災害時、ペットは「家族」である一方、避難行動や避難所運営では課題として扱われてきました。
その現実を踏まえ、環境省は平成30年に策定した「人とペットの災害対策ガイドライン」を、約8年ぶりに見直す動きを進めています。
背景にあるのは、能登半島地震など近年の大規模災害で顕在化した、人とペット双方の命を脅かす課題です。
■① なぜ今、ガイドライン見直しなのか
能登半島地震や過去の豪雨災害では、
- ペット連れを理由に避難所に入れない
- 車中泊を長期間続け、体調を崩す
- 飼い主とはぐれたペットが徘徊する
といった問題が数多く報告されました。
これらは「飼い主の自己責任」で片づけられる問題ではなく、
制度・運用が現実に追いついていなかったことを示しています。
今回の見直しは、その反省を踏まえたものです。
■② 新しい指針の方向性|「同行避難」が前提に
見直し中のガイドラインでは、
- 災害時はペットと一緒に避難する(同行避難)ことを基本とする
- 一方で、アレルギーや動物が苦手な人への配慮も重視
という、両立を目指す方向性が示されています。
具体的には、
- 人とペットの居場所を分けるゾーニング
- ペット専用スペースの設置事例
- 運営側・飼い主側それぞれの役割整理
など、現場で使える具体例が盛り込まれる見通しです。
■③ 「最低5日分」備蓄が示す現実
今回の報道で繰り返し強調されているのが、
ペット用備蓄は「最低5日分」という目安です。
これは理想論ではありません。
災害直後は、
- 物流が止まる
- 支援物資が届かない
- ペット用品は後回しになる
という現実があります。
そのため、
- フード
- 飲み水
- 薬
- トイレ用品
を5日分、可能なら7日分以上、
「自宅保管用」と「持ち出し用」に分けて準備することが想定されています。
■④ 飼い主に求められる具体的な備え
ガイドライン見直しでは、飼い主側の責任も明確になります。
特に重要なのは以下の点です。
- ケージ・キャリーバッグに日常から慣らす
- 首輪・迷子札・マイクロチップで身元を明確にする
- 吠え・排せつ・臭いへの配慮を普段から行う
これらは「マナー」ではなく、
避難所で受け入れてもらうための前提条件です。
■⑤ 情報の持ち出しも命を守る
災害時、避難先で必要になる情報として、
- ペットの写真
- ワクチン接種証明
- 既往症・投薬内容のメモ
をまとめておくことも推奨されています。
これは、はぐれた場合の捜索や、体調悪化時の対応に直結します。
■⑥ 「ペットがいるから避難できない」をなくすために
過去の災害では、
「ペットがいるから逃げられなかった」
「最後まで家に残って犠牲になった」
という事例が繰り返し問題視されてきました。
人とペット、どちらかを選ぶ状況を作らないために必要なのは、
同行避難を前提にした事前準備です。
- 指定避難所がペット可かどうかの確認
- 親戚宅やペット可ホテルなど代替避難先の洗い出し
は、現実的で命を守る行動です。
■⑦ 防災士の視点|ペット防災は「社会全体の課題」
ペット防災は、飼い主だけの問題ではありません。
- 避難所運営
- 地域の理解
- 行政の制度設計
すべてが噛み合って初めて機能します。
今回のガイドライン見直しは、
「ペットは例外」から「前提条件」へと防災の考え方を進化させる動きです。
■⑧ まとめ|備えが、選択を迫らない未来をつくる
災害時に問われるのは、
「守れるかどうか」ではなく、
「守る準備をしていたかどうか」です。
ペットと暮らす人にとって、
防災は愛情の延長線上にあります。
今回のガイドライン見直しをきっかけに、
人とペットが一緒に助かるための備えを、
今一度、現実的に見直すことが求められています。

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