日本の防災は、長い時間をかけて
「まずは命を守る」ことを中心に発展してきました。
この考え方は、今も変わらず正解です。
しかし現場では、別の問いが繰り返し浮かび上がっています。
それは、
命が助かったあと、どう生き続けるかという問いです。
「被災は長期戦」という言葉は、
すでに現実を説明する前提条件になっています。
■① 災害は“終わらない出来事”になっている
近年の災害には、共通する特徴があります。
・被害が大規模
・被災が広域
・復旧までに長い時間がかかる
災害は、発生した瞬間だけの出来事ではなく、
その後の生活を長く縛る存在になりました。
インフラが戻っても、
仕事、学校、地域、家族の生活は簡単に元には戻りません。
この現実が示しているのは、
助かることをゴールにした防災の限界です。
■② 「助かったあと」に始まる消耗
被災後、時間が経つにつれて見えてくる変化があります。
・疲れが抜けない
・眠りが浅くなる
・考えることが億劫になる
・判断を先送りするようになる
・人との関係を避けるようになる
命は守られている。
けれど、人としての余裕が少しずつ失われていく。
この消耗は、目に見えにくく、
支援の対象にもなりにくい。
それが、長期化した被災の難しさです。
■③ 行政と支援が前提にできない理由
行政や支援は、被災者にとって欠かせない存在です。
ただし、万能ではありません。
・支援は必ず遅れる
・全員に同じ支援は届かない
・人手と物資には限界がある
これは誰かの責任ではなく、構造の問題です。
だから現場では、
支援が届くまで、人が壊れずにいられるか
が、防災の結果を左右します。
■④ 今の防災用語では足りない理由
日本の防災は、これまで
・自助
・共助
・減災
という言葉で整理されてきました。
しかし、被災が長引くほど、
次のような声が増えていきます。
「こんなに心が削られるとは思わなかった」
「我慢するしかないのがつらい」
これは、防災のどこかに
言葉にされていない空白があることを示しています。
■⑤ 「命の次」を支える防災の視点
その空白を埋める考え方として、次の視点があります。
・自律型避難
・避難服
・壊れない避難生活
・耐災害力(お金・心・判断)
・やらなくていい防災
共通しているのは、
人の状態を中心に据えていることです。
これは、
減災でも、復旧でもない。
「人が壊れないための防災」という領域です。
■⑥ 長期化した被災で必ず起きる問い
被災生活が続くと、必ずこうした問いが生まれます。
・なぜ、こんなに判断が難しいのか
・なぜ、気力が続かないのか
・なぜ、我慢できた人ほど後から崩れるのか
この問いに対して、
精神論や根性論では答えが出ません。
必要なのは、
最初から壊れにくい状態をつくる防災です。
■⑦ 現実を前提にした防災という考え方
この防災の特徴は、とても現実的です。
・支援はすぐに来ない
・完璧な備えは不可能
・人は長く我慢できない
この前提に立ち、
「どうすれば消耗を最小限にできるか」を考えます。
防災を、
一時的な行動ではなく、持続できる状態づくりとして捉え直します。
■⑧ 防災は、静かに次の段階へ進んでいる
防災は今、静かに変わり始めています。
命を守る。
それは出発点。
その後、
どう人として回復し、生活を続けられるか。
この視点が加わることで、
防災は「特別な準備」から「生活の基盤」へ変わります。
■まとめ|「被災は長期戦」という前提に立つ防災へ
災害は、短期間で終わる出来事ではありません。
結論:
これからの防災は、助かったあとに人が壊れない状態をどれだけ維持できるかが問われる段階に入っている。
防災士として現場を見てきた立場からも、
「被災は長期戦」という前提に立つことは欠かせません。
命を守る防災の先に、
人として回復し、生活を再び組み立てるための防災をどう組み込むか。
そこが、これからの防災の本質です。

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