避難生活の現場では、「自分だけが弱音を吐いてはいけない」という空気が自然と生まれます。被災地での支援経験から強く感じたのは、この“善意の我慢”が、かえって人を追い詰めていく場面を何度も生んでいたという現実でした。「みんなも辛いから」と我慢し続けることの危険性を整理します。
■① 我慢は一時的には役に立つ
発災直後、我慢は混乱を抑える力になります。現場でも、秩序を保つために感情を抑えることが必要な場面は確かにありました。ただし、それは短期間に限られます。
■② 我慢が長期化すると心が回復しなくなる
避難が長引くと、我慢は回復を妨げます。被災地では、つらさを出せない人ほど、食欲不振や不眠、無気力といった形で不調が表れていました。
■③ 「言わない人ほど大丈夫」は誤解
現場で最も心配だったのは、静かで手がかからない人でした。困っていることを言わない人ほど、限界を超えてから一気に崩れるケースを多く見てきました。
■④ 比較が自己否定を強める
「自分より大変な人がいる」という比較は、感情を否定する方向に働きます。被災地では、この思考が続くほど、自己肯定感が下がっていく傾向がありました。
■⑤ 我慢は周囲にも伝染する
一人が我慢すると、周囲も同じように耐えようとします。現場では、誰も弱音を吐けない空気ができ、結果として全体の疲労が高まることがありました。
■⑥ 我慢の限界は自分では分かりにくい
心の限界は、痛みのように分かりやすくありません。被災地では、周囲から見て初めて異変に気づくケースが多くありました。
■⑦ 我慢をやめることが秩序を守る場合もある
適切に気持ちを出すことで、支援や配慮が行き届くことがあります。現場では、早めに声を上げられた人ほど、深刻化を防げていました。
■⑧ 我慢し続けないことは「わがまま」ではない
「みんなも辛いから」と感じる優しさは大切です。ただし、被災地で学んだのは、我慢を続けない選択をした人ほど、長期の避難生活でも自分と周囲を守れていたという事実でした。

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