【防災士が解説】防災×記憶|エビングハウスの忘却曲線が示す「防災知識が消える本当の理由」

防災訓練を受けた直後は理解していたはずなのに、いざ災害が起きると行動できない――。この現象は「意識が低いから」ではなく、人間の記憶の特性によるものです。その鍵となるのが「エビングハウスの忘却曲線」です。


■① エビングハウスの忘却曲線とは何か

エビングハウスの忘却曲線とは、人は学習した内容を時間の経過とともに急速に忘れていく、という記憶の法則を示したものです。学習直後から忘却は始まり、何もしなければ短期間で大半を忘れてしまいます。


■② 防災知識はなぜ定着しにくいのか

防災知識は日常で使う機会が少なく、「非日常」を前提とした情報です。そのため、復習や再確認が行われないまま時間が経過し、忘却曲線に沿って記憶から抜け落ちていきます。


■③ 防災訓練が「やっただけ」で終わる理由

多くの防災訓練は年1回程度で実施されますが、これは記憶定着の観点では不十分です。一度学んだだけでは、数日〜数週間で行動に結びつく知識はほぼ失われます。


■④ 忘却曲線から見た「行動できない防災」

災害時に人が動けなくなるのは、パニックだけが原因ではありません。「判断すべき知識」が思い出せないことが、初動の遅れにつながります。これは防災意識の問題ではなく、脳の仕組みの問題です。


■⑤ 記憶を定着させる防災の工夫

忘却曲線を緩やかにするには、短時間でも繰り返し触れることが重要です。長時間の訓練よりも、日常の中で防災を思い出す「小さな接触」が効果を発揮します。


■⑥ 防災は「完璧に覚える」必要はない

防災に必要なのは、すべてを暗記することではありません。「最初の一手」や「迷ったときの判断軸」だけが思い出せれば、行動は大きく変わります。これは忘却を前提とした現実的な備え方です。


■⑦ 自律型避難と忘却曲線の関係

自律型避難とは、自分で状況を判断し行動することです。そのためには、記憶に頼りすぎない仕組みが必要になります。地図、チェックリスト、目につく場所への掲示などは、忘却を補う重要な道具です。


■⑧ 防災士の視点:忘れる前提で備える

防災では「忘れない努力」よりも、「忘れても困らない設計」が重要です。忘却曲線を理解すると、防災は精神論ではなく、仕組みづくりで強化できることが分かります。


■まとめ|防災は記憶力ではなく設計力

人は必ず忘れます。だからこそ、防災は「覚えておくもの」ではなく、「思い出せる状態を作ること」が重要です。エビングハウスの忘却曲線は、防災を現実的に考えるための強力なヒントになります。

結論:
防災士としての現場感覚でも、「人は忘れる」という前提に立った備えこそが、災害時に本当に機能する防災です。記憶ではなく、行動を支える仕組みを残すことが命を守ります。


出典

心理学における記憶研究(エビングハウスの忘却曲線)

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