【防災士が解説】局地激甚災害指定基準|“なぜ同じ災害でも指定される地域とされない地域があるのか”

災害の後、「この地域は激甚災害に指定された」「うちは対象外だった」といった声を現場でよく耳にします。
長年、自治体の防災担当として被災地支援にも携わってきましたが、これは多くの住民が誤解しやすいテーマの一つです。

特に 局地激甚災害(局激) は仕組みが複雑で、
「どんな基準で決まるのか?」
「どんな支援が受けられるのか?」
を知らない人が非常に多いのが現状です。

この記事では、局地激甚災害の“指定基準”をわかりやすく解説します。


■① 局地激甚災害とは?

局地激甚災害(通称:局激)は、
市町村レベルで大きな被害が出た場合に、国が特別な財政支援を行う制度です。

大規模な災害だけでなく、
「一つの町だけが集中豪雨で道路が壊滅」
「特定の地域だけ農業被害が莫大」
といったケースでも指定されるのが特徴です。

災害規模ではなく“地域ごとの被害の深さ”を見る制度です。


■② 指定の目的は“自治体の財政破綻を防ぐため”

災害が起きた地域では、
・道路復旧
・河川復旧
・学校や公共施設の修繕
など莫大な費用がかかります。

小さな自治体では、その復旧費だけで財政が持たないこともあります。

そこで国が
復旧費を通常より手厚く補助する
仕組みが局激です。


■③ 指定のための基本要件は「被害額が一定基準を超えるか」

局地激甚災害の指定基準は、主に以下の4分類があります。

● 1)公共土木施設の被害

市町村が管理する
・道路
・橋
・河川
・港湾
などの復旧費が一定額を超えると対象。

基準例:
市町村の年間標準税収入に対して、
一定割合(例:20〜30%程度)以上の被害

● 2)農林水産関係の被害

農地・農道・林道・漁港などの復旧費が基準額を超える場合。

● 3)農業者・中小企業者の被害

台風・豪雨・地震で農家や事業者が大きな損害を受けた場合、
一定以上の損害額で指定される。

● 4)その他、国が必要と認める場合

大規模ではないけれど、
「地域の生活維持に重大な支障が出る」と判断されると指定対象になり得ます。


■④ 基準は災害ごとに国が“客観的データ”で判断する

局激の判断には、
・復旧費総額
・自治体の財政規模
・被害面積
・事業者の損失額
など、国が数値を使って判定します。

被害の深刻さだけでなく、
自治体の“支払い能力”とのバランスで決まる
という点が住民に理解されにくいポイントです。


■⑤ なぜ隣の町は指定されて“自分の町は対象外”なのか

現場では住民から最も多い質問です。

理由は次の通りです。

✔ 被害額が基準に達していない

たとえ住民が「大被害だ」と感じていても、
数値的に基準を下回れば指定されません。

✔ 自治体の財政規模の差

財政力が強い自治体は、同じ被害額でも
「自力で復旧可能」と判断され指定されないことがあります。

✔ 公共施設の被害が少ない

家屋被害が多くても、
局激の基準では“公共施設”の損害が重視されます。

このズレが、住民の実感と制度上の判断に差を生む原因です。


■⑥ 局地激甚災害に指定されると何が変わるか

指定されると、国の補助率が大幅に上がります。

【例】復旧工事の国庫補助

通常:55%

局激:70〜90%に拡大

自治体の負担が大きく減るため、
復旧スピードが速まり、住民生活の再建も早く進みます。


■⑦ 個人への補助は直接ではなく“間接的に”恩恵がある

局激は基本的に
自治体の公共復旧費への支援であり、
個人への給付制度ではありません。

しかし、間接的に
・道路の早期復旧
・学校・保育所の再開
・断水復旧の加速
など住民生活を支える効果は大きいです。


■⑧ 南海トラフや巨大地震でも局激は併用される

巨大災害時には
・激甚災害(本激)
・局地激甚災害(局激)
が併用されることがあります。

私が派遣された地震災害でも、
本激と局激の両方で国の支援が入り、
自治体の復旧に大きく寄与しました。


■まとめ|基準は「被害の深刻度 × 自治体の財政力」で決まる

局地激甚災害は、“地域の財政崩壊を防ぐための緊急支援制度”です。
住民の実感ではわかりにくい制度ですが、復旧のスピードを左右します。

結論:
局地激甚災害の指定基準は、被害の大きさだけでなく自治体の財政力を踏まえて客観的に判断される。指定されると公共復旧が大幅に加速する。

被災地支援に携わった経験から、
局激の指定は“地域の復旧に命綱のような役割”を持つと実感しています。
災害後のニュースを見る際も、この制度を知っておくと判断の背景が理解しやすくなります。

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