近年、行政の防災は急速にデジタル化が進んでいます。
防災アプリ、LINE配信、メール配信、SNS、HP更新──
一見すると「情報は十分に出している」ように見えます。
しかし現場では、
「情報が届いていない」
「見ていない人が多い」
という課題が繰り返し浮かび上がっています。
これは担当者の努力不足ではなく、
行政デジタル防災が抱える構造的な課題です。
■① 行政防災の最大の課題は「全員に届かない」こと
行政の情報発信は、原則として「公平性」が重視されます。
・誰か一人だけに向けない
・特定の層に偏らない
・全住民に同じ情報を出す
この姿勢自体は正しいものです。
しかし災害時には、この公平性が逆に弱点になります。
・高齢者
・障がいのある人
・外国人
・デジタルに不慣れな人
同じ情報でも、受け取れる人と受け取れない人が必ず生まれます。
■② 「出した=伝わった」という誤解
行政現場でよくあるのがこの言葉です。
「HPには載せています」
「LINEで配信しています」
しかし住民側はこう感じています。
「知らなかった」
「見ていない」
「気づかなかった」
これは怠慢ではなく、
災害時の人間の行動特性です。
・通知が多すぎて埋もれる
・専門的で読む気がしない
・緊急性が伝わらない
情報量が増えるほど、行動率は下がります。
■③ 行政特有の「言葉の壁」
行政文書は正確性を重視します。
その結果、災害時には次の問題が起きます。
・表現が硬い
・専門用語が多い
・責任回避的な文面になる
例として、
「○○の恐れがあります」
「状況を注視してください」
これでは人は動きません。
災害時に必要なのは、
正確さよりも行動につながる表現です。
■④ デジタル化が生む新たな「情報弱者」
デジタル防災は万能ではありません。
・スマホを持っていない
・操作が分からない
・通知を切っている
・アプリを入れていない
行政がデジタルに寄せれば寄せるほど、
逆に取り残される人が生まれます。
これは「新しい災害弱者」の誕生です。
■⑤ 災害時に行政が抱える現実的制約
行政職員も被災者です。
・人手不足
・長時間勤務
・判断のプレッシャー
・誤情報への恐怖
その中で、
・誰に
・どのタイミングで
・どの表現で
情報を出すかを判断するのは、非常に困難です。
■⑥ 課題解決の鍵は「分散」と「役割分担」
行政だけで全員に伝えるのは不可能です。
これからのデジタル防災では、
・行政:正確な一次情報
・地域:噛み砕いた共有
・家族:個別の声かけ
この分業が不可欠になります。
■⑦ 行政防災に求められる視点の転換
これから重要になるのは、
「どう出すか」ではなく
「どう届くか」
・短い言葉
・行動だけを伝える
・繰り返し発信する
これは技術ではなく、設計の問題です。
■まとめ|行政防災は「仕組み」で支える時代へ
行政のデジタル防災には、
限界と同時に大きな可能性があります。
・全員に届かない前提で設計する
・地域や家族と連携する
・伝え方を変える
防災とは、
完璧な情報を出すことではなく、
一人でも多くを守るための仕組みを作ることです。
行政・地域・個人がつながったとき、
デジタル防災は本当の力を発揮します。

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