地震時の身の守り方として広く知られてきた「ダンゴムシのポーズ」。しかし近年、この指導法に対して見直しの声が強まっています。被災地派遣や学校・地域防災の現場に関わってきた立場から、現在の評価と、子どもに本当に伝えるべき行動について整理します。
■① ダンゴムシのポーズとは何か
ダンゴムシのポーズは、地震の揺れを感じた際に、しゃがんで体を丸め、頭や首を守る姿勢です。机がない場所でもとっさに取れる行動として、主に子ども向けの防災教育で普及しました。1990年代以降、多くの学校や保育施設で採用されてきました。
■② 誕生の背景と広がり
この姿勢は、危機管理教育研究所が提唱し、登録商標化された防災指導法です。机下避難が前提だった時代に、「机がない状況でも命を守る方法」として生まれました。文部科学省の資料でも紹介され、全国的に浸透しました。
■③ 現在指摘されている問題点
2020年代に入り、専門家からの批判が増えています。
・視界が完全に遮られ、周囲の状況が把握できない
・揺れが収まった後に、次の行動へ移りにくい
・逃げ遅れにつながる可能性
実際の被災地では、「動ける姿勢で周囲を確認できた人」が早く安全な行動に移れたケースを何度も見てきました。
■④ 文部科学省や専門家の評価の変化
文部科学省関係者や減災分野の専門家の中でも、「万能な姿勢ではない」「状況に応じて使い分けるべき」という見解が増えています。一部では、ダンゴムシのポーズを推奨しない、または限定的に扱う動きも見られます。
■⑤ 注目される「カエルのポーズ」
近年、代替案として注目されているのが「カエルのポーズ」です。
これは、
・しゃがむ
・頭を守る
・視線を前に向け、すぐ動ける
という特徴を持つ姿勢です。完全に丸まらないため、落下物や出口の状況を確認しやすく、揺れが収まった後の避難行動に移りやすいとされています。
■⑥ 被災地で感じた「動ける姿勢」の重要性
元消防職員として被災地に入った際、助かった人の多くは「揺れの最中も周囲を見ていた人」でした。頭を守ることは最優先ですが、それと同時に「次の一手を選べる姿勢」でいることが、生死を分ける場面もあります。
■⑦ 子どもへの防災指導で大切な視点
防災教育は、単一の正解を教えることではありません。
・落下物が多い場所
・出口が近い場所
・屋外や体育館
場所によって最適な姿勢は変わります。大切なのは、「物が落ちてこない場所を探し、頭を守り、動ける状態を保つ」という判断軸を伝えることです。
■⑧ 今日からできる実践的な見直し
家庭や学校でできることは、
・ダンゴムシのポーズだけを教えない
・カエルのポーズなど複数の姿勢を体験させる
・「なぜその姿勢を取るのか」を言葉で説明する
この積み重ねが、実際の災害時に「考えて動ける力」につながります。
■まとめ|「守る+動ける」がこれからの防災教育
ダンゴムシのポーズは、過去には一定の役割を果たしました。しかし、現在の防災では「頭を守ること」と同時に「状況を見て動けること」が求められます。カエルのポーズのような柔軟な考え方を取り入れ、子どもたちが自分で判断できる防災教育へ進化させていくことが重要です。

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