「R>G」という言葉を聞いたことがありますか。
これは経済学者トマ・ピケティが『21世紀の資本』で提示した概念で、
r(資本収益率)> g(経済成長率) という構造を指します。
本来は“富の集中”を説明する理論ですが、
防災の視点で見ると、極めて重要な示唆があります。
それは――
資産所得 > 給与所得の上昇額
という構造が、災害後の生活安定を左右するという事実です。
■① R>Gの本来の意味とは
ピケティの理論では、
- r=資産収益率(平均約5%前後)
- g=経済成長率(1〜2%程度)
この差が拡大すると、資産を持つ人ほど有利になると説明されています。
ここで重要なのは、
Gは“給与そのもの”ではなく“経済成長率”だという点です。
この記事ではそれを生活レベルに落とし込み、
資産から生まれる収入 > 給与の増加スピード
という形で防災に応用しています。
■② 災害は「給与」を止める
防災士として被災地派遣に従事してきましたが、
生活を最も苦しめるのは“収入の停止”です。
- 店舗の営業停止
- 企業の操業停止
- 通勤不能
- 休業補償の対象外
労働基準法26条では、天災など不可抗力による休業の場合、
企業に休業手当義務がないケースもあります。
つまり、
働けない=収入ゼロ
が現実に起こります。
■③ 資産所得が持つ“耐災害力”
資産所得とは、
- 配当収入
- 不動産収入
- 利息
- 事業収益
など、労働に依存しない収入です。
災害時でも市場が動いていれば配当は出ます。
不動産が無被災地域にあれば収入は継続します。
この“止まりにくい収入”があると、
- 危険地域へ無理に戻らない
- 焦って高利ローンを組まない
- 冷静な再建判断ができる
これが耐災害力(経済的)です。
■④ 公的支援の現実
住宅が全壊した場合でも、
被災者生活再建支援金は最大300万円程度。
一方で住宅再建費は平均2,000〜2,500万円。
公的支援だけでは足りません。
これは行政批判ではなく現実です。
私自身、被災地で
「思っていたより支援が少ない」と落胆する声を何度も聞きました。
■⑤ 防災士として見た再建の差
同じ地域、同じ被害規模でも、
- 貯蓄がある世帯
- 保険に入っていた世帯
- 副収入があった世帯
は、再建が早い。
逆に、
給与のみ依存世帯は長期化しやすい。
これは統計以前に、現場感覚として明確な差があります。
■⑥ 自律型避難と経済的自律
自律型避難とは、
「自分で判断し、命を守る行動を選べる状態」です。
しかし、経済的余裕がなければ
- 仕事があるから避難できない
- 収入が止まるのが怖い
- 生活費が不安
という心理が働きます。
資産所得があると、
“動かない避難”という選択肢も持てます。
経済的自律は、命の自律でもあります。
■⑦ 今日からできる“経済防災”
専門家が共通して推奨する基本は、
- 生活費6か月〜1年分の現金確保
- 保険内容の見直し
- 副収入の構築
- 分散型の資産形成
これは投資論ではありません。
災害対応力の強化策です。
■⑧ R>Gを防災に応用する意味
ピケティは防災を語っていません。
しかし、
- r(資産収益)
- g(経済成長)
の差が広がる世界では、
資産を持つ人ほど安定する
という構造が存在します。
それは災害後の生活にも当てはまります。
■まとめ|防災は“収入構造”から整える
防災というと、
ヘルメット・水・非常食を思い浮かべます。
しかし本質は、
壊れにくい生活設計を作ること
です。
結論:
資産所得が給与上昇額を上回る構造は、最強の経済防災である。
防災士として現場を見てきた実感は一つ。
「余裕」がある人ほど冷静でいられる。
その余裕は、
物資だけでなく“収入構造”から生まれます。
命を守る判断を支えるのは、
経済的耐災害力です。
■出典
トマ・ピケティ『21世紀の資本』

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