救命講習を受けた市民の行動が、実際に命を救う──
これは消防現場で長年働いてきた私が、何度も見てきた事実です。
心停止は「1分勝負」。
救急車が到着するまでの平均時間は全国で約9分。
だからこそ、市民の初期行動が生存率を大きく左右します。
この記事では前回に続き、救命講習の“本当の価値”と“現場のリアル”を深堀りします。
■① 心停止の生存率は「胸骨圧迫の有無」で決まる
消防時代、心停止の現場に駆けつけると、
胸骨圧迫がすでに始まっているケースと、
誰も手をつけられないままのケースで、生存率が全く違いました。
- 胸骨圧迫なし → 生存率は極めて低下
- 胸骨圧迫あり → 明らかに回復の望みが高い
救命講習で学ぶのは“手順”ではなく 命をつなぐ力 です。
■② AEDは「知っている人」がその場を変える
AEDは難しい機械ではありません。
音声案内に従えば誰でも使えます。
しかし、実際の現場では
「壊したらどうしよう…」
「自分がやっていいの?」
とためらう人が多いのが現実。
講習を受けた人が1人いるだけで、
現場の空気がガラッと変わり、救命が一気に進みます。
■③ 子どもの事故は“迷いの時間”が命に関わる
乳児・小児は呼吸停止から心停止に移行するスピードが速い。
私も幼児の溺水・誤飲の現場を経験しました。
救命講習(小児版)では、
- 体格に合わせた圧迫の深さ
- 喉詰まり時の対応
- 乳児へのAEDパッドの貼り方
など、知らなければできない技術を習います。
子育て家庭には本当におすすめです。
■④ 災害時の救護は“市民の力”がすべてを左右する
能登・熊本・東日本大震災など、
どの被災地に派遣されても共通していたのは、
「最初に人を救うのは市民だ」という現実。
倒壊家屋からの救出、
高齢者の搬送、
止血や保温などの応急処置──
救命講習で学ぶ技術がそのまま役に立ちました。
■⑤ 高齢化社会では“救助される側”より“支える側”が必要
地域の消防力は、市民の力があってこそ成り立ちます。
特に今は高齢化が進み、
- 倒れた家族を介助する
- 誤嚥・窒息に対応する
- 近所の高齢者にAEDを使う
など、家の中で救命が必要になるケースが増えています。
救命講習は、地域力を底上げする社会的効果が大きいのです。
■⑥ 企業・学校で救命講習が義務化されつつある理由
職場や学校で講習を受ける場面が増えています。
その背景には、以下の理由があります。
- 職場での突然死が増えている
- 学校での事故対応に差が出ている
- AEDの設置数が急増している
私が指導した企業でも、
“従業員が同僚の命を救った”という事例が実際にありました。
■⑦ 救命講習は“1回でOK”ではない
技術は半年〜1年で忘れます。
だから消防では繰り返し訓練を行います。
市民も同じで、
年1回の受講で確実に行動力が上がる
と私は感じています。
最新のAED機器や新しいガイドラインの情報も更新されるため、
継続して学ぶことが大切。
■⑧ 最も大切なのは「あなたの一歩」
どれだけ訓練しても、
実際の現場では手が震えます。
私でさえ、最初の数年は緊張で体が固まりました。
でも行動できたのは、
“訓練で手順が体に入っていたから”。
あなたも講習を受ければ必ず動けます。
救命は特別な人の仕事ではありません。
■まとめ|救命講習は「誰かの命の可能性を広げる」行動
結論:
救命講習は、あなたが誰かの“生きる未来”をつくる力になる。
元消防職員として、
私が現場で救えた命の多くは、市民の協力があったからこそ守れました。
あなたの地域、あなたの家族、そしてあなた自身のために──
ぜひ一度、救命講習を受けてみてください。
その一歩が、いつか“誰かの命”に変わります。

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