【防災士が解説】防災×二次避難|民泊活用の先行事例と「制度の壁」から見える次の課題

能登半島地震から2年。
民泊を二次避難先として活用した初の事例は、日本の防災に新しい可能性を示しました。
一方で、この取り組みは「制度が災害に追いついていない」という現実も浮き彫りにしています。


■① 海外では一般的な「民泊×災害対応」

兵庫県立大学大学院の阪本真由美教授によると、海外では災害時に民泊を避難先として活用することは珍しくありません。

実際に活用された事例として、

・2012年 ハリケーン・サンディ(アメリカ東海岸)
・2023年 トルコ大地震(Mw7.8)
・2025年 アメリカ・ロサンゼルスの大規模山火事

などがあり、民泊は「臨時の生活拠点」として機能してきました


■② 国内でも始まりつつある民泊避難の動き

日本国内でも、民泊活用に向けた動きは始まっています。

東京都墨田区では2023年11月、Airbnb Japanと協定を締結し、

・妊産婦
・乳幼児
・要配慮者

を対象に、災害時に民泊を最大7日間避難先として提供する想定を整えました。
費用は原則として自治体が負担する仕組みです。

これは、「避難所一択」からの転換を示す重要な事例といえます。


■③ 能登で明らかになった“理解不足”という課題

一方で、能登半島地震では、

・民泊活用の開始まで約1か月半
・制度や仕組みの理解不足
・前例のなさによる判断の遅れ

といった課題がありました。

阪本教授は、行政側の民泊に対する理解不足が、対応の遅れにつながったと指摘しています。


■④ 最大の制度的課題「180日の壁」

民泊活用における最大のネックが、
「住宅宿泊事業法(民泊新法)」で定められた 年間180日以内 という上限です。

災害時の避難生活では、

・仮設住宅完成まで半年以上
・自宅再建に1年以上

といったケースも珍しくありません。

阪本教授は、この点について、

「災害への適応を考えるなら、上限日数の緩和や撤廃が必要」

と指摘しています。


■⑤ 運用面でも見えた新たな課題

能登では、民泊事業者が

・避難受け入れのために空室を確保
・結果的に利用されず損失が発生

というケースもありました。

そのため今後は、

・二次避難に協力可能な民泊事業者の事前登録
・空室確保による損失を補填する仕組み
・災害時専用のマッチングプラットフォーム

といった平時からの制度設計が求められます。


■⑥ 南海トラフを見据えると「待ったなし」

南海トラフ巨大地震の被害想定では、

・発災1週間後:最大 約650万人
・1か月後でも:最大 約360万人
・避難者総数:最大 約1230万人

という、これまでにない規模の避難が想定されています。

阪本教授は次のように警鐘を鳴らします。

「災害時には、宿泊先も避難先も不足するのは明らか。
より良い環境で滞在できる場所をどう確保するか、今から考える必要があります」


■⑦ 能登が残した教訓

能登半島地震は、

・避難は長期化する
・避難所だけでは足りない
・生活環境が命を左右する

という現実を突きつけました。

民泊は万能ではありませんが、
「選択肢が増えること自体が命を守る」 という重要な教訓を残しています。

これからの防災は、
「どこに避難するか」ではなく
「どう暮らし続けられるか」まで考える段階に入っています。

コメント

タイトルとURLをコピーしました