災害時、「何人に・どれだけ・いつまで温かい食事を出せるのか」は、避難所運営の成否を左右します。現場では「炊き出しはできると思っていたが、実際は初日で止まった」という事例を何度も見てきました。そこで重要になるのが「災害時における温かい食事の提供可能食数確認シート」です。このシートは、食の防災を“感覚”から“数字”に変えるための実務ツールです。
■① 提供可能食数確認シートとは何か
このシートは、
・どの設備で
・どんな燃料を使い
・どの食材を用いて
・何食分の温かい食事を提供できるか
を事前に整理・可視化するための確認表です。炊き出し能力を「最大値」ではなく「現実的な継続可能数」で把握することが目的です。
■② なぜ“温かい食事”が重要なのか
被災地派遣やLOとしての経験上、温かい食事は単なる栄養補給ではありません。
・体温低下の防止
・高齢者や子どもの体調維持
・心理的ストレスの軽減
に直結します。おにぎり1個でも、温かいか冷たいかで避難所の雰囲気は大きく変わります。
■③ シートで必ず確認すべき基本項目
活用時に最低限押さえるべき項目は次の通りです。
・調理器具(かまど、ガスコンロ、発電機調理器など)
・燃料(LPガス、カセットボンベ、薪等)の種類と数量
・水の確保量
・1回の調理で作れる食数
・1日あたりの調理回数
ここを曖昧にしたままでは、実働時に必ず破綻します。
■④ 「最大数」ではなく「3日継続」を基準にする
現場で多かった失敗は、「初日に全力で出し切る」ことです。
提供可能食数は、
・発災当日
・2日目
・3日目
まで無理なく継続できる数で考える必要があります。元消防職員として言えるのは、「3日もたせる設計」ができている避難所は非常に強いということです。
■⑤ 人手と役割分担も食数に含める
食数は物資だけで決まりません。
・調理担当
・配膳担当
・衛生管理担当
など、人手が不足すれば食数は一気に落ちます。シートには「誰が対応するか」まで書き込むことで、実動に耐える計画になります。
■⑥ 衛生・安全面を考慮した現実的判断
災害時は、
・断水
・手洗い不足
・食中毒リスク
が高まります。温かい食事を出せるかどうかは、「安全に出せるか」で判断する必要があります。被災地では、善意の炊き出しが原因で体調不良者を出したケースもありました。
■⑦ 平時訓練でシートを“使ってみる”
この確認シートは、机上で終わらせてはいけません。
・防災訓練
・地域行事
・学校や自治会の炊き出し
で一度使ってみることで、「想定と現実の差」がはっきり見えます。LO活動の中でも、事前にこの差を把握していた地域ほど初動がスムーズでした。
■⑧ 今日できる最小の防災行動
今日できることは、
・自分の地域でこのシートがあるか確認する
・なければ簡易版でも作ってみる
・「何人分を何日出せるか」を一度数字にする
これだけでも、食の防災力は大きく上がります。
■まとめ|食の防災は「気合」ではなく「設計」
温かい食事の提供は、善意や根性では続きません。確認シートを使い、食数・燃料・人手を冷静に見える化することで、初めて現実的な災害対応が可能になります。数字で備えることが、避難所の混乱を減らし、命と尊厳を守る防災につながります。

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