【防災士が解説】防災×富士山噴火|Xデーは「突然」ではない。前兆と避難判断の現実

日本の象徴である富士山は、宝永噴火(1707年)以降、300年以上噴火していない。しかし専門家は一貫して「いつ噴火してもおかしくない状態」と指摘している。富士山噴火は、地震と同じく“想定外”ではなく、“想定して備える災害”である。


■① 富士山噴火は数時間前に兆候が現れる

富士山が噴火する場合、いきなり何の前触れもなく始まる可能性は低いとされている。
火山性地震の増加、低周波地震、地殻変動など、複数の前兆現象が観測される可能性が高い。

過去には、三宅島や伊豆大島で火山性地震発生から約2時間後に噴火した事例もある。
富士山でも、最短で「数時間後」に噴火が始まる可能性は現実的な想定だ。


■② 富士山噴火は2つの全く異なる顔を持つ

富士山の噴火には、大きく分けて2つのタイプがある。

・溶岩流噴火
・爆発的噴火(降灰・軽石)

どちらのタイプになるかで、避難の考え方は根本的に変わる。


■③ 溶岩流噴火では「慌てない避難」が基本

溶岩流は、流れは遅いが確実に進む災害だ。
溶岩流ドリルマップでは、原則として徒歩避難が基本とされている。

重要なのは、「遠くへ逃げる」ことではない。
溶岩の流れに直交する方向へ、数百メートルから1キロ程度離れるだけで安全を確保できる場合が多い。

一斉に車で逃げると渋滞を招き、かえって危険が増す。
高齢者や要介護者を優先して車を使う判断が求められる。


■④ 爆発的噴火は“見えない重さ”が命を脅かす

爆発的噴火では、火山灰や軽石が広範囲に降り注ぐ。
問題は「軽さ」ではなく、「重さ」だ。

降灰が30センチ以上積もると、特に旧耐震の木造家屋では倒壊の危険が高まる。
富士山周辺だけでなく、風向き次第では首都圏にも深刻な影響が及ぶ。


■⑤ 都心でも「屋内避難」が続かない可能性

都心部では家屋倒壊の可能性は低いとされているが、安心はできない。

・停電
・断水
・交通麻痺
・物流停止

火山灰は発電所、送電設備、浄水場、鉄道すべてに影響を与える。
鉄道は灰が0.5ミリ積もるだけで運行停止の可能性がある。


■⑥ 備蓄は「地震対策=噴火対策」

富士山噴火は、いつ終わるか分からない災害だ。
そのため、家庭での備蓄が生死を分ける。

首都直下地震対策として推奨されている「1週間分以上の備蓄」は、
そのまま富士山噴火対策としても有効である。

水・食料・簡易トイレ・マスク・ゴーグルなどは必須となる。


■⑦ フェイク動画と誤情報が新たなリスクになる

近年は、AIで生成された「偽の噴火動画」や誤情報がSNSに出回る危険性が高まっている。

災害時ほど、人は不安から情報に飛びつきやすい。
行動の基準にすべきなのは、気象庁などの公的機関が発表する火山情報だ。


■⑧ 富士山噴火こそ「自律型避難」が問われる災害

富士山噴火は、即逃げる災害でも、完全に待つ災害でもない。
情報を受け取り、自分の住環境に当てはめ、判断し続ける災害だ。

・前兆を知っているか
・噴火タイプを理解しているか
・自宅の立地を把握しているか

これらが揃って初めて、冷静な判断が可能になる。


■⑨ 噴火を恐れるより「備えて待つ」

富士山噴火は避けられない自然現象だ。
恐れるべきは噴火そのものではなく、「何も知らず、備えていない状態」で迎えること。

正しい知識と備蓄、そして自律した判断。
それがXデーを生き抜く最大の防災力となる。

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