【防災士が解説】防災×避難行動の見直し|「車で逃げる」が命を危険にする瞬間

地震や津波の直後、多くの人が無意識に選んでしまうのが「車での避難」です。しかし近年の災害では、この判断がかえって命を危険にさらすケースが繰り返し確認されています。防災の現場から見えてきたのは、「早く逃げる方法」と「安全に逃げる方法」は必ずしも一致しないという現実です。


■① 地震直後、幹線道路が一瞬で止まった

2024年12月、青森県東方沖を震源とする地震で八戸市沿岸部に津波警報が発表されました。国道45号では深夜にもかかわらず車が集中し、防犯カメラには長時間ほぼ動かない大渋滞の様子が記録されました。高台へ向かう避難行動が、一斉に車へ集中した結果でした。


■② 「なぜ進まないのか分からなかった」現場の声

実際に避難した住民は「国道に出た途端ほとんど動かず、なぜ渋滞しているのか理解できなかった」と振り返ります。解析データでは、通常10分ほどで到達できる距離に約30分を要し、避難時間は平常時の約3倍に膨れ上がっていました。


■③ 渋滞の大きな要因は“同じ行動”

八戸市は、避難対象外の地域の住民も含め、多くの人が同時に車で避難したことが渋滞の要因と分析しています。津波の浸水想定区域外であっても「とにかく逃げる」という心理が、幹線道路へ人と車を集中させました。


■④ 車避難は東日本大震災でも課題だった

2011年の東日本大震災では、宮城県気仙沼市などで車の渋滞が発生し、避難が遅れた事例が多数報告されています。この教訓から多くの自治体は「原則徒歩避難」を基本方針としていますが、現実には十分浸透していないのが実情です。


■⑤ データが示す「徒歩の方が速い」現実

国土交通省の調査によると、東日本大震災時の平均避難時間は車が16.2分、徒歩は11.2分でした。車は速そうに見えますが、渋滞や行き止まりに弱く、結果として徒歩の方が早く安全圏に到達できるケースが多いのです。


■⑥ 徒歩避難が持つ大きなメリット

徒歩での避難は、障害物を避けやすく、状況に応じて柔軟に進路を変えられます。東北大学の専門家も「徒歩の方が機敏に対応でき、生存率を高めやすい」と指摘しています。特に津波では、数分の差が生死を分けます。


■⑦ なぜ車を選んでしまうのか

多くの人が「車は財産」「その後の生活に必要」と考えます。しかし、命を守れなければ生活の再建は成り立ちません。優先順位を誤ると、避難行動そのものがリスクになります。


■⑧ 今、見直すべき避難行動

重要なのは、警報の種類と自分の住む場所を結びつけて考えることです。徒歩でどこまで行けるのか、高台まで何分かかるのかを、平時に一度歩いて確認するだけで判断は大きく変わります。


■まとめ|「早そう」ではなく「確実」を選ぶ

車での避難は一見合理的に見えて、実は多くの条件に左右されます。限られた時間の中で命を守るには、渋滞を生まない行動選択が不可欠です。

結論:
地震や津波から命を守る最善の避難行動は、原則として徒歩で、早く・分散して動くことである

防災士として、渋滞に巻き込まれた現場を何度も見てきました。「車に乗らない」という判断が、最も大きなリスク回避になる場面は確実に存在します。日頃から避難行動を見直すことが、防災の第一歩です。

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