災害時に命を守るのは、体力だけではありません。最後に差が出るのは「判断力」です。ところが睡眠不足が続くと、危険を正しく見抜けず、避難の決断が遅れたり、間違った行動を選んだりしやすくなります。この記事では、防災士の視点で「睡眠不足が避難判断力の低下につながる」仕組みと、具体的な対策をわかりやすくまとめます。
■①睡眠不足は“脳の性能低下”として現れる
睡眠は疲労回復だけでなく、脳の情報整理と回復の時間でもあります。睡眠が足りないと、脳が十分に整わないまま日中を迎え、注意力・集中力・判断力が落ちやすくなります。
災害時に必要な力は、瞬時の情報処理と決断です。
・警報の意味を理解する
・家族の状況を把握する
・移動の可否を判断する
こうした行動は、脳が元気であるほど正確になります。
■②避難判断力が落ちると起きる“3つのミス”
睡眠不足が続くと、避難判断で次のようなミスが増えます。
・「まだ大丈夫」と思い込みやすい
・判断が遅れて準備に時間がかかる
・焦って誤情報を信じやすい
特に怖いのは、本人に自覚がないまま判断が鈍ることです。体は動いていても、判断の質が落ちる状態になります。
■③避難が遅れる人ほど“前日までの疲労”が溜まっている
避難の遅れは「性格」ではなく「状態」で起こることがあります。睡眠不足や疲労が溜まっていると、脳は変化を嫌い、現状維持を選びやすくなります。
つまり、寝不足のときほど、
・今の場所に留まる
・準備を先延ばしにする
・判断を家族に丸投げする
という方向に傾きやすいのです。
■④被災地派遣で感じた“避難の遅れ”の共通点
被災地派遣で住民の聞き取りをすると、「わかっていたのに動けなかった」という言葉を何度も聞きました。危険を知らなかったのではなく、動くための判断力と気力が残っていなかったケースです。
災害の前は、仕事や家事で寝不足が続きやすい時期でもあります。疲労が溜まった状態で大きな地震や豪雨が来ると、判断の精度が一気に落ちます。
■⑤睡眠不足が強める“正常性バイアス”
正常性バイアスとは、「自分は大丈夫」「いつも通りでいける」と思い込む心理です。睡眠不足のとき、このバイアスが強くなりやすいと言われています。
・警報が出てもテレビを眺めてしまう
・避難の準備を始める気力が出ない
・「周りも動いてないし」と考える
こうした状態が重なると、避難のタイミングを逃します。
■⑥今日からできる“最小の睡眠防災”
迷ったら、まずはこれだけでOKです。
・起床時間を固定する
・寝る90分前はスマホを控える
・昼寝は15〜20分で切り上げる
大事なのは「完璧」ではなく「継続」です。睡眠の土台が整うほど、災害時に落ち着いて動ける確率が上がります。
■⑦災害前夜の“睡眠の守り方”
台風接近や大雨の予報が出た夜は、不安で眠れなくなりがちです。そんな時は、睡眠を守るために手順を先に終わらせておくのが有効です。
・充電、懐中電灯、靴を枕元へ
・避難経路と集合場所を家族で確認
・持ち出し袋を玄関に寄せる
やることが終わると脳が落ち着き、眠りに入りやすくなります。これも立派な防災行動です。
■⑧自律型避難の土台は“睡眠”でつくられる
自律型避難は、誰かの指示を待たずに自分で判断して動く力です。その土台は「脳が働く状態」であること。
睡眠が整うほど、
・情報を正しく理解できる
・家族を落ち着かせられる
・避難の決断が早くなる
という形で、命を守る行動につながります。
■まとめ|睡眠を守ることが避難判断力を守る
睡眠不足は、避難の遅れや判断ミスを引き起こす“見えないリスク”です。物資の備えと同じくらい、脳の備えが重要です。
結論:
睡眠を守ることは、避難判断力を守る最短ルートです。
防災士として現場に関わる中で強く感じるのは、「知識がある人」よりも「落ち着いて決断できた人」が助かる場面があることです。睡眠は、その落ち着きを作る基盤になります。今日の夜から、まずは“最小の睡眠防災”を始めていきましょう。
出典:厚生労働省「国民健康・栄養調査」(睡眠時間に関する統計)

コメント