【防災士が解説】防災×お金|残価設定型住宅ローンは「耐災害力」を下げる危険な選択

災害は、ある日突然やってきます。
そしてその瞬間、家計に余裕があるかどうかが、その後の選択肢を大きく左右します。

近年、「残価設定型住宅ローン(いわゆる残クレマイホーム)」という新しい住宅ローンが話題になっています。
一見すると月々の負担が軽く、将来の不安に備えられるようにも見えます。

しかし、防災の現場を見てきた立場から言うと、
この仕組みは災害時の「回復力」を大きく損なう可能性があります。

この記事では、防災×お金の視点から、
残価設定型住宅ローンが本当に家族を守る選択なのかを整理します。


■① 残価設定型住宅ローンとは何か

残価設定型住宅ローンとは、
住宅の将来価値(残価)をあらかじめ設定し、
その部分の返済方法を通常の住宅ローンと変えられる仕組みです。

一定の年数までは通常通り返済し、
残価設定時点で以下の選択肢が生まれます。

・返済額を大きく減らす代わりに、最終的に家を手放す
・住宅を売却してローンを清算する

表面的には、
「老後の返済負担を減らせる」
「残債割れを防げる」
といったメリットが語られます。


■② なぜ今、この商品が出てきたのか

背景は単純です。

・住宅価格が高騰している
・年収に対して家が高すぎる
・通常の住宅ローンでは買えない人が増えている

その結果、
「買いやすく見せる仕組み」
として、このローンが登場しています。

しかし、防災の視点では、
「買えるかどうか」よりも
「何が起きても耐えられるか」が重要です。


■③ 表面上のメリットが示す落とし穴

残価設定型住宅ローンのメリットとしてよく挙げられるのは、

・定年後の返済額を抑えられる
・不動産価格下落時のリスクを減らせる
・将来、売却益が出る可能性がある

しかしこれらは、
「何も起きなかった場合」
「契約内容が想定通り機能した場合」
に限った話です。

災害時は、想定外が前提になります。


■④ 防災の現場で見える致命的な弱点

災害が起きたとき、
残価設定型住宅ローンは次の弱点を抱えます。

・転居や売却の自由度が低い
・修繕費や仮住まい費用を吸収できない
・精神的な余裕がなくなる

特に深刻なのは、
「家はあるのに、選択肢がない状態」です。

これは、防災において最も危険な状況です。


■⑤ 防災における最大の敵は「複雑さ」

防災の原則はシンプルです。

・迷わない
・判断を軽くする
・選択肢を残す

残価設定型住宅ローンは、
・契約が複雑
・条件が多い
・理解に専門知識が必要

災害時に、この複雑さは確実に足を引っ張ります。


■⑥ 「耐災害力」という視点で見るとどうか

耐災害力とは、
お金・心・判断の余力です。

残価設定型住宅ローンは、
・長期にわたり借金を固定化し
・判断の自由度を奪い
・精神的な余裕を削ります

これは、防災の観点ではマイナスです。


■⑦ 防災士として実際に多かった失敗

現場で多かったのは、
「ローンの縛りで動けなかった家庭」です。

・転校できない
・引っ越せない
・修繕を先送りする

結果として、生活再建が長期化します。

家を守るつもりが、
生活を縛ってしまう。
これは典型的な失敗です。


■⑧ 防災として選ぶべき住まいの考え方

防災の観点では、次の考え方が重要です。

・借金は最小限
・理解できない契約は結ばない
・いつでも動ける余白を残す

住まいは資産である前に、
生活の基盤です。

基盤が不安定では、
防災は成立しません。


■まとめ|防災視点での結論

残価設定型住宅ローンは、
一見すると優しい仕組みに見えます。

しかし防災の視点では、
・複雑すぎる
・自由度が低い
・耐災害力を下げる

という大きな問題を抱えています。

結論:
防災の観点から、残価設定型住宅ローンはおすすめできません。

防災とは、
「借りられるか」ではなく、
「何が起きても立て直せるか」です。

元消防職員・防災士としての現場経験から言えば、
身の丈に合った住まいと、
シンプルな家計こそが、
最強の防災になります。

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