2025年末、高市政権は「防災庁」設置の基本方針を閣議決定しました。
2026年11月にも発足予定で、職員規模は約350人、年間予算は約200億円。
民間企業に例えれば、上場企業レベルの巨大組織です。
「また役所が増えるのか」
「税金の無駄ではないのか」
こうした声が出るのも、決して不自然ではありません。
本記事では、防災の現場を知る立場から、防災庁新設の意味と課題を整理します。
■① 「庁」が増え続ける日本の行政構造
2001年の中央省庁再編以降、日本では次々と「庁」が新設されてきました。
観光庁、消費者庁、復興庁、スポーツ庁、デジタル庁、こども家庭庁……
そして今回の防災庁で10番目です。
これらは一見するとバラバラですが、
実は以下の4つに分類されます。
・内閣官房内の庁
・内閣直下の庁
・内閣府の外局
・省の外局
防災庁はこのうち、
「内閣直下の庁」に位置づけられる予定です。
■② 「内閣直下の庁」とは何が特別なのか
内閣直下の庁には、すでに
・復興庁
・デジタル庁
があります。
特徴は次の通りです。
・首相がトップ(主任大臣)を兼務
・実務を担う「担当大臣」を別に置く
・省より上、内閣府より下という独特な位置づけ
つまり、防災庁は
国家の最重要課題の一つとして扱われる
というメッセージ性を持ちます。
これは単なる組織再編ではありません。
■③ 防災庁は「何をやる組織」なのか
ここが最も重要なポイントです。
これまで日本の防災は、
・内閣府防災
・国交省
・消防庁
・気象庁
・自治体
などが縦割りで分担してきました。
防災庁が目指すのは、
・災害対応の司令塔
・平時からのリスク分析
・情報伝達の一本化
・国と自治体の連携強化
いわば、
「災害対応の頭脳」となる存在です。
うまく機能すれば、
判断の遅れや情報錯綜を減らせる可能性があります。
■④ 問題は「人」と「運営の質」
一方で、懸念も明確です。
・350人規模で本当に足りるのか
・現場を知らない机上組織にならないか
・他省庁との権限調整は進むのか
そして最大の論点が、
担当大臣を単独で置くのか、兼務にするのか。
現在は復興大臣が準備担当を兼務しています。
合理的とも言えますが、
・「防災が軽く扱われている」
・「専任でなければ本気度が伝わらない」
と受け取られるリスクもあります。
■⑤ 防災庁は「箱」では意味がない
防災の世界でよく言われる言葉があります。
「組織は人なり」
どれだけ立派な庁を作っても、
・判断が遅い
・責任の所在が曖昧
・現場の声を聞かない
この状態では、
命は守れません。
防災庁が評価されるかどうかは、
看板ではなく「中身」で決まります。
■⑥ 私たちが注視すべき視点
防災庁発足にあたり、
私たちが見るべきポイントは明確です。
・災害時の判断は早くなるのか
・自治体との連携は強化されるのか
・情報は住民に届くのか
・責任の所在は明確か
これらが改善されるなら、
200億円は「高い」とは言えません。
逆に、変わらなければ
どんな立派な庁でも意味はありません。
■⑦ 防災は制度だけで完結しない
最後に大切なことを。
防災庁ができても、
私たち一人ひとりの備えが不要になることはありません。
制度は「土台」。
命を守るのは、日々の判断と行動です。
防災庁の行方を注視しつつ、
同時に、家庭・地域レベルの防災も進めていきましょう。
制度と個人、
その両輪がそろってこそ、防災は機能します。

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