災害時、人は「分かっているのに危険な行動を取ってしまう」ことがあります。
その背景に深く関わっているのが、脳内物質 ドーパミン です。
防災の視点から、ドーパミンが私たちの判断や行動にどのような影響を与えるのかを整理します。
■① ドーパミンとは何か
ドーパミンは、快感・期待・報酬に関わる脳内物質です。
・ワクワクする
・得をしたと感じる
・成功を予感する
こうした感情が生まれると、脳内でドーパミンが分泌されます。
■② ドーパミンは「合理性」より「期待」を優先させる
ドーパミンが分泌されると、人は次の傾向を示します。
・リスクを過小評価する
・成功体験を過信する
・「今回は大丈夫」と考える
これは平常時だけでなく、災害時にも強く現れます。
■③ 災害時に起きやすいドーパミン判断
現場では、次のような行動がよく見られます。
・渋滞を抜けられそうだと車で移動する
・様子を見に行けば何とかなると外に出る
・情報を集め続けて行動を遅らせる
「うまくいくかもしれない」という期待が、冷静な判断を上書きします。
■④ SNS・速報ニュースとドーパミン
災害時の情報収集も、ドーパミンと無関係ではありません。
・新しい情報が出るたびに確認する
・刺激的な映像に引き寄せられる
・不安と期待が交互に強化される
結果として、必要な行動が後回しになることがあります。
■⑤ 防災で重要なのは「ドーパミンを出さない判断」
防災行動で求められるのは、
・面白くない
・刺激がない
・地味で退屈
こうした行動です。
安全な避難、待機、備蓄確認は、ドーパミンをほとんど刺激しません。
しかし、生存率を高めるのは常にこの選択 です。
■⑥ 訓練がドーパミンの暴走を抑える
防災訓練や事前準備には、重要な役割があります。
・「考えなくても動ける」状態を作る
・判断を感情から切り離す
・行動をルール化する
これにより、災害時でもドーパミン主導の判断を抑えやすくなります。
■⑦ 家庭・職場でできる対策
日常でできる工夫として、
・行動基準を事前に決めておく
・「迷ったらやらない」ルールを共有する
・刺激的な情報から一時的に距離を取る
これだけでも、判断の質は大きく変わります。
■⑧ 防災とは「脳の使い方」を知ること
防災は知識や装備だけでは不十分です。
自分の脳が どんなときに暴走しやすいか を知ることも、重要な備えです。
ドーパミンを理解することは、
「なぜ人は危険な選択をしてしまうのか」を理解する近道でもあります。
■まとめ|興奮しない判断が命を守る
災害時に必要なのは、
・ワクワクしない
・期待しない
・何も起きない選択を取る
という、ある意味で「つまらない判断」です。
ドーパミンに流されない行動こそが、
命を守る最も確実な防災行動です。
■出典
・Daniel Kahneman『Thinking, Fast and Slow(ファスト&スロー)』

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