大規模災害では、ケガや感染症だけでなく「いつもの薬が途切れる」ことが命に直結します。
高血圧、糖尿病、喘息、抗凝固薬、抗てんかん薬、精神科の薬――薬が切れた瞬間から悪化が始まり、避難生活の中で救急搬送が増えることもあります。
こうした“薬の断絶”を防ぐために、薬剤師が組織的に支援に入る仕組みの一つがJPATです。
■① JPATとは?
JPATは、災害時に被災地へ薬剤師を派遣し、医薬品や薬の継続を支えるための支援チームの考え方です。
現場では、避難所や医療機関、調剤・供給の混乱が起きやすいところに入り、「薬が止まらない流れ」をつくります。
■② なぜ必要?|災害で一番困るのは“薬が分からない・手に入らない”
災害時に薬が途切れる原因は、単純な不足だけではありません。
- お薬手帳や処方内容が分からない
- かかりつけが被災して処方が出せない
- 薬局・医療機関が機能低下する
- 物流が止まり、必要薬が届かない
- 避難者本人が「何を飲んでいたか」思い出せない
- 周囲も忙しく、服薬管理まで手が回らない
つまり「情報」と「供給」と「管理」が同時に崩れます。
■③ JPATがやること|“薬が切れない仕組み”を現場で回す
薬剤師支援の強みは、目の前の配布だけでなく、継続の仕組みを整える点にあります。
- 服薬情報の確認(お薬手帳、残薬、聞き取り)
- 代替薬の提案(同効薬・剤形変更など)
- 医薬品の供給・在庫の整理
- 避難所での服薬管理支援(飲み忘れ、重複、誤用の防止)
- 薬の保管・温度管理(インスリン等)
- 住民への周知(「薬の相談窓口」を明確化)
薬が回り出すと、体調悪化による二次被害が減ります。
■④ 避難所で効くポイント|“薬の相談窓口”を一本化する
避難所では「誰に言えばいいか分からない」が最大のロスになります。
そこで効くのが、薬の相談窓口を一本化し、情報が集まる場所を作ることです。
- 体調不良者の早期発見につながる
- 服薬の重複や飲み合わせリスクを減らせる
- 医療班・保健師・救護所との連携がスムーズになる
- 物資班にも「必要薬」が具体的に伝わる
薬剤師が入ることで、避難所の健康管理が“回る形”になります。
■⑤(一次情報)被災地で見た「薬が切れる不安」は想像以上に大きい
被災地派遣(LO)で避難所に入ったとき、生活物資の不足と同じくらい多かったのが「薬がない」「薬が分からない」という声でした。
本人は元気そうに見えても、薬が切れる不安で眠れなかったり、持病が悪化する前兆が出ていたりします。
防災士として強く感じたのは、薬は“医療”であると同時に“安心”でもあるということです。
薬が途切れないだけで、避難生活の不安が一段軽くなり、結果として救急搬送や混乱が減っていきます。
■⑥ 誤解されがちポイント|薬は「配れば終わり」ではない
災害時の薬は、渡した瞬間がスタートです。
- いつ、どれだけ、どう飲むか
- 以前の薬と重複していないか
- 副作用や飲み合わせは大丈夫か
- インスリン等の保管は守れるか
ここが崩れると、体調悪化・転倒・せん妄・低血糖など、避難所の事故につながります。
薬剤師の支援は「継続の安全」を作る仕事です。
■⑦ 家庭でできる備え|“薬の情報”を守るのが最優先
家庭で一番効く備えは、薬そのものより「薬の情報」を失わないことです。
- お薬手帳(紙でも写真でも)
- 服薬中の薬の名称・用量のメモ
- 予備(可能なら数日分)
- かかりつけ(病院・薬局)の連絡先
薬が手に入るかどうかは状況次第でも、情報があれば再開が早くなります。
■⑧ 今日できる最小行動|スマホに“薬の写真”を1枚入れる
今日できる最小行動は、今飲んでいる薬(袋・シート・処方内容)をスマホで撮影して保存することです。
- 災害直後の聞き取りが一気に楽になる
- 代替薬の判断が早くなる
- 家族が代わりに説明できる
小さな一手が、薬の断絶を防ぎます。
■まとめ|JPATは「薬の断絶」を防ぎ、避難生活の二次被害を減らす
JPATは、災害時に薬剤師が組織的に支援に入り、医薬品供給・服薬情報・服薬管理を整えて「薬が止まらない流れ」を作るための仕組みです。
薬が切れる不安を減らすことは、健康被害だけでなく心の負担も減らします。
結論:
災害の備えは「水・食料」だけでなく「薬を止めない仕組み」まで含めて完成します。
防災士として被災地を見てきた実感ですが、薬が途切れないだけで現場の不安と混乱は確実に減ります。
出典:滋賀県薬剤師会|災害対策(日本薬剤師会からの要請による支援チーム派遣の記載)https://www.shigayaku.jp/%E7%9C%8C%E6%B0%91%E3%81%AE%E7%9A%86%E6%A7%98%E3%81%B8/%E7%81%BD%E5%AE%B3%E5%AF%BE%E7%AD%96/

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