能登半島地震から2年が経過しても、なお1万8000人以上が仮設住宅などの仮住まいで生活を続けています。インフラ復旧や公費解体は進む一方で、災害関連死の増加、人口流出、高齢化といった深刻な課題が表面化しています。被災地対応の現場に関わってきた立場から、数字の裏にある「中長期避難の本当の危機」と、防災の視点で考えるべき点を整理します。
■① 仮住まいが長期化すると「別の災害」が始まる
災害は地震だけでは終わりません。被災地では、避難生活が長引くほど体調悪化や意欲低下が増えていきます。今回の能登でも、災害関連死がこの1年で大きく増加しています。これは偶然ではなく、中長期避難が引き起こす二次災害です。
■② 災害関連死は「静かに増える」
直接死は時間とともに増えませんが、関連死は確実に積み重なります。被災地では、寒暖差、運動不足、通院困難、精神的ストレスが重なり、少しずつ命を削っていく現実を何度も見てきました。関連死は目立たないからこそ、防災の視点から強く意識する必要があります。
■③ 仮設住宅は「安全」だが「健康」ではない
仮設住宅は、命を守るための最低限の住まいです。しかし長期間住む前提ではありません。被災地では、狭さ、段差、寒さ暑さ、人との距離感が、じわじわと心身に影響していきます。「住めている=大丈夫」ではありません。
■④ 先が見えないことが最大のストレスになる
再建の目処が立たない状況は、人を消耗させます。被災地では、「いつまでここにいるのか分からない」という不安が、睡眠障害や無気力につながっていました。中長期避難で最も厄介なのは、生活そのものよりも“先が見えない状態”です。
■⑤ 人口流出は防災力を一気に下げる
能登では若年層を中心に人口が大きく減少しています。被災地で感じてきたのは、人が減るほど地域の支え合いが弱くなり、さらに高齢者の孤立が進むという悪循環です。人口流出は、復興だけでなく将来の災害対応力も奪います。
■⑥ 災害公営住宅は「ゴール」ではない
災害公営住宅の建設は重要ですが、それで全てが解決するわけではありません。東日本大震災や熊本地震でも、入居後の孤立や健康悪化が問題になりました。被災地で学んだのは、「住み始めてからが本当の防災」という事実です。
■⑦ 中長期避難に必要なのは“生活防災”という視点
これから必要なのは、物資中心の防災ではなく、生活を支える防災です。
・定期的な見守り
・通院・買い物の動線確保
・孤立を前提とした支援
・心身の不調を早く拾う仕組み
被災地では、こうした視点がある地域ほど、関連死や孤立が抑えられていました。
■⑧ 防災は「発災から何年経ったか」で終わらない
2年経っても1万8000人が仮住まいにいるという事実は、防災が今も進行中であることを示しています。被災地対応の中で強く感じたのは、「時間が経つほど支援が必要になる人がいる」という現実です。防災とは、発災直後だけでなく、暮らしを取り戻すまで続く営みです。

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