認知症による金融資産の凍結は、
地震や台風のように突然起きる災害ではありません。
しかし一度起きると、生活資金が使えなくなるという点で、
極めて深刻な「生活災害」です。
■① 認知症は誰にでも起こり得る身近なリスク
厚生労働省の推計では、
高齢者のおよそ3人に1人が、認知症または軽度認知障害(MCI)に該当するとされています。
これは特別な家庭の問題ではなく、
ほぼすべての家庭が直面し得る現実です。
■② 認知症が進むと「お金があっても使えない」
認知症になると、
本人の判断能力が不十分と判断され、
銀行や証券会社での取引が制限されます。
結果として、
・預金が引き出せない
・解約や売却ができない
といった「資産凍結」が起こります。
■③ 資産凍結は本人を守る制度だが生活は止まる
口座凍結は、不正利用や誤判断から本人を守るための措置です。
しかし同時に、
・生活費が出せない
・介護費用が払えない
・家族が立て替える
といった現実的な問題が発生します。
■④ 事後対応では間に合わない理由
認知症発症後は、
銀行の代理人制度や任意後見の新規契約は原則利用できません。
法定後見制度も、申立から開始まで時間がかかります。
つまり、
「起きてから考える」では遅い災害なのです。
■⑤ 新しく始まった「家族サポート証券口座」
証券分野では、
これまで本人以外が取引できない仕組みが主流でした。
その課題に対応するため、
日本証券業協会が「家族サポート証券口座」を整備しました。
■⑥ 家族サポート証券口座の特徴と限界
この制度は、
本人と家族が公正証書で委任契約を結び、
判断能力低下後も一定の売却・換金を可能にする仕組みです。
ただし、
・導入している証券会社は一部
・新規投資は不可
・振込先銀行口座が凍結されると資金が使えない
などの制約もあります。
■⑦ 認知症リスクに備える4つの選択肢
資産凍結に備える方法として、
・任意後見制度
・家族信託
・銀行の代理人制度
・証券会社の家族サポート証券口座
といった複数の制度があります。
一つに絞るのではなく、組み合わせて考えることが重要です。
■⑧ 迷ったらこの判断|元気なうちに決めておく
認知症による資産凍結は、
「備えなかったこと」が原因で起きる災害です。
判断力がある今こそ、
誰に・どこまで・どう託すのかを決めておく。
これが、家族を守る防災行動になります。
認知症対策は、
老後の話でも相続の話でもありません。
日常生活を止めないための、
極めて現実的な防災です。
制度を目的にするのではなく、
自分と家族が困らない仕組みを、今のうちに整えておきましょう。

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