由がある)
伊勢湾周辺は、東西の主要航路につながり、通行する船が多い“航路筋”に当たります。大型船も常時通行し、漁船や遊漁船など多様な船が同じ海域に集まります。船の種類が違うほど速度・進路・死角・回避能力が違い、リスクが重なりやすくなります。
■②(船は車より「回避が効かない」前提で考える)
船は危険を見つけても、車のように短距離で止まれません。舵を切ってもすぐに進路が変わらず、速度を落とすにも時間がかかります。報道の専門家コメントにある通り、衝突の恐れがある相手を近距離で発見しても、回避が間に合わないことが現実に起こり得ます。
■③(見張りは「視界が良い日ほど油断」が出る)
視界が良いと、安心感が先に立って注意が緩みやすくなります。しかし船の見張りは、見える・見えないではなく「見続ける」「変化を先読みする」行為です。相手船が死角に入る前に確認しておく、相対位置が変わらない“衝突コース”を早めに疑う、ここが勝負です。
■④(危険のサインは「相対方位が変わらない」こと)
海上での衝突リスクの典型は、相手が見えているのに距離だけが詰まっていく状態です。つまり、見えていても安心ではありません。相対方位(見える角度)がほぼ変わらず接近してくる場合は、衝突の可能性が高いサインです。早期の判断と、早期の回避が必要になります。
■⑤(死角に入る前の“確認の型”を決めておく)
船には構造上の死角があり、作業や操船姿勢でも視野が欠けます。だからこそ「死角に入る前に、相手の進路・速度・距離を言語化して確認する」型が重要です。声に出す、相手の動きを再確認する、航海機器も併用する。人の注意は途切れる前提で、二重三重に“確認の仕組み”を作ることが事故を遠ざけます。
■⑥(“見張り”は操船者だけの仕事ではない)
乗組員が複数いる場合、見張りを分担することでリスクは下がります。操船者が操作に集中するほど、周辺監視が薄くなるのは自然なことです。役割を決めて「誰が、どこを、どの頻度で見るか」を固定すると、ヒューマンエラーが減ります。
■⑦(陸上の防災と同じで「想定外」を減らすのは習慣)
被災地派遣の現場でも強く感じたのは、事故や二次災害は「一発の大失敗」より「小さな確認不足の積み重ね」から起きるということです。夜間の片付け作業で足元確認が甘くなり転倒が連鎖した場面、資機材の配置確認が不足して通行動線が詰まった場面など、最初は小さなズレでした。海上の見張りも同じで、“いつも通り”を守る習慣が命を守ります。
■⑧(家族の備えとしてできる「海の安全」の考え方)
遊漁船やフェリーなど、一般の人も海上に出る機会があります。乗る側としても、出航前に救命胴衣の位置や着用方法を確認する、緊急時の集合場所を把握する、運航会社の安全説明を聞き流さない、といった行動が自分と家族の安全に直結します。海の事故は“起きた後に学ぶ”では遅いので、乗る前に確認しておくことが最大の防災です。
■まとめ|「見えた時には遅い」を前提に、早期確認へ寄せる
船の衝突は、近距離で気づいても回避が間に合わないことがあります。だからこそ、見張りは「早く見つける」だけでなく「見続けて変化を読む」ことが重要です。死角に入る前の確認、相対方位の変化チェック、役割分担、習慣化。どれも地味ですが、事故を遠ざける現実的な対策です。
結論:
海の安全は「早期発見」ではなく「早期判断」で決まる。
防災士として現場を見てきた実感でも、危険は“気づいた時”ではなく“気づく前の習慣”で減らせます。見張りと確認の型を持つことが、命を守る最短ルートです。
出典:CBCテレビ「船舶同士の衝突事故が多い海域 見張りを怠っていた可能性…」三重・鳥羽沖の船の衝突事故(2026/2/23配信)

コメント