「人が足りないだけで会社が潰れるのか」――そう感じる人も多いかもしれません。しかし、建設・物流で相次ぐ人手不足倒産は、単なる経営問題ではなく、社会全体の“防災耐性”を揺るがす現象です。被災地対応の現場でも、工事が進まない、物資が届かないという事態を何度も見てきました。
■① 人手不足倒産が過去最多になった背景
帝国データバンクの調査によると、2025年の人手不足倒産は427件と過去最多を更新しました。特に建設業113件、物流業52件はいずれも過去最多です。倒産企業の約8割は従業員10人未満で、1人欠けただけで現場が止まる脆弱な構造が浮き彫りになっています。
■② 「2024年問題」が現場を直撃
背景にあるのが働き方改革による時間外労働の上限規制です。これまで残業で吸収してきた工程遅れや突発対応が吸収できなくなり、特に中小企業の現場にしわ寄せが集中しました。建設・物流は需要があっても「回せない」状態に陥っています。
■③ 人手不足は“原因”ではなく“結果”
現場感覚としては、人が減ったこと自体よりも「仕事の回し方が成立しなくなった」ことが本質です。工程の属人化、段取りの非効率、価格転嫁できない取引構造――これらが積み重なり、制度変更をきっかけに一気に表面化しました。
■④ 供給網が止まると何が起きるのか
建設・物流の停滞は、その業界だけの問題ではありません。輸送の遅れは製造業の稼働を止め、工場新設や設備更新の遅延は地域経済に波及します。災害時でなくても、社会インフラは静かに崩れ始めているのです。
■⑤ 倒産リスクを高める3つの条件
人手不足倒産が起きやすい条件は明確です。
1つ目は、特定の人に依存する属人化。
2つ目は、残業前提で成り立っていた業務設計。
3つ目は、価格交渉ができず賃上げ原資を確保できない構造。
これらが重なると、1人の退職が即「操業停止」につながります。
■⑥ これは「防災」の問題でもある
災害対応では、建設・物流が止まると復旧も支援も進みません。人手不足倒産の増加は、平時から社会の回復力が低下しているサインです。防災とは、非常時だけでなく、平時の構造を強くしておくことでもあります。
■⑦ 企業に求められる構造転換
精神論ではなく設計の見直しが必要です。
受注量を制約に合わせて調整する
業務の標準化で属人性を減らす
制約を数値で示し価格転嫁を行う
制度対応を前提に生産性を再設計する
これは生き残り策であると同時に、社会インフラを守る行動です。
■⑧ 今日できる最小の防災行動
建設や物流を「当たり前に動く前提」で考えるのをやめること。
止まったら何が困るのか、自分の生活にどう影響するのかを一度考えてみてください。社会の脆さに気づくことも、防災の第一歩です。

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