地震対策といえば、突っ張り棒や転倒防止器具による家具固定を思い浮かべる方が多いでしょう。自治体も設置を推奨しています。しかし、被災現場を見てきた立場から言えるのは、「器具を付けただけでは命は守れない」という現実です。地震対策グッズに頼り切る危険性と、本当に優先すべき備えについて解説します。
■① 地震対策グッズだけに頼るのが危険な理由
転倒防止器具には揺れを抑える効果がありますが、絶対に家具が倒れないわけではありません。器具の性能には限界があり、設置環境や建物の構造によって効果は大きく左右されます。固定したから安心、という考え方そのものがリスクになります。
■② 被害を拡大させる「家具の多さ」
被災家屋で共通して見られるのが、家具の多さです。家具が多いほど転倒・散乱のリスクは増え、下敷きになる危険や避難行動の妨げになります。すべての家具を適切に固定することは、現実的に難しいケースがほとんどです。
■③ 無意識に増える危険な家具配置
「一時的に置いただけ」「少し使わないから上に載せた」など、無意識の積み重ねが危険な状態を作ります。収納家具に物を詰め込みすぎると重量が増し、強い揺れでは器具が耐えきれなくなることもあります。キャスター付き家具も、固定を忘れやすい代表例です。
■④ 転倒防止器具の限界は検証でも明らか
東京都の検証では、震度6強相当の揺れで突っ張り棒が外れたり、ネジ部が損傷する事例が確認されています。器具は雑貨に近い価格帯の製品が多く、過信は禁物です。転倒防止は「補助的な対策」に過ぎません。
■⑤ 本当に安全な空間は「家具を減らす」こと
家具がなければ、転倒するものもありません。極端な話、家具の少ない空間ほど地震に強いのです。ミニマリストを目指す必要はありませんが、使っていない家具や物を減らすことで、安全な空間は確実に広がります。
■⑥ 捨てる前にできる現実的な整理方法
いきなり処分する必要はありません。納戸へ移動する、模様替えをする、倉庫やトランクルームを使うなど、「生活空間から離す」だけでも効果があります。フリマアプリを活用し、誰かに使ってもらう選択も有効です。
■⑦ 特に優先すべき家具移動の場所
寝室、ドア、廊下周辺は最優先で見直すべき場所です。寝室は無防備な時間が最も長く、避難経路上の家具は命取りになります。小さな物でも、ドアが開かなくなるだけで逃げ遅れにつながります。
■⑧ 避難経路が命を分ける現実
避難経路上の障害物が被害を拡大させた事例は、火災でも地震でも共通しています。家具や荷物が逃げ道を塞ぐことで、助かるはずの命が失われてきました。地震と火災が同時に起きた場合、その影響はさらに深刻です。
■まとめ|家具固定より「家具を減らす」発想へ
地震対策グッズは有効ですが、万能ではありません。本当に大切なのは、転倒する家具そのものを減らすことです。
結論:
「固定する前に、減らす」。これが命を守る地震対策です。
防災士として被災現場を見てきましたが、生死を分けたのは器具の有無ではなく、空間の余裕でした。

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