前回は、防災とエスタブリッシュメント(既存の体制・権限構造)の関係について整理しました。
今回は一歩踏み込み、「安心を配る側」が結果的にリスクを拡大してしまう構造について解説します。
これは特定の組織や人を批判する話ではありません。
仕組みとして起こりやすい“落とし穴” を知ることが目的です。
■① 防災における「安心の供給者」
防災の世界には、常に「安心を与える立場」が存在します。
・行政
・専門家
・メディア
・自治体職員
・防災マニュアル
彼らは善意で行動しています。
問題は、その安心が過剰に信じられたときに起こります。
■② 「大丈夫です」が判断停止を生む
災害時によく聞く言葉があります。
・「今のところ大丈夫です」
・「想定内です」
・「直ちに危険はありません」
これらは冷静さを保つための言葉ですが、
同時に 人の判断を止める力 を持っています。
・まだ逃げなくていい
・様子を見よう
・指示を待とう
結果として、避難が遅れる。
■③ エスタブリッシュメントが恐れるもの
既存組織が最も恐れるのは、次の2つです。
・過剰対応による批判
・結果責任の追及
そのため、
・「早めに逃げてください」と言いにくい
・強い表現を避ける
・判断を個人に委ねる言い回しになる
これは組織防衛としては合理的ですが、
命の防衛としては不十分 な場合があります。
■④ 集団心理とエスタブリッシュメントの相性
人は不安なときほど、
「権威のある声」に従おうとします。
・テレビ
・行政発表
・専門家コメント
そこに「安心」が混ざると、
・みんな動いていない
・大丈夫と言っている
・自分だけ逃げるのは変
という集団同調が生まれます。
■⑤ 避難所信仰もエスタブリッシュメントの産物
「避難所に行けば安全」
この考えは、制度上は正しい。
しかし現場では、
・満員
・寒さ
・感染症
・プライバシー欠如
・犯罪リスク
といった問題が起こります。
それでも「指定避難所」という言葉の強さが、
他の選択肢を見えにくくします。
■⑥ 自律型避難は“対立”ではない
自律型避難というと、
・勝手に動く
・指示に従わない
と誤解されがちですが、違います。
・情報は受け取る
・判断は自分でする
・複数の選択肢を持つ
これはエスタブリッシュメントと対立する行為ではなく、
補完する行動 です。
■⑦ 家族単位で決めておくべき「判断基準」
最低限、家族で決めておきたいのは次の3点です。
・どの時点で逃げるか
・どこがダメなら別の場所に行くか
・連絡が取れない場合の行動
これを決めておくだけで、
「誰かの指示待ち」から抜け出せます。
■⑧ 防災は「考える力」を奪ってはいけない
本来、防災の目的は
人を守ることです。
しかし、
安心を与えすぎると、人は考えなくなる。
制度は必要。
組織も必要。
専門家も必要。
ただし最後に命を守るのは、
自分で考し、選び、動く力 です。
その力を手放さないこと。
それが、エスタブリッシュメントと共存しながら
生き延びるための現実的な防災です。

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