【防災士が解説】防災訓練は96%の企業が実施、それでも生かせない理由とは|企業防災の盲点

多くの企業で防災訓練が行われるようになり、「やっている」という数字だけを見ると、企業防災は大きく前進しているように見えます。しかし一方で、「実際の災害で生かせるか」と問われると、答えに迷う人が多いのも現実です。防災士の視点から、企業防災訓練の現状と課題を整理します。


■① 防災訓練の実施率はほぼ100%に近づいている

調査によると、職場で何らかの防災訓練を実施している企業は96%を超えています。特に「年に1回以上」訓練を行う企業の割合は大きく増加しており、形式上は防災訓練が定着してきたことが分かります。


■② 参加率も向上し「全社訓練」が増加

防災訓練に「毎回参加している」「日程が合えば参加している」と答えた人は約9割に達しました。さらに、全社員が参加する訓練を実施している企業も増えており、防災を一部の担当者任せにしない姿勢が広がっています。


■③ 訓練内容は従来型が中心

実施されている訓練内容を見ると、避難動線の確認、館内放送訓練、初期消火訓練など、火災や地震を想定した従来型の訓練が中心です。基礎として重要な内容ではあるものの、想定が限定的になりやすい傾向があります。


■④ 制度やルールの整備は進んでいる

安否確認方法の取り決めや避難場所の周知など、制度面の整備は大きく進展しています。訓練を通じて「何をすればよいか」を知っている人は確実に増えており、企業防災の土台は強化されています。


■⑤ それでも「生かせない」と感じる理由

一方で、防災訓練の内容を「かなり生かせる」と感じている人は2割程度にとどまっています。多くの人は「少しは生かせる」と感じているものの、即座に行動できる自信までは持てていないのが実情です。


■⑥ 「形式的」「想像しづらい」という現場の声

訓練が生かせない理由として最も多かったのは、「形式だけになっている」という声です。また、説明中心で臨場感がなく、実際のリスクを想像しにくいという指摘も見られました。訓練が“イベント化”してしまうと、行動には結びつきにくくなります。


■⑦ 防災士から見た企業防災の改善ポイント

防災訓練の実効性を高めるためには、想定外を含めた判断訓練や、役割が決まっていない状態での行動確認が有効です。完璧な正解を求めるのではなく、「考えて動く経験」を積むことが重要になります。


■⑧ 企業防災は「自律型対応」への転換が鍵

災害時、マニュアルや指示がすぐに届くとは限りません。企業防災では、一人ひとりが状況を見て判断できる力を育てることが、結果的に被害を減らします。訓練は、その力を育てる場であるべきです。


■まとめ|数字ではなく行動につながる訓練へ

防災訓練の実施率や参加率は確実に向上しています。
結論:
防災訓練は「やること」ではなく、「動けるようになること」が目的です。

防災士として多くの現場を見てきた経験からも、実践的で考える余地のある訓練こそが、災害時の行動力を高めると感じています。形式をなぞる訓練から、命と事業を守る訓練へと進化させることが、これからの企業防災に求められています。

■出典
・TSP太陽「防災訓練に関する調査」

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