【防災士が解説】防災×高齢者|「故郷に戻れない避難」が突きつけた能登の現実

能登半島地震から2年。
復興が進む一方で、あまり語られてこなかった深刻な課題があります。それは、高齢者が「避難したまま故郷に戻れない」という現実です。
この問題は、今後どの地域でも起こり得る防災課題でもあります。


■① 施設避難が「戻れない避難」になる現実

能登半島地震では、断水や停電が長期化し、自宅や高齢者施設での生活が困難になりました。
その結果、多くの高齢者がヘリなどで県外・遠方の施設へ避難することになりました。

しかし、避難は一時的なはずでした。
それでも、2年が経過しても戻れない人が数多くいます。


■② 高齢者931人が「故郷に帰れない」理由

地震後、施設に避難した高齢者は931人。
これは施設避難者全体の4割を超えています。

理由は単純ではありません。
・地元施設の再開が遅れている
・職員不足で受け入れができない
・医療・介護体制が元に戻らない
・本人の体力・認知機能が低下した

避難が長期化するほど、「元の生活」に戻るハードルは高くなります。


■③ 現場が感じた「見捨てられた感覚」

災害派遣医療チーム(DMAT)の医師が現地で耳にしたのは、
「私たちは社会から見捨てられたのではないか」
という言葉でした。

職員が激減した施設で、限界を超えた介護が続いていた現実。
高齢者本人だけでなく、支える側も追い詰められていました。


■④ 高齢者は「動けない避難者」になりやすい

高齢者は、
・自分で避難判断がしにくい
・移動に時間と支援が必要
・環境変化への適応が難しい

という特徴があります。

一度遠方に移されると、本人の意思とは関係なく「そのまま定住」になってしまうケースも少なくありません。


■⑤ 「避難させる」だけでは防災にならない

命を守るための避難は正しい判断です。
しかし、防災は「避難させて終わり」ではありません。

・どこへ
・どのくらいの期間
・どうやって戻るのか

この出口戦略がなければ、避難は新たな生活破壊につながります。


■⑥ 事前防災として考えるべき高齢者支援

今回の能登の事例は、事前防災の重要性を突きつけています。

平時から必要なのは、
・高齢者の避難先候補の整理
・地元施設が止まった場合の代替案
・家族・地域・行政の役割分担
・「戻る前提」を含めた計画

災害が起きてからでは、選択肢は限られます。


■⑦ 他人事ではない「全国共通の課題」

日本は超高齢社会です。
地方だけでなく、都市部でも同じ問題は起こります。

南海トラフ地震、首都直下地震が発生した場合、
同様に「戻れない高齢者」が大量に生まれる可能性があります。


■⑧ 命だけでなく「暮らしを守る防災」へ

防災の目的は、命を救うこと。
しかし本当のゴールは、「その人らしい暮らしを取り戻すこと」です。

高齢者が、
・住み慣れた地域で
・顔なじみの人と
・安心して暮らせる

その未来まで見据えた防災を、今から考える必要があります。

能登で起きていることは、未来の私たちの姿かもしれません。

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