診療報酬改定や物価高のニュースを見ると、「患者負担が増えるのでは?」と不安になります。
しかし、防災の視点で本当に重要なのは――
平時の地域医療が崩れると、災害時は一気に詰むという現実です。
元消防職員・防災士として被災地支援に関わってきた立場から、
「医療と防災のつながり」を整理します。
■① 診療報酬改定で何が変わるのか
診療報酬は、医療機関に支払われる“医療の価格表”です。
改定では次の点が調整されます。
・救急医療の評価
・地域医療の維持
・物価上昇への対応
・人材確保支援
一見すると医療制度の話ですが、
地域の医療が持続できるかどうかの分岐点でもあります。
■② 「医療を守る=防災」になる理由
災害時に本当に困るのは、ケガよりも「持病の悪化」です。
・高血圧や心疾患の悪化
・インスリンや抗てんかん薬が途切れる
・透析や在宅酸素が止まる
・救急受け入れ制限で搬送遅延
平時から医療体制が逼迫している地域では、
災害時に“耐久力”がありません。
医療の安定=地域の耐災害力です。
■③ 患者負担は本当に増えるのか
改定=自己負担増とは限りません。
自己負担は
・年齢
・所得
・高額療養費制度
・診療内容
などで決まります。
一方で怖いのは、
医療機関が経営的に持たなくなり、受けられる医療が減ることです。
防災上のリスクは、
金額より「医療アクセスの縮小」です。
■④ 救急が手厚くなると何が変わるか
救急の評価が上がると、
・受け入れ困難事例の減少
・後方搬送の円滑化
・高度救命センターの負担軽減
が期待されます。
救急が回る地域は、
災害時の大量傷病者対応も回りやすい。
これは統計以上に、現場で体感する違いです。
■⑤ 物価高が病院経営に与える影響
病院は次の要素で動いています。
・電気
・水
・燃料
・医療材料
・人員
物価高で余力がなくなると、
・非常用電源燃料が十分でない
・医療材料在庫が薄い
・人手不足で当直が回らない
という弱点が、災害時に露呈します。
経営支援は、防災インフラ強化でもあります。
■⑥ 家庭ができる“医療防災”最小セット
難しいことは不要です。
1. 薬と病歴を1枚にまとめる
薬名・用量・病名・主治医を紙で保管。
停電や通信障害を前提にします。
2. 常用薬は7~14日分
物流停止は現実的に起きます。
3. かかりつけ医を持つ
初診説明の負担が減り、判断が早くなります。
4. 受診ラインを家族で共有
「この症状なら救急」と事前に決めておく。
これだけで、判断の重さが大きく軽くなります。
■⑦ 避難所・停電時の受診判断
優先順位を明確にします。
・胸の強い痛み
・片側麻痺・ろれつ不良
・呼吸困難
・意識障害
・止まらない出血
これらは即受診。
軽症は、自治体の臨時診療情報や相談窓口を活用します。
全員が救急に集中すると崩れます。
■⑧ 被災地で見た“医療の抜け”
被災地派遣やLOとしての連携調整の中で痛感したのは、
薬の情報が分からないだけで、支援が止まるという事実でした。
薬名不明、用量不明、病歴不明。
医療側が確認に時間を要し、その間に状態が悪化。
逆に、紙1枚で整理されている方は、
受診も処方もスムーズでした。
防災の本質は、
装備ではなく「判断の軽さ」を作ることです。
■まとめ
診療報酬改定は制度の話ですが、
本質は「地域医療の耐久力」をどう守るかです。
そして家庭の備えはシンプルです。
・薬を切らさない
・情報をまとめる
・判断基準を決める
ここまでできれば、
災害時の医療リスクは大きく下がります。
■結論
今日できることは一つ。
家族の薬と病歴を1枚にまとめる。
それが、地域医療が揺らいでも自分を守る最初の防災です。
出典:厚生労働省「令和6年度診療報酬改定について(概要)」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000196352_00012.html

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