「焼き芋」と聞くと、秋冬の風物詩やおやつを思い浮かべる人が多いかもしれません。しかし防災の視点で見ると、焼き芋は災害時に意外な強みを持つ“実力派の食”でもあります。
■① 焼き芋は防災食になり得るのか
結論から言えば、条件がそろえば十分に防災食として機能します。理由は「調理の単純さ」「栄養価」「心理的効果」の3点です。非常時は複雑な調理や管理ができないため、素材の強さが重要になります。
■② 災害時に強い理由①:加熱方法の柔軟性
焼き芋は、特別な調理器具がなくても加熱できます。
・焚き火
・炭火
・カセットコンロ
・防災用コンロ
・アルミホイル+直火
停電・断水時でも対応しやすく、エネルギー源の選択肢が多い点は大きな利点です。
■③ 災害時に強い理由②:保存性と調達性
さつまいもは比較的保存が利き、常温でも一定期間保管できます。また、地方や郊外では被災後でも流通や家庭菜園から入手できる可能性があり、「完全に途絶えにくい食材」と言えます。
■④ 栄養面での評価
焼き芋は以下の点で災害時に向いています。
・糖質が多くエネルギー補給に適している
・食物繊維が多く、避難生活で起きやすい便秘対策になる
・ビタミン類を含み、単調な食事の栄養補完になる
特に高齢者や子どもにも食べやすい点は、避難所や在宅避難で重宝します。
■⑤ 心理的ケアとしての効果
被災地派遣の経験では、「温かい食べ物」が人の表情を大きく変える場面を何度も見てきました。焼き芋は甘く、香りがあり、懐かしさを感じやすい食品です。不安や緊張が続く中で、心を落ち着かせる効果が期待できます。
■⑥ 防災の現場で見た“食の差”
同じ避難所でも、温かい食事を確保できた場所は、トラブルや不満が明らかに少ない傾向がありました。焼き芋のような「簡単で温かい食」は、秩序や安心感を保つ要素にもなります。
■⑦ 注意点と限界
万能ではありません。以下の点には注意が必要です。
・水分が少ないため、飲料水とセットで考える
・タンパク質が不足しがち
・調理時の火災・一酸化炭素中毒に注意
防災食の“主役”ではなく、“補助・選択肢の一つ”として位置づけるのが現実的です。
■⑧ 家庭でできる備えとしての活用
防災専用品を増やさなくても、普段からさつまいもを常備し、焚き火や簡易調理を体験しておくことは立派な防災訓練になります。「日常の延長で備える」好例と言えるでしょう。
■まとめ|焼き芋は「生き延びる防災食」ではなく「心を支える防災食」
焼き芋は高機能な非常食ではありません。しかし、
火があれば作れる・温かい・甘い・安心できる
この特性は、災害時の生活を支える大きな価値です。
防災とは、命を守るだけでなく、心と生活を壊さない工夫でもあります。焼き芋は、その象徴的な存在の一つです。
■出典
・農林水産省「さつまいもの栄養と利用」

コメント